R T N E R S 4 匿名化路線① 連結不可能匿名化 個人情報保護法制定時、疫学研究指針 (当時)において、連結不可能匿名化・ 連結可能匿名化(対応表なし)は個人情 報に該当しないと整理 改正時の議論で、提供元基準が採用され、 匿名化しても原則として個人情報のまま 非個人情報化されるのは「匿名加工情報」 という特別な場合
R T N E R S 5 疫学研究指針(当時) 11 他の機関等の資料の利用 (2) 既存資料等の提供に当たっての措置 既存資料等の提供を行う者は、所属機関外の者に研究に用いるための資料を提供する場合 には、資料提供時までに研究対象者から資料の提供に係る同意を受け、及び当該同意に関す る記録を作成することを原則とする。ただし、当該同意を受けることができない場合には、 次のいずれかに該当するときに限り、資料を所属機関外の者に提供することができる。 ① 当該資料が匿名化されていること。(連結不可能匿名化又は連結可能匿名化であって対応 表を有していない場合) ② 当該資料が①の匿名化に該当しない場合において、以下の要件を満たしていることについ て倫理審査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けていること。 ア 当該疫学研究の実施及び資料の提供について以下の情報をあらかじめ研究対象者等に 通知し、又は公開していること。 ・所属機関外の者への提供を利用目的とすること ・所属機関外の者に提供される個人情報の項目 ・所属機関外の者への提供の手段又は方法 ・研究対象者等の求めに応じて当該研究対象者が識別される個人情報の研究機関外の者へ の提供を停止すること イ 研究対象者となる者が研究対象者となることを拒否できるようにすること。 ③ 社会的に重要性の高い疫学研究に用いるために人の健康に関わる情報が提供される場合に おいて、当該疫学研究の方法及び内容、当該情報の内容その他の理由により①及び②によ ることができないときには、必要な範囲で他の適切な措置を講じることについて、倫理審 査委員会の承認を得て、研究を行う機関の長の許可を受けていること。 https://www.lifescience.mext.go.jp/download/rinri/ep01/ep1-3-1.pdf
R T N E R S 6 匿名化路線② 次世代医療基盤法の概要 医療機関 (医療情報取扱事業者) 認定事業者 (認定匿名加工医療情報作成事業者) 事前通知 (オプトアウトの機会) 情報利用者 (匿名加工医療情報取扱事業者) 匿名加工医療情報 として提供 個人情報保護法上 同意が必要 個人情報保護法上 同意が必要 オプトアウトで 第三者提供
R T N E R S 8 次世代医療基盤法の構造 • 利用目的、第三者提供の例外が狭い • 従業員の守秘義務 • セキュリティ基準 対象情報 あらゆる生の医療情報(ゲノム含む) 厳格な制限により認定事業者に限定 匿名加工のみ 共有範囲 利用目的 オプトアウトによる情報収集を許容 匿名加工医療情報(非個人情報)の流通
R T N E R S 9 <匿名加工医療情報の自由な流通>は骨抜きに 医療情報取扱制度調整WGとりまとめ 法律案 法律成立 ガイドライン 認定事業者がオプトアウトで集積した個人情報は 学術例外により自由に利用できる余地を想定 認定事業者には個人情報保護法より遥かに厳しい 義務が課せられ、学術例外は破談 国会審議過程で「丁寧なオプトアウト」と説明さ れたことで、オプトアウトの意義は没却 匿名加工医療情報は個人情報ではないから、第 三者提供禁止、安全管理措置義務は適用なし → 認定事業者との契約を介して事実上適用
R T N E R S 10 WGとりまとめ 注11 例えば、人の生命の保護のために必要がある場合や公 衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、 本人の同意を得ることが困難であるときは、本人の同 意なしに第三者に医療等情報を提供可能である。また、 医療情報匿名加工・提供機関(仮称)が大学その他の 学術研究を目的とする機関等(学術研究の用に供する 目的で個人情報を取り扱う場合に限る。)に対して医 療等情報を提供する場合には、個人情報保護委員会は その権限を行使しないこととなる。 次世代医療ICT基盤協議会医療情報取扱制度調整ワーキンググループ(WG-B)とりまとめ https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/jisedai_kiban/pdf/161227_wg-b_torimatome.pdf
R T N E R S 11 ガイドライン認定事業者編 なお、匿名加工医療情報については、以上のように認定事業者 との間の契約により匿名加 工医療情報としての適切な安全管理 措置が確保される範囲内における利活用を想定しており、一般 に公表することは原則として想定していない。 (認定事業者と匿名加工医療情報取扱事業者との契約で取り決 めるべき事項) ・ 匿名加工医療情報を提供する際は、あらかじめ認定事業者の 許可を得るとともに契約を結ぶことを義務付け ・ 当該提供に係る情報について、契約を通じて匿名加工医療情 報である旨の明示及び安全管理措置を適切に講ずることを義 務付け ・ 利活用条件に反した匿名加工医療情報の取扱いを行った場合 の制裁措置の明記 https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kenkouiryou/jisedai_kiban/pdf/h3005_guideline.pdf
