野球人・落合博満さんから学ぶ、アジャイルなマインドセット・プラクティス (DevOpsDays Tokyo 2022 Ver.)
#DevOpsDaysTokyo
野球人・落合博満さんから学ぶ、アジャイルなマインドセット・プラクティス (DevOpsDays Tokyo 2022 Ver.)#DevOpsDaysTokyo髙市 智章 (Tomoaki Takaichi)Apr, 21-22, 2022 DevOpsDays Tokyo 2022
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発表にあたって❏ 落合博満さんのご紹介にあたっては、より正確に情報をお伝えしたいため、本の引用がメインとなってしまいました❏ よってスライドが見づらい場合が想定されます❏ スライドが見づらい場合は、SpeakerDeck にて公開している資料で、お手元でのご確認をお願いいたします※ スライド URL は Confengine に登録していますDiscord にも投下予定です
自己紹介@Takaichi00tomoaki.takaichi.5・髙市 智章(タカイチ トモアキ)・Java でのシステム開発・CI / CD・Container / k8s・アジャイル開発実践共著: クリーンなコードへのSonarQube即効活用術www.amazon.co.jp/dp/B086ML43DH
発表の経緯
❏ もともと野球観戦が趣味で、野球関連の書籍もいくつか読んでいた❏ そのなかで落合博満さんの書籍に出会い、読み進めるうちに自分が学んできたことと共通点が多いことに気づく❏ 界隈で著名な方も、色々な作品を例にとって発表をしている、自分もやってみようというのがきっかけなぜこの発表をしようと思ったか引用: https://speakerdeck.com/kawaguti/haikyuu-and-scrummasterway
RSGT2021 落選... しかし引用: https://confengine.com/regional-scrum-gathering-tokyo-2021/proposal/14655
Yahoo Agile Japan 2nd での登壇https://yj-meetup.connpass.com/event/193952/❏ Yahoo Agile Japan 2nd (2020年12月) のイベント管理者の方にプロポーザルを拾っていただき登壇の機会をいただく
「嫌われた監督」発売引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg❏ 2021年9月に「嫌われた監督」が発売❏ 落合博満さんが中日ドラゴンズで監督をしていた頃の番記者である鈴木忠平さんが執筆❏ 10万部を超えるベストセラーに⇒ソフトウェア業界にもブーム到来?
品川アジャイルでの輪読会, プロポーザルへ❏ 2022年2月に品川アジャイルにて「嫌われた監督」の輪読会に参加❏ プロポーザルを出す背中を押していただいた
発表の流れ
どのようにお話していくか❏ 落合博満さんの生い立ち❏ 主に中日監督時代の逸話を紹介❏ なぜ落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか?❏ リーダーシップ、組織論などを交えながら考えていく※ 文化的なお話が中心になります
落合博満さんとは?
❏ プロ野球選手として史上初の3回の三冠王、監督としては8年間で4度のリーグ優勝、1度の日本一を達成した野球界のレジェンド❏ 数々の本も執筆落合博満さんのご紹介引用: https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/7c/10/3c64c432e04f94c4f17e6b40f622a72f.jpg,https://cdn.findfriends.jp/img.sp.baseball/show_img.php?id=3697&contents_id=p_page_097,https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg,https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X-NRVILwL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg
❏ 秋田工業高校では「上級生からの理由なき鉄拳制裁」に嫌気がさし、野球部の入・退部を8回繰り返す❏ よく授業をサボって映画館に入り浸る毎日❏ 東洋大学野球部に入部するも中退❏ 「先輩を立てるという風習や、学年が上というだけで先輩が後輩に威張り散らすことに対して『自分から自発的に野球をする意識が持てず、雑用を押し付けられて野球を嫌々やらされるだけ』」❏ 20歳で東芝府中に入社、社会人野球を経験❏ 25歳でドラフト3位でプロ入り (1978年)独特の経歴 ~決してエリートとは言えない野球人生~引用: https://number.ismcdn.jp/mwimgs/5/e/765/img_5ebd1b7094d62c2667d5fc715c560cc61669089.jpg
❏ 入団時「あの打ち方では通用しないだろう」と、監督とOB の方に言われてしまう❏ 監督の教え方が高度すぎて理解できなかったため、「結果が出なかったらクビで結構ですから、自分のことは放っておいてください」といってしまう❏ 2年間は一軍と二軍を行ったり来たりの生活約2年間の下積み時代
❏ その後頭角を現し、プロ野球史上初となる三冠王3回獲得 (打率・打点・本塁打すべてリーグトップ) を始め、数々のタイトルを獲得❏ ロッテ ~ 中日 ~ 巨人 ~ 日本ハム と球団を渡り歩く❏ 「落合効果」... 投手がピンチに陥ればすかさずアドバイスをしにマウンドに駆け寄ったり、同じチームの打者がスランプに陥っていれば相談に乗ったりという形でのチーム貢献❏ 1998年に引退輝かしい選手時代引用: https://livedoor.blogimg.jp/chunichieizo-tachi/imgs/0/a/0ae20e52.jpg
❏ オフシーズンも話題が絶えない方だった❏ 年俸のトップを走り続けてきた❏ 球界初の1億 / 2億 / 3億円プレーヤー❏ 日本人選手初の年俸調停を実施❏ 第三者に年俸の妥当性を確認してもらう❏ 導入されたばかりの FA (フリーエージェント) 制度行使球界への影響引用: https://pbs.twimg.com/media/DiIPV9tUwAEnEED?format=jpg&name=large
