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野球人・落合博満さんから学ぶ、アジャイルなマインドセット・プラクティス

Takaichi00
April 22, 2022

 野球人・落合博満さんから学ぶ、アジャイルなマインドセット・プラクティス

野球人・落合博満さんから学ぶ、アジャイルなマインドセット・プラクティス (DevOpsDays Tokyo 2022 Ver.)

#DevOpsDaysTokyo

Takaichi00

April 22, 2022
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  1. 自己紹介 @Takaichi00 tomoaki.takaichi.5 ・髙市 智章(タカイチ トモアキ) ・Java でのシステム開発 ・CI /

    CD ・Container / k8s ・アジャイル開発実践 共著: クリーンなコードへの SonarQube即効活用術 www.amazon.co.jp/dp/B086ML43DH
  2. Yahoo Agile Japan 2nd での登壇 https://yj-meetup.connpass.com/event/193952/ ❏ Yahoo Agile Japan

    2nd (2020年12月) のイベント管理者の 方にプロポーザルを拾っていただき登壇の機会をいただく
  3. ❏ 秋田工業高校では「上級生からの理由なき鉄拳制裁」に嫌気がさし、野球 部の入・退部を8回繰り返す ❏ よく授業をサボって映画館に入り浸る毎日 ❏ 東洋大学野球部に入部するも中退 ❏ 「先輩を立てるという風習や、学年が上というだけで先輩が後輩に威張り散らすことに対して 『自分から自発的に野球をする意識が持てず、

    雑用を押し付けられて野球を嫌々やらされるだけ』」 ❏ 20歳で東芝府中に入社、社会人野球を経験 ❏ 25歳でドラフト3位でプロ入り (1978年) 独特の経歴 ~決してエリートとは言えない野球人生~ 引用: https://number.ismcdn.jp/mwimgs/5/e/765/img_5ebd1b7094d62c2667d5fc715c560cc61669089.jpg
  4. ❏ その後頭角を現し、プロ野球史上初となる三冠王3回獲得 (打率・打点 ・本塁打すべてリーグトップ) を始め、数々のタイトルを獲得 ❏ ロッテ ~ 中日 ~

    巨人 ~ 日本ハム と球団を渡り歩く ❏ 「落合効果」... 投手がピンチに陥ればすかさずアドバイスをしにマウ ンドに駆け寄ったり、同じチームの打者がスランプに陥っていれば相 談に乗ったりという形でのチーム貢献 ❏ 1998年に引退 輝かしい選手時代 引用: https://livedoor.blogimg.jp/chunichieizo-tachi/imgs/0/a/0ae20e52.jpg
  5. ❏ オフシーズンも話題が絶えない方だった ❏ 年俸のトップを走り続けてきた ❏ 球界初の1億 / 2億 / 3億円プレーヤー

    ❏ 日本人選手初の年俸調停を実施 ❏ 第三者に年俸の妥当性を確認してもらう ❏ 導入されたばかりの FA (フリーエージェント) 制度行使 球界への影響 引用: https://pbs.twimg.com/media/DiIPV9tUwAEnEED?format=jpg&name=large
  6. 中日監督時代 ❏ 2004~2011年に中日ドラゴンズ監督 ❏ 8年間全て A クラス ❏ 6チーム中3位を下回ったことがない ❏

    4度のリーグ優勝、1度の日本一 ❏ 日本一は中日ドラゴンズでは53年ぶり ❏ この8年間は「中日の黄金期」と呼ばれた 引用: https://www.sponichi.co.jp/baseball/news/2010/04/01/jpeg/G20100401Z00001800_view.jpg 引用: http://toshinao.cocolog-nifty.com/photos/uncategorized2/071102douage.jpg
  7. ❏ キャンプ初日に紅白戦、6勤1休の他球団に比べて遥かに多い練習量 ❏ 2004年 開幕戦に3年間登板のない川崎憲次郎選手を起用 ❏ 2006年 「ミスタードラゴンズ」と神格化されていた立浪選手をスタメンから外す ❏ 2007年、完全試合中の山井選手を9回に岩瀬選手に交代し日本一へ、物議を醸す

