ICH Q5B r-DNA由来のタンパク質製剤製造のための発現コンストラクトの解析

ICH Q5Bはr-DNA由来のタンパク質製剤製造のための発現コンストラクトの解析についてのガイドラインです。発現コンストラクトは生物学の用語で、プロモーター（発現開始を促す配列）、遺伝子、複製オリジン（DNA複製の開始点になる配列）などを含むDNAのことを指します。

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1. ICH Q5B r-DNA由来のタンパク質製 剤製造のための発現コンストラクト の解析 2020/8/11 Ver. 1.0
2. 発現コンストラクト(Expression construct) タンパク質のmRNAシークエンスを含む発現ベクターのこと • タンパク質はmRNAの翻訳で生成する • mRNAはcoding DNAからの転写により生成する • DNAの転写はプロモーターに依存して開始する • プロモーターとDNAその他をまとめたものをベクターと呼ぶ ＊ベクターはプロモーター、coding DNA（遺伝子配列など）、組み換え部位、増幅用の複製オリジンなどを含む環状DNAであることが多い
3. ICH Q5Bの対象 Expression constructの構造の評価法について • 原核・真核細胞でのタンパク質生成が対象 • タンパク質は組み換えDNAから得られるもの • 組み換えDNAは核酸分析の方法で調べる • タンパクの2次/立体構造・修飾も調べる
4. コンストラクト解析の根拠 DNAシークエンスの保存性を調べるのが目的 • 組み換え前後のシークエンスが正しいことを確認する • 遺伝子変異が起こっていないことを保証する • タンパク質の修飾＊が意図したものであるか調べる ＊糖鎖がつく（糖修飾）、リン酸化、アセチル化など
5. 核酸の解析法 DNAだけでなく、mRNAやcDNAなども確認する • DNA配列に間違いがないことを多重に確認する • クローンのDNAやPCR＊の使用も有効 • 手法はバリデートされる必要がある • 技術の進歩にしたがい最適な方法を選ぶ必要がある ＊Polymerase chain reactionの略。DNAの一部を増幅させる方法
6. 発現システムの分析 コンストラクトは細胞に導入し、その後製造に用いる • DNA配列の起源/生成法についての記載が必要となる • ベクター内の要素＊やマップについて詳細に説明する • 発現しうる他のタンパク質についても記載する • 細胞へ導入する方法についても説明が必要 ＊オリジン、抗生物質耐性遺伝子、プロモーター、エンハンサー、タンパクなど
7. 細胞バンク（Cell Bank System） タンパク質製剤の製造はMCB、WCBを用いて行う • MCB、WCBの十分な解析が必要となる • 同一細胞の一部を特定の条件で保存するものをバンクと呼ぶ • MCBは遺伝子導入細胞、WCBはMCBを培養し増やしたもの • 培養法などを含め、細胞系統の履歴を記録する必要がある
8. 細胞バンク（Cell Bank System） MCB、WCBがコンストラクトを適切に持つことを確認する • 制限酵素マッピングは確認の方法として適している • コピー数、変異、組み換え箇所などを明らかにする • 発現タンパクのアミノ酸配列が正しいことを確認する • 細胞内のコンストラクト＊の配列も調べる ＊染色体上に組み換えられていることも、組み換えなしで発現する場合もあるようだ
9. in vitroでの細胞使用期限 製造に使用する細胞の使用期限はあらかじめ定めておく • パイロット/製造スケールで確認する • 製造に使う細胞でのDNA配列も確認する ＊使用期限の決め方についてはこのガイドラインの範囲外のようだ