R T N E R S 13 どう判断すればいいのか? 常識で考えましょう! • 電子カルテ、看護記録、実習記録に書く ような情報は、全て個人情報であり(お そらく要配慮個人情報であり)、守秘義 務の対象(原則) • 氏名等を削除しても「安全管理措置の一 環として」の仮名化で、個人情報のまま • 個人情報ではないもの ‒ 匿名加工情報(特別な場合) ‒ 統計情報
R T N E R S 15 医療従事者の守秘義務 刑法 (秘密漏示) 第百三十四条 医師、薬剤師、医薬品販売業者、助産師、弁護士、弁護 人、公証人又はこれらの職にあった者が、正当な理由がないのに、その 業務上取り扱ったことについて知り得た人の秘密を漏らしたときは、六 月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 保健師助産師看護師法 第四十二条の二 保健師、看護師又は准看護師は、正当な理由がなく、 その業務上知り得た人の秘密を漏らしてはならない。保健師、看護師又 は准看護師でなくなつた後においても、同様とする。 第四十四条の四 第四十二条の二の規定に違反して、業務上知り得た人 の秘密を漏らした者は、六月以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。 実習生は法律上の守秘義務がない(契約上の守秘義務のみ) 参考:司法修習生(守秘義務あり)、管理栄養士(法律上守秘義務なし)
R T N E R S 20 統計情報 なお、「統計情報」は、複数人の情報から共通要素に係る 項目を抽出して同じ分類ごとに集計して得られるデータで あり、集団の傾向又は性質などを数量的に把握するもので ある。 したがって、統計情報は、特定の個人との対応関係が排斥 されている限りにおいては、法における「個人に関する情 報」に該当するものではないため、改正前の法においても 規制の対象外と整理されており、従来同様に規制の対象外 となる。 個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(匿名加工情報編)4頁 (https://www.ppc.go.jp/files/pdf/guidelines04.pdf)
R T N E R S 21 要配慮個人情報 要配慮個人情報の範囲 病歴(法2条3項) 心身の機能の障害(令2条1号) 健康診断等の結果(令2条2号) 診療情報・調剤情報(令2条3号) ※原則、要配慮個人情報該当を前提に検討する必要がある 効果 本人同意なき取得の禁止(法17条2項) オプトアウト第三者提供不可(法23条2項) 医療健康分野関係
R T N E R S 24 研究上のインフォームド・コンセント 医学系研究指針により要求されている(背 後にはヘルシンキ宣言) 人を対象とする医学系研究に関する倫理指針 https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10600000-Daijinkanboukouseikagakuka/0000153339.pdf • 細かい説明事項が指針に規定されている 【主な説明事項】 • 研究の内容、手法 • 被験者の負担、リスク、利益 • 同意が撤回できること、不利益を受けないこと • 個人情報の取扱い …… • 書面同意と、口頭同意(書面記録)があ り、一定の類型には書面同意が必要
R T N E R S 25 同意の取り方 「本人の同意を得(る)」とは、本人の承諾する旨の 意思表示を当該個人情報取扱事業者が認識することを いい、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、本 人が同意に係る判断を行うために必要と考えられる合 理的かつ適切な方法によらなければならない。 個情委ガイドライン通則編 「何もしなかったから同意でいいですよね」 という取扱いは基本的に認められていないが、 医療については特別に「黙示の同意」が許容 (医療介護ガイダンス)
R T N E R S 26 黙示の同意 診療に必要又は付随する 事項(保険請求、管理業 務等)に限定され 医学研究などの同意は許 容されない 院内掲示の例(日本医師会) https://ocfc.jp/wp-content/uploads/2015/07/privacy.pdf ①医療の提供に必要 ②院内掲示 ③留保の意思表示なし 同意があったとみなさ れる(医療介護ガイダンス)
R T N E R S 27 黙示の同意①(第三者提供) 医療介護ガイダンス (3)本人の同意が得られていると考えられる場合 医療機関の受付等で診療を希望する患者は、傷病の回復等を目的として いる。一方、医療機関等は、患者の傷病の回復等を目的として、より適 切な医療が提供できるよう治療に取り組むとともに、必要に応じて他の 医療機関と連携を図ったり、当該傷病を専門とする他の医療機関の医師 等に指導、助言等を求めることも日常的に行われる。 また、その費用を公的医療保険に請求する場合等、患者の傷病の回復等 そのものが目的ではないが、医療の提供には必要な利用目的として提供 する場合もある。このため、第三者への情報の提供のうち、患者の傷病 の回復等を含めた患者への医療の提供に必要であり、かつ、個人情報の 利用目的として院内掲示等により明示されている場合は、原則として黙 示による同意が得られているものと考えられる。 なお、傷病の内容によっては、患者の傷病の回復等を目的とした場合で あっても、個人データを第三者提供する場合は、あらかじめ本人の明確 な同意を得るよう求めがある場合も考えられ、その場合、医療機関等は、 本人の意思に応じた対応を行う必要がある。