    ❏ 2008年 WBC ボイコット事件 (実際にはボイコットではない) ❏ 2010年 アライバコンバート (球界随一と評価された二遊間を入れ替えた) 中日監督時代 ~常識にとらわれない采配~ 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg 「なぜ、落合という人間は、今あるものに折り合いをつけること ができないのだろうか」 「なぜ、わざわざ波風を立てて批判を浴びるようなことをするの だろうか。」 →「オレ流」とも呼ばれる独特の采配
  8. コーチに対して「自分でサインを出していい」 (当時三塁コーチを務めていた高代延博さんが) 「当時驚いたのは『サインを出しと もいい』と言われたことだった。(中略)『オレ (落合監督) はベンチにいるからで きないけど、現場の雰囲気は三塁コーチのお前が肌で感じることができる。お前が ”ここだ” と思ったらサインを出してもいい』と言われたことがあった」 引用:

    https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51G9In1CsyL._SX353_BO1,204,203,200_.jpg → 高代さんは1度だけだが、状況を鑑みて自分の意思でスクイ ズのサインを出し、目論見どおりとなり見事作戦は成功した → 「驚いた」とあることから、従来のプロ野球では珍しい取り 組みだったことが伺える
  9. 落合さんとスクラムマスター • ⾃⼰管理型で機能横断型のチームメンバーをコーチする。 ◦ ⇒ 自主性を育む選手との関わり方を実施 • スクラムチームが完成の定義を満たす価値の⾼いインクリメントの作 成に集中できるよう⽀援する。 ◦

    ⇒ 責任を明確にし、選手個人の成績の向上に集中させた • スクラムチームの進捗を妨げる障害物を排除するように働きかける。 ◦ ⇒ 徹底した情報統制を行い、選手を守った ❏ 落合さんは監督という立場でありながら、スクラムマスターと しての役割を一部果たしている
  10. 変革型リーダーシップ 1. ビジョン形成力 2. 心に響くコミュニケーション能力 3. 知的刺激 4. 支援的リーダーシップ 5.

    個人に対する評価 引用: https://img.ips.co.jp/ij/18/1118101029/1118101029-520x.jpg 引用: https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/51KKPparwxL._SY291_BO1,204,203,200_QL40_ML2_.jpg4 「サーバント・リーダーシップは、むしろ変革型 リーダーシップの一形態であるともとらえられる と解釈しました」(NTT データ 家田武文さん)
  11. スクラムマスターとサーバント・リーダーシップ ❏ 「スクラムマスターは、スクラムチームと、より⼤きな組織に 奉仕する真のリーダーである」(スクラムガイド) ❏ 「真のリーダーってサーバントリーダーと何が違うのと思われ たかも知れません。Scrum Inc. Japan からスクラムガイドの執

    筆者のひとりである Jeff Sutherland 氏 に確認をとったとこ ろ、同じものだよという回答が返ってきたそうです。」 ❏ (スクラムガイドの変更点(2017→2020)から見えるスクラムチームが陥りやすい3つの罠, https://www.agile-studio.jp/post/scrum-guide-update-2020)
  12. サーバント・リーダーシップ ❏ 従来型のリーダーシップとサーバント・リーダーシップの違い (一部抜粋) 項目 従来型 サーバント・リーダーシップ モチベーション 最も大きな権力の座につきたいという 欲求

    組織上の地位にかかわらず、他社に奉仕 したいという欲求 影響力の根拠 目標達成のために、自分の権力を使 い、部下を畏怖させて動かす 部下のと信頼関係を築き、部下の自主性 を尊重することで、組織を動かす 成長についての考 え方 社内ポリティクス(政治)を理解し活 用、自分の地位を上げ、成長していく 他者のやる気を大切に考え、個人と組織 の成長の調和を図る 責任についての考 え方 責任とは、失敗したときにその人を罰 するためにある 責任を明確にすることで、失敗からも学 ぶ環境を作る
  13. サーバント・リーダーシップ 項目 従来型 サーバント・リーダーシップ モチベーション 最も大きな権力の座につきたいという 欲求 組織上の地位にかかわらず、他者に奉仕 したいという欲求 •

    監督という権力を振りかざさず、任せるべき分野は任せた • 選手がプレーしやすいよう、脅威から選手・チームを守った • 無闇に教えず、練習を最後まで見守るよう、コーチを指導した 項目 従来型 サーバント・リーダーシップ 影響力の根拠 目標達成のために、自分の権力を使 い、部下を畏怖させて動かす 部下のと信頼関係を築き、部下の自主性 を尊重することで、組織を動かす • 鉄拳制裁など恐怖による管理をせず、選手の自主性を伸ばした
  14. サーバント・リーダーシップ 項目 従来型 サーバント・リーダーシップ 成長についての考 え方 社内ポリティクス(政治)を理解し活 用、自分の地位を上げ、成長していく 他者のやる気を大切に考え、個人と組織 の成長の調和を図る

