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 202201117自治体DX_内閣府原財団

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September 10, 2025

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  1. 3 Copyright 2022 自己紹介 Profile 地域創生Coデザイン研究所 ポリフォニックパートナー 東京理科大学 客員准教授 デザインイノベーションコンソーシアム

    フェロー 大阪大学、奈良先端科学技術大学院大学を修了後、NTT研究所に入社。2016年よりリビングラボ・Coデザインの研究・ 実践プロジェクトを立ち上げ、2021年にNTT西日本グループの地域創生Coデザイン研究所の設立に関与し、参画。博士 (工学)。主としてHCI、CSCW、UXデザイン、リビングラボの研究開発に従事。デザイン研究のチームを牽引し、企業内の UXデザインプロジェクト、地域の社会課題に関するリビングラボプロジェクトを多数実践し、コンサルティングや教育活動も行っ ている。現在は、大牟田市などの地域主体ともに、まちづくり、地域経営、サービスデザイン、社会システムデザインなどの文脈 で新しいソーシャルデザインのあり方を探求中。著書に「2030年の情報通信技術生活者の未来像」(NTT出版|2015 年)等。 木村 篤信
  2. 7 Copyright 2022 リビングラボに関するこれまでの活動 NTT研究所・NTT西日本はこれまで福岡県大牟田市や奈良県奈良市をフィールドとしたリビングラボによる社会課題 解決PJの実践を実施してきた。 大牟田・奈良での自治体連携・地域課題解決・企業サービス開発などの実績と、各支店の地域活性化プロジェクトの 取り組み加速を狙いとし、2021年7月、地域創生Coデザイン研究所設立。 2018/02〜12 2019/08〜2020/07

    2017/05 大牟田共同実験1 (大牟田市・N西・EV研) リビングラボ構築・運営の検証 大牟田共同実験2 (大牟田市・センター・N西・EV研) 社会課題解決PJ実践 2019/04 大牟田市 関係者との対話 2021/07 新事業体 設立を検討 ▲4月 大牟田未来共創 センター設立 <これまでの主な活動> 地域創生 Coデザイン 研究所設立 奈良共同実験 (奈良市・TOMOSU・N西) 社会課題解決PJ実践 奈良市 関係者との対話 2016/10 デンマーク 共同研究 リビングラボ実践 ノウハウの言語化 リビングラボ研究 プロジェクト開始
  3. 8 Copyright 2022 ビジョン :人々が主体的に共創できる社会へ ミッション:生活者とその暮らしの目線に立ち、生活者やパートナーが 主体性を発揮できる対話的関係・環境を重視し、 ともに持続可能な社会づくりに向けた価値を探索し生み出しつづける 人々が 主体的に共創できる社会

    ②地域の人々とともに 社会課題を解決する事業創出 ①本質的なサービス・政策創出の基盤となる 新しい地域の仕組み(社会システム)の構築 地域の内部に入り込み、 中立的・統合的な立場でビジョン策定 地域経営(政策×ビジネス)のアプローチで 課題探索・解決を主体的に実施 真の暮らしの価値の理解 ビジネス価値追求 ねらい・ゴール 地域のビタミン 地域の体質改善 (=新しい社会システム探索) ③社会課題解決サービス・ 地域経営を変革するPF等の デジタルツールの構築 地域創生Coデザイン研究所のビジョン・ミッション CoデザHP
  4. 9 Copyright 2022 福祉政策起点で新しい人間観にもとづく まちづくり(パーソンセンタードシティ)を 目指す(福岡県大牟田市) 産業政策起点で日本的サスティナビリティに もとづく持続可能な地域や社会が うまれるまちを目指す(奈良県奈良市) 地域住民

    自治体 企業 地域のソーシャル ワーカー等 大牟田 リビングラボ 真に解くべき課題を 探索・設定できる主体 ・奈良市在住の就業者の 約50% が市外で勤務 ・ベッドタウンとしての魅力+働く人の創造性を引き出す 文化財や自然が豊富にある特性を生かした多様な ワークプレイス(サテライトオフィス)がある地域をめざす ・子育て世代の支援 抜本的な公共私連携による解決策の創出 ・高齢化率(65歳以上人口) 36.8% ※全国高齢化率 28.6% ・10万人以上の都市では全国で2番目に高い 高齢化率※ ・日本の中でも20年先をいく超高齢社会モデル都市 (一般社団法人) (一般社団法人) 地域住民 自治体 企業 奈良 リビングラボ 真に解くべき課題を 探索・設定できる主体 未来の社会システム探索チーム モデル地域(大牟田、奈良)において、ソリューションではなく地域の構造的問題を捉えた社会システム(サービス・政 策・コミュニティ活動)を①提案・実装する中で、持続可能な社会システムの②知見を体系化し、③展開する。
  5. 12 Copyright 2022 社会背景:地方自治体の変化 地方自治体の運営は限界を迎える。持続可能な形で住民サービスを提供し続けるために、ICT活用による「スマート自治 体への転換」と、公共私(自治体・コミュニティ・民間企業等)の連携による自治体の「プラットフォーム・ビルダー化」が必 須 ※自治体戦略2040構想(総務省、2018) スマート自治体への転換 •

