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AI時代に価値を生む私たちの特性と能力

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January 01, 2026

 AI時代に価値を生む私たちの特性と能力

概要: 生成AIが「計算」と「効率化」を担う時代、私たち人間に残された、そしてより重要性を増す役割とは何でしょうか? 本スライドでは、AIにはない人間固有の特性である「身体性・有限性・社会道徳性・主体性」を紐解き、これからのリーダーシップに不可欠な能力を定義します。

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January 01, 2026
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  1. F A 人間の特性 人間の能力 1 2 私たちの判断と行動を規定する 4つの基盤特性 The Foundation

    of Humanity その基盤から生まれる 6つの実践的な能力 The Uniquely Human Abilities
  2. F01 身体性 Embodiment 物理的な身体を通じて世界と相互作用し、環境を意味ある文脈として 体験する特性。また、実在性。 ⚫ 感情の起点 感情はまず身体反応として立ち現れ、思考の前提となる。 ⚫ 行動の制約

    身体は一つしかなく、一日の活動量には限界がある。 この制約が、何が重要を選択し、優 先順位をつけるという人間的な意思決定を生む。 ⚫ 非言語的相互作用 私たちは世界を単なる物理データとしてではなく、行動を促す、意味ある文脈として体験す る。表情、声のトーン、佇まいが「場の空気」を形成し、言語化されない意図を伝達する。 1 人間の特性
  3. F02 有限性 Finitude 自らの時間、寿命、資源が有限であるという根源的な前提の上で、意 思決定を行う特性。 ⚫ 選択と放棄の覚悟 人生が有限であるからこそ、何を捨て、何に集中するかを決める必要が生まれる。 ⚫ 価値観の形成

    死や喪失の可能性が、覚悟・後悔・感謝を生み、行動の一貫性や価値観の軸を形成する。失 うことの畏れに直面し、何が本当に大切なのかという人生観が鋭く問われる。 ⚫ 責任の重み 一回性の決断は、やり直しがきかないかもしれないという重みを伴う。この責任感が、現 実的な、あるいは大胆な意思決定の源泉となる。 1 人間の特性
  4. F03 データや規則だけでなく、他者との関係性の中で「正しさ」や「善」 を対話的に構築し、信頼のネットワークを形成する特性。 ⚫ 社会的感情による制御 信頼、評判、恥、罪悪感といった社会的感情が、単なる損得計算を超えた行動制御の仕組み として働く。 ⚫ 対話と文脈により正解が作られる 正しさは絶対的なものではなく、他者に説明し、納得を得るという対話と手続きを通じて強

    化・更新される。道徳は固定のルールではなく、状況、関係性、権力差などを考慮した調整 の結果であり、常に文脈に依存する。 ⚫ 人間の尊厳と尊重 他者を単なる手段やモノとして扱わず、目的そのものとして尊重することを求める。この考 え方が、効率や最適化を超えた人間社会の基盤となる。 社会道徳性 Social morality 1 人間の特性
  5. 1 人間の特性 F04 主体性 Agency “Why”(なぜなすべきか)という目的そのものを、自らの意思で設 定・更新する特性。 ⚫ 自己統制と目的設定 目先の欲求や衝動をコントロールし、自らの価値観に基づいて、より高次の目的を立てる。

    ⚫ 目的の更新、意味への意志 人間の根源的な動機は快楽や権力ではなく、自らの生に意味を見出すことへの渇望。最適化 (How)に留まらず、AIには与えられない『目的関数』そのものを「なぜこれを行うのか」 と問い直し、作り替える。 ⚫ 責任の引き受け 自ら設定した目的から生じる結果について、最終的な責任を引き受ける。
  6. 2 人間の能力 A01 言語化されない他者の内面を深く受け取り、 深い信頼関係を築くことができるスキル ① 感情的同調と受容力:相手の感情や葛藤を読み取り、言葉にされない不安、抵抗、遠慮などを汲み取 る力。単に情報を処理するのではなく、心理的安全性を作り出すことも求められる。AIは言語処理能 力には優れているが、目の前の相手の沈黙や表情の微細な変化、場の空気といった非言語的な文脈を 察することはまだ難しい。