    責任についての考 え方 責任とは、失敗したときにその人を罰 するためにある 責任を明確にすることで、失敗からも学 ぶ環境を作る • 勝敗の責任は監督が取る、個人の成績は選手が取る、と責任を明確にした ◦ 和田選手の右打ちの件のように、 組織に媚を売るような (政治的な) プレーはしないように促した • 優れた観察眼を持ち、ときには自ら技術指導を実施。個人の成長を手助けした
  15. 組織の発達段階 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg 衝動型 (レッド) マフィア・ギャングなど 暴力・恐怖による支配 順応型 (アンバー) ピラミッド建設などの公共事業

    上下関係・指示命令系統で人を動かす 達成型 (オレンジ) 科学技術の発展 実力主義、出世という概念を発明 単位時間の生産量を伸ばすために PDCA サイクルを回す 多元型 (グリーン) 多様性と平等 承認プロセスではなく話し合って物事を決める 進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする 自主経営・全体性・進化する存在目的
  16. 「X 理論のプラクティスは, LeSS の導入 に問題をひきおこします.」 X 理論と Y 理論 X

    理論 Y 理論 • 本質的に仕事が嫌い • 強制/制御/命令/脅迫しないと成果 は出せない • 野心を抱かない、責任を取りたがら ない、命令されたい • 自然に努力し働く • コミットした目標のために自己管 理、自己統制を行う • 適切な環境が与えられれば、人は責 任を回避するよりむしろ責任を求め る 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51+igEK3VPL._SX352_BO1,204,203,200_.jpg
  17. X 理論の背景 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51+igEK3VPL._SX352_BO1,204,203,200_.jpg ❏ X 理論は19世紀にフレディック・テイラー氏によって生まれた 「科学的管理法」に基づいた概念 ❏ 当時の工場/採掘など、大量生産/単純作業を前提とした作業者

    に対する生産性を最大化するために生まれた考え方 ❏ 計画/改善と作業を分離することによるオーバーヘッド ❏ 体系的な改善に注力できない ※ プロ野球選手のような技術屋さんにとってこれは当てはまるだろうか?
  18. 落合監督率いる中日ドラゴンズとティール 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg 進化型 (ティール) 信頼に基づき、一人ひとりが自由に意思決定をする 自主経営・全体性・進化する存在目的 全体性 合理性・論理性に加え、感情や家族など、 人間というものを大事にしながら作る組織

    • 「選手と全く感情のつながりがない」 「選手を駒として見ている」との書かれ方もしている • 一方で、引退するかどうかを奥さんとちゃんと決めるよう促 したり、引退試合に家族・友人などを招待できるように手配 する、引退後の就職先の斡旋などの配慮もあった
  19. 「私が一番大切にしているのは、自分の人生をいかに自分の思うがままに生きてい くか、ということだ。そのために不可欠なのが、決断、実行だと考えている。(中 略) 多くの環境に身を置き、そこで人間関係が築かれていくうちに、決断、実行を 迷ったり、逃げたり、できなくなったりしていくものだろう。それは、結果、それ に伴う周囲の目、責任を考えすぎてしまうことも一因だ。」 ティールの特徴 ~意思決定の基準は外的ではなく内的~ 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51X-NRVILwL._SX343_BO1,204,203,200_.jpg

    「けれど、最善を尽くしても期待した結果を得られないことはある。やって みて、自分の力では及ばないと知ることもある。(中略) それでも、決断、実 行したうえでの失敗は、反省材料や教訓となって次につながる。しかし、決 断、実行しなかった後悔は何も生み出してくれない。(中略) 人生についてま わる決断、実行を、上司や先輩など周囲の人たちの知恵も借りながら行い、 どんな結果になっても責任は自分にあるのだと覚悟することだ」
  20. 「例えば、家庭の中で妻が夫に対して『あそこのご主人は課長になったの に、あなたは何をやっているの』(中略) などと言うのは絶対にタブーだ。 (中略) だが、自分の才能を伸ばすという意味の競争は必要だと思う。」 ティールの特徴 ~意思決定の基準は外的ではなく内的~ 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41TV8E87QFL._SX323_BO1,204,203,200_.jpg 「ここで気をつけたいのが、そのグラフを見て『自分もなんとか成