中日監督時代❏ 2004~2011年に中日ドラゴンズ監督❏ 8年間全て A クラス❏ 6チーム中3位を下回ったことがない❏ 4度のリーグ優勝、1度の日本一❏ 日本一は中日ドラゴンズでは53年ぶり❏ この8年間は「中日の黄金期」と呼ばれた引用: https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/04/01/jpeg/G20100401Z00001800_view.jpg引用: http://toshinao.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized2/071102douage.jpg
❏ キャンプ初日に紅白戦、6勤1休の他球団に比べて遥かに多い練習量❏ 2004年 開幕戦に3年間登板のない川崎憲次郎選手を起用❏ 2006年 「ミスタードラゴンズ」と神格化されていた立浪選手をスタメンから外す❏ 2007年、完全試合中の山井選手を9回に岩瀬選手に交代し日本一へ、物議を醸す❏ 2008年 WBC ボイコット事件 (実際にはボイコットではない)❏ 2010年 アライバコンバート (球界随一と評価された二遊間を入れ替えた)中日監督時代 ~常識にとらわれない采配~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg「なぜ、落合という人間は、今あるものに折り合いをつけることができないのだろうか」「なぜ、わざわざ波風を立てて批判を浴びるようなことをするのだろうか。」→「オレ流」とも呼ばれる独特の采配
❏ 決してエリートと呼ばれる野球人生ではなく、プロ入りも遅かった❏ 下積み時代を経て、三冠王を始めとする様々なタイトルホルダーへ❏ 2004 ~ 2011年に中日監督、黄金期を築く❏ 「オレ流」とも称される従来の慣習にとらわれない立ち振る舞い落合監督の経歴 ~まとめ~
落合さんは監督時代どのような取り組みをしたか※ ここからしばらく落合監督にまつわる逸話のご紹介をします
落合博満さんから学べること~自主性を伸ばす振る舞い~
「任せる」組織体制
専門外の投手のことはすべてコーチに任せる引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg「投手に関わる全ての決定権を森コーチに任せていた。ここまで権限移譲していたのは全12球団の中で私ぐらいかもしれない。そのうえで、『森コーチの采配にすべての責任を負う』のは監督である私の仕事だと思っている。責任まで押し付けてはいけない。(中略) その大きな理由は、私が投手部門に関して、専門家ではないということだ。」「選手時代に仕えた監督をみていた印象として、何でも自分でやらなければ気が済まないと動き回る監督ほど失敗するというものがあった」
専門外の投手のことはすべてコーチに任せる「(投手起用に関して) 一度として反対をしたり、こうしたほうがいいとか、言われたことがない。ここまで任せてくれた。ここまで信用してくれた。これは監督に感謝しているし、自分の責任を感じて仕事をする自覚も盛り上がったものだ。今思えば、任されれば意気に感じて、しっかりやってしまうという私の性格を熟知して、監督はうまく私を操縦していたのだろう」引用: https://m.media-amazon.com/images/I/51EUVG-yxsL.jpg「ただし、落合監督はコーチに対して、いつも相当な努力を求めてきた」
コーチに対して「自分でサインを出していい」(当時三塁コーチを務めていた高代延博さんが) 「当時驚いたのは『サインを出しともいい』と言われたことだった。(中略)『オレ (落合監督) はベンチにいるからできないけど、現場の雰囲気は三塁コーチのお前が肌で感じることができる。お前が”ここだ” と思ったらサインを出してもいい』と言われたことがあった」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51G9In1CsyL._SX353_BO1,204,203,200_.jpg→ 高代さんは1度だけだが、状況を鑑みて自分の意思でスクイズのサインを出し、目論見どおりとなり見事作戦は成功した→ 「驚いた」とあることから、従来のプロ野球では珍しい取り組みだったことが伺える
・専門外のことは任せる・現場の意思に任せる・責任は自分で取る
決定権を選手に委ねる
先発投手に野手のスタメンを決めさせる「 2日前とかじゃないですよ。試合が始まる寸前なんです。そろそろメンバー表を提出しなきゃいけないタイミング。(落合監督が先発投手の川上憲伸選手に対して)『もう少しでマネージャーに渡すんだけどお前がオーダー決めろ』と言われて『えっ?』となりました」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51G9In1CsyL._SX353_BO1,204,203,200_.jpg「(結果守備力中心のオーダーになり) 落合監督は『1点取られたら勝てないよ』と最後に言い残して、トレーナー室を出ていった (中略) 選手にやる気を出させることもそうですし、自覚を持たせること、そして”逃げを作らせない”という感じはしましたね」
和田一浩選手の打撃フォーム改造「(落合監督が打撃練習中の和田選手に対して)『ちょっと見てやるよ』と防球ネット越しにいうと、落合はホームベースの後ろに立った。(中略) 一時間が過ぎても、落合は無言だった。(中略) ボール籠が空っぽになるまで打ち終えた和田は、思わずその場にへたり込んだ。かつてこれほど精神的にすり減ったバッティング練習があっただろうか」「『打ち方を変えなきゃだめだ。それだと怪我する。成績もあがらねえ』和田は呆然とした。ただ、そこに強制の響きは含まれていなかった。『やろうという気になったら行って来い。ただし、時間はかかるぞ』」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg
試合にでるかどうかは選手に決めさせる「選手起用に関して、私はひとつの信念を持っている。それは『痛い』と言った選手は使わないということだ。」「(痛いという選手に監督が業務命令でスタメン起用してしまうと) 『腰の痛みを我慢したせいで、ほかの部分も痛めてしまった』そんな泣き言を言われても責任の取りようがない」「私は一軍ベンチに入るのかどうか、グラウンドでプレーするのかどうかの判断は、あえて選手本人に任せているのだ」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg※ 落合監督は負傷した選手に対して「大丈夫か?」とは声をかけなかった。「出るのか引っ込むのか、どうする? 俺だったら、ほかの選手にチャンスは与えないけどな」とボソっとつぶやく。
・命令ではなく、選手に決定を委ね、責任と自覚を与える
「自主性」を育む