    ② 継続的パートナーシップ構築力:誠実さ、一貫性、配慮、境界線といった「信頼の前提」を維持し、 協力関係が継続する形に整える力。単発の好意で終わらせず、継続可能性を設計する。AIと共に働く 環境下では、困難を共に乗り越えたり対話を重ねたりすることで醸成される「この人の言うことなら 信じられる」といった人間同士の信頼関係が、マネジメントの土台としてより一層重要視される。 ③ 合意形成と調停力:対立、誤解、利害の衝突を放置せず、対話の順序や場を整えて「落とし所」を作 る力。合意の質と、そこに至るまでの手続きを両立させることが求められる。職場において意見の不 一致や摩擦は避けられないものであり、これらを建設的な方法で解決に導く能力は、AIには代替でき ない人間特有の役割。 共感・関係構築力 Empathy&relationship building
  7. 2 人間の能力 A02 行動に「なぜやるのか」という意義を与え、 自分も含めて人を動かす物語を紡ぎ出すスキル ① 価値を見出す力、定義力:目先の課題を、価値・使命・顧客の痛み・将来像へ接続し、定義する力。 単なる作業を目的へと格上げし、なぜそれを行うのかという根本的な問いに対する答えを創出する。 AIは論理的な最適解を提示することはできるが、その行動がなぜ重要なのかという価値判断や文脈の 付与は、人間にしか成し得ない。

    ② 道筋を示す力:不確実性や痛みを伴う状況下にあっても、前進する理由を言語化し、周囲が納得でき る「向かう先」を提示する力。これは組織の士気と継続性を支える基盤となる。未来への意味や目的 を見出すことは、困難な状況を耐え抜き、精神的な生存を可能にするための根源的な力である。 ③ 物語化力、文脈の編集力:断片的な出来事を一貫したストーリーとして統合し、経験を学びへと変換 する力。失敗や停滞さえも、次の判断に資する資産へと昇華できる。AIはデータを処理することはで きるが、個別の事象を人生や歴史といった大きな文脈の中で捉え直し、そこに一貫した意味を見出す ことは、主観的経験を持つ人間に固有の能力。 意味づけ力 Meaning-making
  8. 2 人間の能力 A03 不確実な中で「ここで区切る」と定め、勇気の一歩を確定させるスキル ① 仮説推進力:完璧な根拠が揃うのを待たずに、仮説を持って前に進む力。後から修正可能な形にして 決定を下すことで、停滞を回避する。AIはデータに基づく確率計算によって出力を行うため、未知の 状況や想定外の文脈においては、正確な判断ができず、ハルシネーションを起こす脆弱性がある。人 間は、情報が不足している中でも、直感や文脈を捉えることで、論理的根拠が薄くとも「まずはこう 動く」という仮説を立てて実行する柔軟性を持つ。

    ② トレードオフ判断力:複数の選択肢の中から、価値観・制約・リスクを基準にして「何を捨てるか」 を決める力。決めないことによる損失も含めて総合的に判断する。AIは目的関数(報酬)を最大化す るように最適化するが、なぜその価値が優先するのかという価値判断そのものを自律的に行うことは できない。人間は、相反する利益や倫理的ジレンマが生じる場面において、損得だけでなく、美学や 責任、痛みを伴う主体的な決断を下す。 ③ 意思決定力: 周囲の反対や不満が残る状況であっても、意思決定の主体として踏み切る力。全員の 合意が取れない局面においても、「止めない」という選択を行う。AIには主体性や責任能力が存在し ないため、自らの意志でリスクを引き受けたり、批判に耐える覚悟を持てない。人間は自らの実存や 社会的信用を賭けて「私が決めた」という当事者意識を持つ。 決断力 Decisiveness
  9. 2 人間の能力 A04 自分の判断だけでなく、役割や任務を「自分ごと」として捉え、 成功だけでなく失敗の結果も引き受け、収束させるスキル ① オーナシップ(当事者)力:役割や任務を単なる作業としてではなく、自分自身の課題として背負う 力。AIには痛みや恥を感じる身体性や社会性がないため、失敗の結果を真意味で引き受けることがで きるのは、社会的実存を持つ人間だけ。 ②