R T N E R S 28 黙示の同意①(第三者提供) ①患者への医療の提供のために通常必要な範囲の利用目的について、院 内掲示等で公表しておくことによりあらかじめ黙示の同意を得る場合 医療機関の受付等で、診療を希望する患者から個人情報を取得した場合、 それらが患者自身の医療サービスの提供のために利用されることは明ら かである。このため、院内掲示等により公表して、患者に提供する医療 サービスに関する利用目的について患者から明示的に留保の意思表示が なければ、患者の黙示による同意があったものと考えられる。(III2. 参照) また、 (ア)患者への医療の提供のため、他の医療機関等との連携を図ること (イ)患者への医療の提供のため、外部の医師等の意見・助言を求めること (ウ)患者への医療の提供のため、他の医療機関等からの照会があった場合 にこれに応じること (エ)患者への医療の提供に際して、家族等への病状の説明を行うこと 等が利用目的として特定されている場合は、これらについても患者の同 意があったものと考えられる。
R T N E R S 29 黙示の同意②(要配慮個人情報の取得) 【要配慮個人情報の取得時における本人の同意について】 医療機関の受付等で診療を希望する患者は、傷病の回復等を目的としている。一 方、医療機関等は、患者の傷病の回復等を目的として、より適切な医療が提供で きるよう治療に取り組むとともに、その費用を公的医療保険に請求する必要が生 じる。良質で適正な医療の提供を受けるためには、また公的医療保険の扶助を受 けるためには、医療機関等が患者の要配慮個人情報を含めた個人情報を取得する ことは必要不可欠である。 このため、例えば、患者が医療機関の受付等で、問診票に患者自身の身体状況や 病状などを記載し、保険証とともに受診を申し出ることは、患者自身が自己の要 配慮個人情報を含めた個人情報を医療機関等に取得されることを前提としている と考えられるため、医療機関等が要配慮個人情報を書面又は口頭等により本人か ら適正に直接取得する場合は、患者の当該行為をもって、当該医療機関等が当該 情報を取得することについて本人の同意があったものと解される。 また、医療機関等が要配慮個人情報を第三者提供の方法により取得した場合、提 供元が法第17条第2項及び第23条第1項の規定に基づいて本人から必要な同意 (要配慮個人情報の取得及び第三者提供に関する同意)を取得していることが前 提となるため、提供を受けた当該医療機関等が、改めて本人から法第17条第2 項の規定に基づく同意を得る必要はないものと解される。
R T N E R S 32 今後の課題 • 医療を継続的に提供するためには、医学 研究と並んで臨床実習が必要だが、 (医 学研究と比して)課題として認識が弱い • 看護臨床実習における同意の取得方法に ついてのルールが不明確 ‒ 「臨地実習の基準」は法的事項の検討が弱い https://www.janpu.or.jp/wp/wp-content/uploads/2017/12/H29MEXTProject.pdf 26頁 • 守秘義務については立法が望ましいが、 少なくとも統一的な指針が必要
R T N E R S 33 田辺総合法律事務所 T A N A B E & P A R T N E R S 弁護士 吉峯 耕平 平成17年第一東京弁護士会登録(修習58期)東京大学経済 学部出身。会社法、金商法を中心とする企業法務全般、訴 訟等の紛争解決業務。独禁法、下請法。刑事事件。医事法。 証券訴訟における損害算定、デリバティブの時価算定が争 点となる事案等、経済学的知見や統計分析の訴訟への応用 を得意とする。 第一東京弁護士会総合法律研究所IT法部会 部会長。 著書等 「従業員が逮捕された場合には企業はどう対応すべきか」 (Lexis企業法務2007.7) 「下請法コンプライアンス体制とその盲点」 (BLJ2011.8 ) 「企業法務紛争における経済分析」 (BLJ 2013.10) 『病院・診療所経営の法律相談』(青林書院) 「「消費税特別措置法」について企業が知っておくべきこ と(前編・後編)」(企業実務2013.9,10) 「デジタル・フォレンジックの原理・実際と証拠評価のあ り方」(季刊刑事弁護第77号) 「企業法務のFirst Aid Kit 問題発生時の初動対応」(レク シスネクシスジャパン) 『全国版 法律事務所ガイド2014 Vol.2』(商事法務) 「株式取得価格決定におけるマーケットモデルを用いた回 帰分析の具体的な方法論-レックス事件を題材に-」(商 事法務2071号) 『デジタル証拠の法律実務Q&A』(日本加除出版) 「デジタル証拠で訴訟に負けないために」(BLJ2016.2) 「応招義務と「正当な事由」の判断基準の類型的検討」 (日本医師会雑誌 第145巻第8号・共著) 「実践!ヘルステック法務 医療・ヘルスケアアプリの類 型と法規制」(BLJ2018.1) 連絡先 [email protected] http://tanabe-partners.com/ 田辺総合法律事務所 〒100-0005 千代田区丸の内3-4-2 新日石ビル10階 TEL:03-3214-3811 FAX:03-3214-3810