キャンプ初日に紅白戦を実施「『俺が監督になったとき、キャンプ初日に紅白戦をやるって言ったよな? あれ、なんでだかわかるか?』(中略) 『お前 (荒木雅博選手に対して)、あのとき、紅白戦の日まで何をしていた?』にやりとした笑みを浮かべていた。『ひとりで考えて練習しなかったか? 誰も教えてくれない時期に、どうやったらいきなり試合のできる身体を作れるのか。今まで一番考えて練習しなかったか?』」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg※ キャンプ … リーグ戦前の練習期間※ 日本球界で、キャンプ初日に紅白戦をやるのは当時異例だった。「選手が潰れてしまう」などの声もあった
無闇にコーチから教えることを禁止引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X-NRVILwL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg「常勝チームを作るには、選手が不安なくプレーできる環境を整え、時には選手がベンチの指示で動くのではなく、自分の考えと判断でプレーすることが肝要だと考えていたので、無闇にコーチから教えることも禁じ、選手から求められた場合だけ的確なアドバイスをするよう厳命した」
落合ノック「毎年2月の春季キャンプでは、全体練習を終えた後、サブグラウンドで行われる私のノックが話題になった。(中略) これは、決して強制的な練習ではない。ノックを受けたいと思った選手がコーチに申告し、私がノッカーに指名される。指名するのではなく、指名されるのだ。だから、ノックの本数や時間もこちらからは指示しない。ただ、『これ以上続けたら体が壊れてしまうと感じたら、グラブを外してグラウンドに置く』ということだけ約束していた」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg「こちらで『○時までな』と時間を決めてしまうと、どうしても『その時間をやり過ごそう』という感覚が生まれてくる。だが、監督やコーチが時間制限を設けなければ、選手は自分が納得するまでやり遂げる。こういう気持ちで練習に取り組むことが、自己成長を促し『自分の野球人生に自分で責任を持つ』という考え方を育んでいく」
落合ノック「指導者は、選手に対して絶対に気を遣ってはいけない。その代わり、全身全霊で練習に打ち込む選手に配慮してやることが必要なのだ。そこで、私はコーチにもうひとつ声をかけている」「どんなに遅くなっても、練習している選手より先に帰るなよ。最後まで選手を見ていてやれよ」※ 当時の中日ドラゴンズの練習量は球界随一と呼ばれていた引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg
・選手自らが考える機会を与える・闇雲にコーチは教えない・コーチ陣は選手をサポートする
責任の所在を明確にする
勝敗は監督の責任・成績は選手の責任「(自らチームバッティングを実施した和田一浩選手に対して)『いいか、自分から右打ちなんかするな。やれというときにはこっちが指示する。それがない限り、お前はホームランを打つこと、自分の数字を上げることだけを考えろ。チームのことなんて考えなくていい。勝たせるのはこっち (落合監督) の仕事だ』和田は再び呆気に取られることになった。」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg「それまで野球をやってきて、チームバッティングを讃えられたことはあっても、咎められたことなどなかったからだ。」
・勝敗の責任は監督・成績の責任は選手
なぜ自主性を大事にするのか?
「監督の采配と聞けば『何かをすること』、あるいは『何かをしなければならない』と捉えている指導者は多いと思う。天邪鬼に聞こえるかもしれないが、私が8年間の監督生活で実感したのは、究極の采配は『何もしないこと』だということである。」何もしないのが究極の采配引用:https://m.media-amazon.com/images/I/51hDEIcbVyL.jpg
「...(省略) 荒木と井端に任せておけば一、三塁にしてくれる。そうして相手のベンチが、どのタイミングでその戦術を用いるのかを分析しようと試みても不可能である。なぜなら、私のサインで動いているのではなく、荒木と井端が自分で考えて実行しているからだ。」何もしないのが究極の采配引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X-NRVILwL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg「私が率いていた8年間は、こうして選手たちが自分の考えや判断で動くケースが多かった。これが、常に優勝を争うことができた大きな要因だと感じている」※ 荒木・井端 … 落合さんが中日の監督時代に1,2番バッターとして活躍された方々
選手たちが自分の考えや判断で動くことが強さに繋がる
落合博満さんから学べること~観察眼~
立浪選手のレギュラーを外す「『俺が座っているところからはな、三遊間がよく見えるんだよ』『これまで抜けなかった打球がな、年々そこを抜けていくようになってきたんだ』(中略) ベンチから定点観測するなかで、三塁手としての立浪の守備範囲がじわじわ狭まっているのを見抜いていたのだ。」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg※ 落合監督は、長らくドラゴンズで活躍していた立浪選手をレギュラーから外し、森野選手をレギュラーに抜擢した。「ミスタードラゴンズ」と呼ばれていた立浪選手をレギュラーから外すことは外部からの批判も予想された。
審判の体調不良をいち早く見抜く引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg「 『監督、よくそんなところまで見ていましたね』 会う人、会う人に私がそう言われたのは、2010年4月27日、ナゴヤドームで行われた巨人戦後のことである。この試合、選手ではなく球審の体調がプレイボール直後からよくなさそうに見えた。すぐにタイムをかけて本人のもとへ足を運び、私は交代を勧めていた」引用: https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/04/28/kiji/K20100428Z00002290.html
審判の体調不良をいち早く見抜く引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg「どうも普段とは違うんじゃないかと感じることができれば、頭がその理由を探ろうと働き出す。つまり、視覚でとらえている映像は同じでも、固定観念を取り除けば、さまざまな情報が得られることが多いのだ。」「ドラゴンズの選手は、他球団の選手から『野球をよく知っている』と言われるようだ。私のものの見方を教えたわけではないが、私に見られているうちに、私のような見方をするようになり、それで見えてきたものがあるから見続けようとする」
固定概念をなくした定点観測により変化を察知する
落合博満さんから学べること~脅威からチーム・選手を守る~