    績を上げよう』と考えずに『どうせ自分はあいつには勝てないから いいんだ』と思ってしまうことだ。この『いいんだ』が、人間のあ らゆる進歩を止めてしまうのだ。そんなときには、何らかのモチ ベーションをもたせて『いいんだ』症候群から解き放ってやりた い。日々わずかでも進歩していることが実感できれば、人間は目標 を持てるはずだ。他人との比較対照ではなく、自分自身の目標に置 き換えることが肝要である」
  21. なぜ「オレ流」と称されたのか ❏ 落合さんは進化型 (ティール) の思考を持っていたと考えることができる ❏ 決してエリートとは言えない野球人生だったにも関わらず、トップまで上り詰 めたという背景が影響しているのかもしれない ❏ ただ、プロ野球界という衝動

    (レッド) ~ 達成型 (オレンジ) 組織の中では、価 値観が違い、浮いた存在になって衝突することもあったのかもしれない 引用: https://m.media-amazon.com/images/S/aplus-media/vc/7560936e-dbef-4afc-87b8-2eab66f95156.__CR0,0,970,600_PT0_SX970_V1___.jpg
  22. 2007年 完全試合リレーで日本一へ ❏ 2007年、中日ドラゴンズは日本シリーズに進出 ❏ 4勝先取のゲームで3勝1敗、この試合に勝てば日本一 ❏ 先発投手の山井大介選手が、8回まで完全試合 (一人のランナーもださ ずに打者を抑える)

    ❏ 日本シリーズでの完全試合達成はいまだかつて誰も達成したことがな い (完全試合自体、2022年の佐々木朗希選手が28年ぶりに達成と非常に珍しい記録) ❏ 誰もが9回も山井選手が投げると思ったが、落合監督は絶対的守護神で ある岩瀬をマウンドに送った
  23. 2007年 完全試合リレーで日本一へ ❏ 結果、岩瀬投手が3人で締め、日本一達成 ❏ しかしこの采配は物議を醸し、個人の記録よりもチームを優先させる 「非情采配」などとプロ野球 OB や政治家からも非難されてしまう 引用:

    https://www.youtube.com/watch?v=m5kh3A-I70Y&ab_channel=BaseballPsychology ※ 交代の理由... ・山井選手の手のマメが潰れながら投球を 続けており、山井選手本人が「岩瀬さんで お願いします」と申し出た ・この試合に負けた場合、次の2連戦は敵 地での試合であり、勝てる可能性が低いた め、なんとしても勝ちたい試合だった
  24. なぜ落合監督率いる中日ドラゴンズは強かったのか? ❏ 組織のトップ (監督) である落合博満さん自身が進化型 (ティー ル) の意識を持ち、選手・コーチ・スタッフにその考えを浸透さ せていった ❏

    「どの組織形態 (例えば達成型(オレンジ)組織) でも、組織の上 位にいる人々がステージを上がれば上がるほど業績が伸びる」 ❏ 他の球団組織に比べ、ティール型の特徴を兼ね備えた組織とな り、常勝チームと呼ばれる黄金時代になったのでは 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/41qCziK8B5L._SX307_BO1,204,203,200_.jpg
  25. 組織状態とアジャイル ❏ マイケル・サホタさんによる Certified Agile Leadership (CAL1) では、 ティール組織における ”グリーン

    (多元 型)”, “ティール (進化型)” の組織が、 アジャイルのマインドセットを支援する と解説 ❏ ティールの考えを理解するということも 組織をアジャイルにしていくには重要な のでは 引用: 「Certified Agile Leadership (CAL1) トレーニング参加レポート」Yasuko NAITO, https://medium.com/wingarc/certified-agile-leadership-cal1-%E3%83%88%E3%83%AC%E3%83%BC%E3%83%8B%E3%8 3%B3%E3%82%B0%E5%8F%82%E5%8A%A0%E3%83%AC%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%88-50f550e675b2
  26. 番記者の自主性も育む → 番記者である鈴木忠平さんは、その後気になることがある際には、時には一人 で落合監督を訪ね、取材をすることもあった。 引用: https://images-na.ssl-images-amazon.com/images/I/51ccRBsipzL._SX339_BO1,204,203,200_.jpg 「いつしか私 (鈴木さん) は、誰かの指示ではなく、自分の 意思で落合のもとに向かうようになっていた。気づけば朝の

    倦怠感は消え去り、ただ夜を待つことを止めていた。」 「『お前、ひとりか?』 監督という立場にある人間の前には、いつも長蛇の列ができている。席次表が決 められていて、末席の記者は隅っこで順番を待っているしかない。私が知ってい たこの世界の常識を落合は破壊した。 『俺はひとりで来るやつには喋るよ』」