    リスク・コントロール(予兆管理)力:自身の判断が、関係者のみならず社会全体へどのような影響 を及ぼすかを想像し、必要な対処を行う力。AIはパラメータ化されていない文脈や世間の空気、潜在 的な不快感といった広範な社会的波及効果までを自律的に配慮することは困難である。人間は身体的 な感覚や社会道徳性を基盤にして、数値化しにくいリスクや他者への影響を予見し、配慮できる。 ③ アカウンタビリティ(説明・収拾)力:なぜその判断を下したかを論理的に説明し、問題が発生した 際には原因究明から再発防止までを自らの責任範囲として完遂する力。AIは膨大なデータから事故原 因の分析レポートを出力したり、謝罪文を生成したりすることは可能だが、怒りや不信感を抱くステ ークホルダーに対し、顔の見える相手として対話し、感情的な納得を得て、損なわれた信頼関係を回 復させるという社会的な収束は、まだ人間にしか成し得ない。 責任を負う力 Accountability
  10. 2 人間の能力 A05 「できるか」ではなく「すべきか、してよいか」で判断し、 道義的な一線を引くスキル ① 文脈適用力:法令や社会規範、組織の理念といった抽象的なルールを、具体的な現場の状況や文脈に落とし 込んで適用する力。AIは明文化されたルールや過去の判例データに基づく適用は得意だが、ルール同士が衝 突する場面や、数値化できない「文脈」や「空気」が支配する状況下での柔軟な調整は苦手。人間は社会的 な慣習や人間関係の機微といった言語化されにくい情報を身体的に受け取り、状況に応じた最適な規範の運

    用を行うことができる。 ② インテグリティ維持力:自分の判断が、第三者に対して説明可能か、あるいは胸を張れるか、等の視点で客 観的に評価する力。AIは設定された目的関数を最短距離で達成する傾向があり、そのプロセスが倫理的に正 しいかを自律的に「恥じる」ことはない。人間は社会道徳性を内包し、計算上の損得を超えた「人として正 しいか」という基準で踏みとどまることができる。 ③ ソーシャル・リスク予見力:差別、誤情報の拡散、安全性の懸念など、データや数値には表れにくい潜在的 な被害を想像し、未然に防ぐ力。AIは学習データに含まれるバイアスを無自覚に増幅させるリスクがあり、 また物理的な身体を持たないため、痛みや不快感を実感として理解できない。人間は自らの身体性を媒介に して他者の痛みに共感できることから、計算外の副作用に気づき、倫理的な防波堤となる可能性がある。 倫理的判断力 Human-centric Capabilities
  11. 2 人間の能力 A06 全体を俯瞰しながら、人とAIを含めた仕組みの最適な協調体制を設計し、 目的の達成に向けて方向性を示して推進するスキル ① グランドデザイン力:目的・制約・利害・リスクを同時に捉え、複数の価値が衝突する状況で優先度 付けを行い、“勝ち筋(全体の論理)”を定義する力。AIは与えられた指標の最適化はできるが、指標 同士が矛盾する局面で「何を価値として採用するか」を社会的責任のもとに決められない。人間は社 会道徳性と主体性を背景に、説明可能性と正当性を背負って目的関数そのものを選び直す。

    ② 責任境界の設計力:AIに任せる/人が監督する/人が責任を持つ、の境目を引き、介入点・監督点・ 停止条件を置く力。重要なのは、「事故が起きたとき誰が止め、誰が説明し、誰が償うか」を先に決 めて構造に埋め込むこと。AIは自律実行はできても、社会的制裁や信頼毀損を引き受けられない。人 間は、法・規範・組織責任に耐える形で、実務の安全装置としての境界線を設計する。 ③ リーダシップ:対話→決定→実行のテンポを作り、衝突や停滞があっても、方向性を保ちながら人を 動かす力。AIは情報整理や案の提示はできても、人間の摩擦を引き受けて調停し、腹落ちと覚悟を作 る主体になれない。人間は身体性と社会性に根ざした信頼の運用によって、合意の質とスピードを両 立させる。 統合的リーダシップ Integrative Leadership
  12. 人間の強みを活かしてAIと役割分担し、価値を生み出す AIの得意領域(How) 人間の得意領域(Why・What) 最適化 生成 高速化 主体性 社会道徳性 有限性 身体性

    人間性の基盤 人間ならではの能力 価値の選定、目標定義 責任、正当性の判断 AIが返すのが最適解なら、 人間が担うのは、目的や意味、責任。