徹底した情報統制
ブルペンからカメラを外す引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg※ ブルペンからカメラを外すとの公表を受けたマスコミなどの反応「大変だよ...。広報がさ、ブルペンカメラを外せって言うんだよ...」「いや、抗議したんだけどさ。何を言っても『監督がそう言っているから』の一点張りなんだよ...」「なぜ目当ての選手が試合に出ないのか。お金を払って観にくるファンにはそれを知る権利があるでしょう!」「かつてなかった事態を前に、報道陣の間には落合への不信感が急速に広がっていった」※ 従来ではブルペンの様子をテレビなどで放映し、次は誰が登板するのかなどの予想を楽しんでもらっていた
ブルペンからカメラを外す「私が監督に就任してから、ドラゴンズでは選手の怪我や故障に関する情報は徹底して管理したし、試合中のブルペンをテレビ中継のカメラが写すことも禁じていた。だが、これらについてはメディアから不満の声も上がっていたようだ。」「プロ野球選手にとって、体は商売道具であり、それがどういう状態にあるのかは最重要情報である。(中略) 自分のコンディションを対戦相手に知られれば、それだけ目の前の戦いで不利になるわけだ。」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg「現場の責任者である私は選手を守るのが仕事なのだから、個々の選手のコンディションに関する情報は絶対に外部に漏らしてはいけないと考えている」
ブルペンからカメラを外す引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg「『今日はどんな展開になっても岩瀬は使わない』と決め、私は岩瀬を宿舎や自宅に帰してしまうことだってあったのだ。しかし、対戦相手には知られたくないから、25人のベンチ入りメンバーには岩瀬の名前もいれておく。それも勝つための戦略の一つだが、その試合でブルペンを映されてしまったら元も子もない」「情報管理は、選手のため、勝利のため。すべてはファンのためでもある。」※ 岩瀬選手は、当時の中日ドラゴンズでストッパー (最終回に登板して勝利を決める役割)を務めていた選手※ 情報を漏らしがちなコーチ・スタッフなどは、その経路を特定して翌年には解雇していた。情報を漏らしがちな人は、しがらみの強い中日ドラゴンズ OB が多かったため、どんどん中日 OB がスタッフからいなくなり、これも批判の的となった
選手を守るため勝利のための徹底した情報統制
逸話ここまで
水を飲む時間を確認する
私たちの業界でどのように役立てられるだろうか?
なぜ、落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか
落合博満さんから学べること~スクラムマスター~
スクラムマスターの役割● ⾃⼰管理型で機能横断型のチームメンバーをコーチする。● スクラムチームが完成の定義を満たす価値の⾼いインクリメントの作成に集中できるよう⽀援する。● スクラムチームの進捗を妨げる障害物を排除するように働きかける。❏ スクラムマスターは、さまざまな形でスクラムチームを⽀援する。(スクラムガイドより一部抜粋)
落合さんとスクラムマスター● ⾃⼰管理型で機能横断型のチームメンバーをコーチする。○ ⇒ 自主性を育む選手との関わり方を実施● スクラムチームが完成の定義を満たす価値の⾼いインクリメントの作成に集中できるよう⽀援する。○ ⇒ 責任を明確にし、選手個人の成績の向上に集中させた● スクラムチームの進捗を妨げる障害物を排除するように働きかける。○ ⇒ 徹底した情報統制を行い、選手を守った❏ 落合さんは監督という立場でありながら、スクラムマスターとしての役割を一部果たしている
スクラムマスターと心理状態モデル引用: https://greatscrummaster.com/img/ScrumMasterStateOfMind.jpg❏ 「SCRUMMASTER THE BOOK」では、偉大なスクラムマスターになるために5つの心理状態モデルがあるとしている1. ティーチングとメンタリング2. 障害物の除去3. ファシリテーション4. コーチング5. 観察
落合監督はスクラムマスターとしての振る舞いを実施し、チームをより良い状態へと導いたなぜ、落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか? ①
落合博満さんから学べること~リーダーシップ~
リーダーシップとは❏ リーダーシップとは、フォロワーが目的に向かって自発的に動き出すのに影響を与えるプロセス❏ 「LeanとDevOpsの科学」では、「変革型リーダーシップ」の特性がソフトウェアデリバリのパフォーマンスとの相関性が高いことが示されている❏ ソフトウェアデリバリのパフォーマンスと組織のパフォーマンスには相関がある引用: https://img.ips.co.jp/ij/18/1118101029/1118101029-520x.jpg引用: https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51KKPparwxL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg4
変革型リーダーシップ1. ビジョン形成力2. 心に響くコミュニケーション能力3. 知的刺激4. 支援的リーダーシップ5. 個人に対する評価引用: https://img.ips.co.jp/ij/18/1118101029/1118101029-520x.jpg引用: https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51KKPparwxL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg4「サーバント・リーダーシップは、むしろ変革型リーダーシップの一形態であるともとらえられると解釈しました」(NTT データ 家田武文さん)
サーバント・リーダーシップ❏ サーバント・リーダーシップ ...「力ずくで引っ張るのではなく、ミッションに向かって自発的にあゆみはじめる人を後押しする」❏ サーバント・リーダーシップを発揮することによって、組織のパフォーマンスは向上していく引用: https://img.ips.co.jp/ij/18/1118101029/1118101029-520x.jpg引用: https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51KKPparwxL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg4
スクラムマスターとサーバント・リーダーシップ❏ 「スクラムマスターは、スクラムチームと、より⼤きな組織に奉仕する真のリーダーである」(スクラムガイド)❏ 「真のリーダーってサーバントリーダーと何が違うのと思われたかも知れません。Scrum Inc. Japan からスクラムガイドの執筆者のひとりである Jeff Sutherland 氏 に確認をとったところ、同じものだよという回答が返ってきたそうです。」❏ (スクラムガイドの変更点(2017→2020)から見えるスクラムチームが陥りやすい3つの罠,https://www.agile-studio.jp/post/scrum-guide-update-2020)
サーバント・リーダーシップ❏ 従来型のリーダーシップとサーバント・リーダーシップの違い (一部抜粋)項目 従来型 サーバント・リーダーシップモチベーション 最も大きな権力の座につきたいという欲求組織上の地位にかかわらず、他社に奉仕したいという欲求影響力の根拠 目標達成のために、自分の権力を使い、部下を畏怖させて動かす部下のと信頼関係を築き、部下の自主性を尊重することで、組織を動かす成長についての考え方社内ポリティクス(政治)を理解し活用、自分の地位を上げ、成長していく他者のやる気を大切に考え、個人と組織の成長の調和を図る責任についての考え方責任とは、失敗したときにその人を罰するためにある責任を明確にすることで、失敗からも学ぶ環境を作る
サーバント・リーダーシップ項目 従来型 サーバント・リーダーシップモチベーション 最も大きな権力の座につきたいという欲求組織上の地位にかかわらず、他者に奉仕したいという欲求● 監督という権力を振りかざさず、任せるべき分野は任せた● 選手がプレーしやすいよう、脅威から選手・チームを守った● 無闇に教えず、練習を最後まで見守るよう、コーチを指導した項目 従来型 サーバント・リーダーシップ影響力の根拠 目標達成のために、自分の権力を使い、部下を畏怖させて動かす部下のと信頼関係を築き、部下の自主性を尊重することで、組織を動かす● 鉄拳制裁など恐怖による管理をせず、選手の自主性を伸ばした
サーバント・リーダーシップ項目 従来型 サーバント・リーダーシップ成長についての考え方社内ポリティクス(政治)を理解し活用、自分の地位を上げ、成長していく他者のやる気を大切に考え、個人と組織の成長の調和を図る責任についての考え方責任とは、失敗したときにその人を罰するためにある責任を明確にすることで、失敗からも学ぶ環境を作る● 勝敗の責任は監督が取る、個人の成績は選手が取る、と責任を明確にした○ 和田選手の右打ちの件のように、組織に媚を売るような (政治的な) プレーはしないように促した● 優れた観察眼を持ち、ときには自ら技術指導を実施。個人の成長を手助けした
落合博満さんとサーバント・リーダーシップ❏ 落合博満さんはサーバント・リーダーシップのエッセンスを兼ね備えているのではないか❏ 「LeanとDevOpsの科学」での「変革型リーダーシップ」や「サーバント・リーダーシップ」を実践し「組織のパフォーマンス」≒ 落合監督率いる中日ドラゴンズの強さにつながっているのではないか
落合監督によるリーダーシップにより組織のパフォーマンスが向上したなぜ、落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか? ②
落合博満さんから学べること~ティール組織~
人類のパラダイムと組織の発達段階❏ 人類は意識が新たな段階に移動するたび、新しい組織モデルを生み出してきた引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg引用: https://m.media-amazon.com/images/S/aplus-media/vc/7560936e-dbef-4afc-87b8-2eab66f95156.__CR0,0,970,600_PT0_SX970_V1___.jpg
組織の発達段階引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg衝動型 (レッド) マフィア・ギャングなど暴力・恐怖による支配順応型 (アンバー) ピラミッド建設などの公共事業上下関係・指示命令系統で人を動かす達成型 (オレンジ) 科学技術の発展実力主義、出世という概念を発明単位時間の生産量を伸ばすために PDCA サイクルを回す多元型 (グリーン) 多様性と平等承認プロセスではなく話し合って物事を決める進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする自主経営・全体性・進化する存在目的
プロ野球と社会❏ プロ野球界という組織においても、社会の影響を受けているhttps://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/517dg3UVENL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg「プロ野球は常に社会を反映している。根性野球が管理野球に変わり、そして今は情報野球に推移してきた。」
従来のプロ野球界における発達段階❏ 従来のプロ野球界にいては、衝動型(レッド)・順応型(アンバー)・達成型(オレンジ) が中心❏ 例) 鉄拳制裁、厳しい上下関係、監督・コーチの指示で選手は動き、逆らってはいけない引用: https://m.media-amazon.com/images/S/aplus-media/vc/7560936e-dbef-4afc-87b8-2eab66f95156.__CR0,0,970,600_PT0_SX970_V1___.jpg
「X 理論のプラクティスは, LeSS の導入に問題をひきおこします.」X 理論と Y 理論X 理論 Y 理論● 本質的に仕事が嫌い● 強制/制御/命令/脅迫しないと成果は出せない● 野心を抱かない、責任を取りたがらない、命令されたい● 自然に努力し働く● コミットした目標のために自己管理、自己統制を行う● 適切な環境が与えられれば、人は責任を回避するよりむしろ責任を求める引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51+igEK3VPL._SX352_BO1,204,203,200_.jpg
X 理論の背景引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51+igEK3VPL._SX352_BO1,204,203,200_.jpg❏ X 理論は19世紀にフレディック・テイラー氏によって生まれた「科学的管理法」に基づいた概念❏ 当時の工場/採掘など、大量生産/単純作業を前提とした作業者に対する生産性を最大化するために生まれた考え方❏ 計画/改善と作業を分離することによるオーバーヘッド❏ 体系的な改善に注力できない※ プロ野球選手のような技術屋さんにとってこれは当てはまるだろうか?
「中日ドラゴンズというチームに対する私の印象は、監督やコーチが頻繁に叱咤し、時には鉄拳も辞さない厳しさで選手に接していたため、選手が首脳陣の顔色をうかがいながらプレーしているというものだ。これでは持てる力を発揮しろと言われても無理だろう。」一切の体罰を禁止 / 試合中常に表情を変えない引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X-NRVILwL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg引用: https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/04/01/jpeg/G20100401Z00001800_view.jpg
落合監督率いる中日ドラゴンズは進化型(ティール)だったのか?
落合監督率いる中日ドラゴンズとティール引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする自主経営・全体性・進化する存在目的自主経営 階層構造ではなく、一人ひとりが自由に意思決定をしている信頼のネットワークによる組織形態全体性 合理性・論理性に加え、感情や家族など、人間というものを大事にしながら作る組織進化する存在目的 この場で必要なものを探求し、それぞれが自由に意思決定する
落合監督率いる中日ドラゴンズとティール引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする自主経営・全体性・進化する存在目的自主経営 階層構造ではなく、一人ひとりが自由に意思決定をしている信頼のネットワークによる組織形態● 選手の自主性を伸ばし、決定権を選手に与えた● 監督という権力を振りかざさず、任せるべき分野は任せた○ ただし、階層構造はあった● 無闇に教えず、練習を最後まで見守るよう、コーチを指導した
落合監督率いる中日ドラゴンズとティール引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする自主経営・全体性・進化する存在目的全体性 合理性・論理性に加え、感情や家族など、人間というものを大事にしながら作る組織● 「選手と全く感情のつながりがない」「選手を駒として見ている」との書かれ方もしている● 一方で、引退するかどうかを奥さんとちゃんと決めるよう促したり、引退試合に家族・友人などを招待できるように手配する、引退後の就職先の斡旋などの配慮もあった
落合監督率いる中日ドラゴンズとティール引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする自主経営・全体性・進化する存在目的進化する存在目的 この場で必要なものを探求し、それぞれが自由に意思決定する● 現場であるコーチにサインを出しても良いとの方針をだした● ときには選手の自己判断で作戦を実行していた
当時の中日ドラゴンズは、完全ではないが進化型(ティール)の要素を兼ね備えていた
なぜ、落合監督率いるチームは進化型(ティール)になれたか?
落合博満さんの思想と進化型(ティール)の思想には類似点がある
他人からの評価や成功、富、帰属意識を求めず、充実した人生を送るティールの思想の例 ①
ティールの特徴 ~エゴを失う恐れを抑える~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg「私たちが自分自身のエゴから自らを切り離せるようになると、進化型への移行が起こる。自分のエゴを一定の距離を置いて眺めると、その恐れ、野心、願望がいかに自分の人生を突き動かしているかが見えてくる。自分を好ましく見せたい、周囲になじみたいといった欲求を最小化する術を得る。もはや自分のエゴに埋没しておらず、自分の人生がエゴを失う恐れによって振り回されることはない。」「(エゴを失う)恐れに置き換わるものはなんだろう? 人生の豊かさを信頼する能力だ」「進化型の視点を持つと、このおおきな隔たり(恐れと欠乏感にまみれた人生 or 信頼と潤沢に満ちた人生)」の間を横断し、人々や物事を支配したいという欲求を抑制できるようになる」
ティールの特徴 ~エゴを失う恐れを抑える~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg「良い人生を送るためには他人からの評価や成功、富、帰属意識を求めず、充実した人生を送るよう努める。他人から認められることや成功、富、愛は結果にすぎない」
「だが、ユニフォームを脱いで帰宅した私は、三冠王の栄光にも、高額な年俸にも何ら執着はない。ファームで燻っていた若い頃と同じように、仕事を終えたら一杯の白飯が食べられればいい、それに焼き鮭でもつけてもらえば十分に幸せという人間だ。」ティールの特徴 ~エゴを失う恐れを抑える~「人生を穏やかに生きていくことには、名声も権力も必要ないと考えている。要するに、仕事で目立つ成果をあげようとすることと、人生を幸せに生きていこうとすることは、全く別物と考えているのである。(中略) 自分の人生を采配できるのは、ほかならぬ自分だけであり、そこに第三者が介入する余地はない。ならば、一度きりの人生に悔いのない采配を振るべきではないか」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rgVHaT5BL._SX341_BO1,204,203,200_.jpg
意思決定の基準は外的ではなく内的ティールの思想の例 ②
ティールの特徴 ~意思決定の基準は外的ではなく内的~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg「進化型では、意思決定の基準が外的なものから内的なものへのと移行する。自分の内面に照らして正しいかどうか、つまり『この判断はただしそうか』『私は自分に正直になっているか』(中略) を重視する。エゴを失う恐れが少ないので一見危険に思える意思決定ができる。」「周囲からの反対に直面したり、成功しそうにないと思われたとしても、『誠実さ』や『自分らしさ』という感覚を出発点に、本当は正しいとは思えない状況、自分が声を上げ、行動を起こさなければならない状況に対する感覚を養う」
「私が一番大切にしているのは、自分の人生をいかに自分の思うがままに生きていくか、ということだ。そのために不可欠なのが、決断、実行だと考えている。(中略) 多くの環境に身を置き、そこで人間関係が築かれていくうちに、決断、実行を迷ったり、逃げたり、できなくなったりしていくものだろう。それは、結果、それに伴う周囲の目、責任を考えすぎてしまうことも一因だ。」ティールの特徴 ~意思決定の基準は外的ではなく内的~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X-NRVILwL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg「けれど、最善を尽くしても期待した結果を得られないことはある。やってみて、自分の力では及ばないと知ることもある。(中略) それでも、決断、実行したうえでの失敗は、反省材料や教訓となって次につながる。しかし、決断、実行しなかった後悔は何も生み出してくれない。(中略) 人生についてまわる決断、実行を、上司や先輩など周囲の人たちの知恵も借りながら行い、どんな結果になっても責任は自分にあるのだと覚悟することだ」
「例えば、家庭の中で妻が夫に対して『あそこのご主人は課長になったのに、あなたは何をやっているの』(中略) などと言うのは絶対にタブーだ。(中略) だが、自分の才能を伸ばすという意味の競争は必要だと思う。」ティールの特徴 ~意思決定の基準は外的ではなく内的~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41TV8E87QFL._SX323_BO1,204,203,200_.jpg「ここで気をつけたいのが、そのグラフを見て『自分もなんとか成績を上げよう』と考えずに『どうせ自分はあいつには勝てないからいいんだ』と思ってしまうことだ。この『いいんだ』が、人間のあらゆる進歩を止めてしまうのだ。そんなときには、何らかのモチベーションをもたせて『いいんだ』症候群から解き放ってやりたい。日々わずかでも進歩していることが実感できれば、人間は目標を持てるはずだ。他人との比較対照ではなく、自分自身の目標に置き換えることが肝要である」
「欠点を見る」のではなく「長所を生かす」ティールの思想の例 ③
ティールの特徴 ~強さの上に人生を築く~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg「人生とは、自分の中にもともと素養がないものに無理をしてなろうとすることではない。私たちはまた、周囲の人々や状況にはないが足りないか、あるいは何が間違っているか、といったことではなく、そこに存在するもの、美しいもの、可能性に注意を向けるようになる。」「心理学者たちは、「欠点を見る」のではなく「長所を生かす」というパラダイム変化が起こっていると指摘する。」
「とにかく、ダメな部分のほうが目に付きやすいので、つい『ダメだ、ダメだ』と言ってしまう。反対に、良い部分はなかなか目につかない。その世界で一流になるためには、いくつかの道があると思う。だが、どの道でも共通していることは、『欠点を矯正するよりも、長所を伸ばすことが近道』という定理ではないだろうか」ティールの特徴 ~強さの上に人生を築く~引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41TV8E87QFL._SX323_BO1,204,203,200_.jpg「そうした指導者たちだって、現役時代にパーフェクトな選手だったわけではない。(中略) 自分が上の立場になるとそんな経験をすっかり忘れ、良い部分を伸ばそうとするのではなく、物足りない部分を治そうと必死になる。こんな組織や人間に、残念ながら進歩は望めないのではないか。」
「オレ流」 ≒ 「ティール」 !!!※ 「コーチング」は2001年、「采配」は2011年に発売。「ティール組織」の原著である「Reinventing Organizations」は2014年に発売。落合さんは進化型(ティール) 考えが世に広まるずっと前からこの考えを持っていた。
なぜ「オレ流」と称されたのか❏ 落合さんは進化型 (ティール) の思考を持っていたと考えることができる❏ 決してエリートとは言えない野球人生だったにも関わらず、トップまで上り詰めたという背景が影響しているのかもしれない❏ ただ、プロ野球界という衝動 (レッド) ~ 達成型 (オレンジ) 組織の中では、価値観が違い、浮いた存在になって衝突することもあったのかもしれない引用: https://m.media-amazon.com/images/S/aplus-media/vc/7560936e-dbef-4afc-87b8-2eab66f95156.__CR0,0,970,600_PT0_SX970_V1___.jpg
2007年 完全試合リレーで日本一へ❏ 2007年、中日ドラゴンズは日本シリーズに進出❏ 4勝先取のゲームで3勝1敗、この試合に勝てば日本一❏ 先発投手の山井大介選手が、8回まで完全試合 (一人のランナーもださずに打者を抑える)❏ 日本シリーズでの完全試合達成はいまだかつて誰も達成したことがない (完全試合自体、2022年の佐々木朗希選手が28年ぶりに達成と非常に珍しい記録)❏ 誰もが9回も山井選手が投げると思ったが、落合監督は絶対的守護神である岩瀬をマウンドに送った
2007年 完全試合リレーで日本一へ❏ 結果、岩瀬投手が3人で締め、日本一達成❏ しかしこの采配は物議を醸し、個人の記録よりもチームを優先させる「非情采配」などとプロ野球 OB や政治家からも非難されてしまう引用: https://www.youtube.com/watch?v=m5kh3A-I70Y&ab_channel=BaseballPsychology※ 交代の理由...・山井選手の手のマメが潰れながら投球を続けており、山井選手本人が「岩瀬さんでお願いします」と申し出た・この試合に負けた場合、次の2連戦は敵地での試合であり、勝てる可能性が低いため、なんとしても勝ちたい試合だった
2007年 完全試合リレーで日本一へ❏ 「周りがどう思うだろう」という考えではなく、「勝利のために自分は何をすべきか」を実践した象徴的な出来事❏ そのまま山井選手を続投させて、試合に負けていてもおそらくここまでの非難はなかったのではないか❏ しかし、「もし山井選手が『行きます』といっていたら続投させていた」とも語っており、最後まで選手に決定権を持たせていた引用: https://www.youtube.com/watch?v=m5kh3A-I70Y&ab_channel=BaseballPsychology
なぜ落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか?❏ 組織のトップ (監督) である落合博満さん自身が進化型 (ティール) の意識を持ち、選手・コーチ・スタッフにその考えを浸透させていった❏ 「どの組織形態 (例えば達成型(オレンジ)組織) でも、組織の上位にいる人々がステージを上がれば上がるほど業績が伸びる」❏ 他の球団組織に比べ、ティール型の特徴を兼ね備えた組織となり、常勝チームと呼ばれる黄金時代になったのでは引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg
組織の発達ステージを決める要因❏ 組織の発達ステージを決める要因は、リーダーがどの段階のパラダイムを通して世界を見ているかによる❏ どんな組織も、リーダーの発達ステージを超えて進化することはできない引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg
組織状態とアジャイル❏ マイケル・サホタさんによる CertifiedAgile Leadership (CAL1) では、ティール組織における ”グリーン (多元型)”, “ティール (進化型)” の組織が、アジャイルのマインドセットを支援すると解説❏ ティールの考えを理解するということも組織をアジャイルにしていくには重要なのでは引用: 「Certified Agile Leadership (CAL1) トレーニング参加レポート」Yasuko NAITO,https://medium.com/wingarc/certified-agile-leadership-cal1-%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%83%B3%E3%82%B0%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88-50f550e675b2
トップが変わり、組織も変わる→ どん底を経験し、組織のトップが「何をやりたいか」を見直すトップの変化により組織文化が改善、結果として業績も上がる引用: https://images.mentimeter.com/import_transforms/798809/jtwp5pkp-DODT2022-30.jpg?auto=compress%2Cformat&fm=jpg&w=1080&expires=1653107748&s=a8c2209fbbbbe4af03a4229c5720cc4c
トップである落合監督自身がティールの意識を持ち、選手・コーチ・スタッフにその考えを浸透さたなぜ、落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか? ③
ソフトウェア業界以外からも学びはあるという可能性
日常のなか、仕事とは全く関わりのない方との交流からでも、知識を深めるきっかけになるのではないでしょうか常に頭のどこかで考える引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51rY5ZoYDJL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg「よく、テレビドラマや映画なんかでも、思い悩んでいる主人公が気分転換をしたりしたときに、思いがけないでき事から何かを発見したりするストーリーがありますよね」「気分転換をしたつもりでも、頭のどこかで考えているから、何かのきっかけでアイディアとしてひらめくのです。思いがけないでき事が起きたときでも、一生懸命に考えていることがあるから、発見に結びつくのです。」※ 発表者は東京ヤクルトスワローズファンです
ご清聴ありがとうございました
Appendix
番記者の自主性も育む(番記者の鈴木忠平さんは)「新聞社に入って四年目、朝はきちんと起きられたためしがなかった。いつも倦怠感とともに慌ただしく一日が幕を開け、誰かに決められた場所へ行き、誰かに言われたように原稿を書き、自分で歩いている実感のないまま、いつの間にか夜が来ていた」引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg→ ところが、落合さんの番記者を務めていくうちに意識が変化していく...「『お前ら、もっと野球を見ろ。見てりゃ、俺のコメントなんかなくたって記事をかけるじゃねえか』落合はよく番記者にそう言った。(中略) 誰に向けるともなく呟いた。」「なぜか頭の片隅に、ずっとその言葉が引っかかっていた。どうせ退屈な練習を眺めるなら、落合が言うように、見るだけで記事がかけるかどうか、やってみようという気になったのだ。」
番記者の自主性も育む→ 番記者である鈴木忠平さんは、その後気になることがある際には、時には一人で落合監督を訪ね、取材をすることもあった。引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg「いつしか私 (鈴木さん) は、誰かの指示ではなく、自分の意思で落合のもとに向かうようになっていた。気づけば朝の倦怠感は消え去り、ただ夜を待つことを止めていた。」「『お前、ひとりか?』監督という立場にある人間の前には、いつも長蛇の列ができている。席次表が決められていて、末席の記者は隅っこで順番を待っているしかない。私が知っていたこの世界の常識を落合は破壊した。『俺はひとりで来るやつには喋るよ』」