    新たな自治体や国の施策(アプリケーション)の機能が最大限発揮できるような自治体行 政(OS)の大胆な書き換えが必要 • 破壊的技術(AI・ロボティクス等)を使いこなす自治体へ 公共私によるくらしの維持 (自治体のプラットフォームビルダー化) • 自治体は新しい公共私相互間の協力関係を構築する「プラットフォーム・ビルダー化」が必要: 公 • くらしを支えるための地域を基盤とした新たな法人が必要:共 • 全国一律の規制見直し、シェアリングエコノミー等の環境整備の必要性:私 減少する地方公務員 ひっ迫する財政 増加するインフラ更新費用
  6. 14 Copyright 2022 効果的に共創する仕組みの方法論:リビングラボ 地域の人々 メリット 多様な視点 の獲得 自分の課題 の解決

    企画担当者 リビングラボ メリット ユーザ視点 の獲得 新規企画の 気づき シニアとのダイアローグ 対話のための ツール 当事者意識を 生む工夫 研究者も市民に溶け込む (生活理解,信頼獲得) 実生活での テスト リビングラボの定義※ 製品・サービス企画や政策・活動企画の主体と生活者が 共に、生活者の実生活に近い場で、仮説の探索や解決策の検討・検証を 実験的に行うための仕組み(環境及びプロセス) 例)ヨーロッパでシニア向けICTサービスを検討した Give and Take Project ※木村,(2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局
  7. 15 Copyright 2022 大牟田の地域課題 既存産業 基幹産業の衰退(石炭産業) 人口減少 (特に生産年齢人口) 少子高齢化 (10万人以上で有数の高齢化率)

    自治体財政の悪化 (税収減・政策対応の財政的・ 人的な制約が強まる) 仕事がない (事務職、高度 技術職等) 人手不足 地縁 コミュニティの 担い手不足 地縁 コミュニティの 脆弱化 都市ストックの需給ギャップ (空き家・空き店舗) ミスマッチ <医療・介護・福祉> 制度の利用増・制度疲弊 (民生費増加) 公共交通網の縮小 (高齢者等の移動困難者) 地域外への 流出 (若い世代) 事業継承 できない 財政圧迫 人口減少(社会減)
  8. 17 Copyright 2022 DXとは何か 統合的に価値を転換(トランスフォーメーション)し、デジタルテクノロジーを活用し て、新しい制度・コミュニティ・サービスを生み出すこと。 従来型の統合的なデータ活用(デジタル化)だけでは、行き詰まっている日本社 会は変わることができない。 社会状況 確実・計画

    不確実・アジャイル これまで これから 価値観 効率性・合理性 Well-being・ Sustainability 個人・組織 科学的マネジメント 自己組織化 DXの意味 データ・技術活用 統合的な価値の転換 手段 デジタルテクノロジー・デジタル人材
  9. 19 Copyright 2022 福 祉 教 育 産 業 環

    境 ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 国 予算 制度 事業 基礎 自治体 予算 制度 事業 地域 実践 取組 対象 単世代・特定カテゴリー ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 予算 制度 事業 予算 制度 事業 実践 取組 対象 多世代・横断 政策的統合 統合的実践 転 換 統合的 アプローチ 地域創生の課題1
  10. 21 Copyright 2022 地域創生の課題3 暮らしの質感をとりこぼさないままで、構造(システム)を良くしていくとはどういうことか? 暮らしの時間 ・主観的、生成的、多様 ・歴史的な絆、人間、世間 e.g. 自立共生的、生活世界

    両方の構造に対して デザイン実践をする立ち位置 システムの時間 ・客観的、計画的、均質 ・政策的経緯、公論 e.g.操作的、システム 2022/6/25-26 デザイン学会 オーガナイズドセッション企画資料
  11. 24 Copyright 2022 核となる新しい人間観:パーソンセンタード※ 生活者(パーソン)の暮らしを、独立した個人の暮らしとして捉えるのではなく、周りの家族や地域の人と の繋がりと、その繋がりの中で捉え直されるケイパビリティに基づき、豊かで継続性を持ったナラティブによっ て成り立っていると捉えるもの 学ぶ 楽しむ 働く

    出会う 知る つながる 好奇心 意欲 問題意識 潜在能力 capability つながり connection 人生 narrative 【ビジネス】 マーケティング5.0 【教育】 未来の教室(経済産業省) 【福祉】 地域共生社会(厚生労働省) ※木村ら(2019)パーソンセンタードデザイン:その人らしい暮らしを目 指す人間観に基づくデザイン方法論,日本デザイン学会発表大会概要集.
  12. 25 Copyright 2022 パーソンセンタードシティのコンセプト: どのような状態でも本人の存在が肯定され力が発揮されるまち コミュニティケア的視点 その人らしく生きることに向き合う 産業・テクノロジー的視点 その人と支える人を影ながら支える 社会疫学的視点

    その人らしく生きやすい環境を作る 支援者 (専門職等) 参加コミュニティ 未参加コミュニティ 友人 家族 近所住民 同僚 モバイル 戸建住宅 集合住宅 都市 支援者+モバイル ナラティブ DB 社会資源 DB 生活者課題 DB 疫学知見 DB テク ノロジー DB 設計 ガイドライン DB マクロ ミクロ 暮らし 技術 社会課題 DB 保険業 金融業 医療介護 保育教育 サービス業 宿泊業 交通 物流 建築 通信
  13. 26 Copyright 2022 一般社団法人 大牟田未来共創センター(ポニポニ) ⚫ 「認知症」や「高齢者」などの福祉に閉じた課題設定や取り組みでは、地域においてさまざまな領域で生み出される社会 課題や地域創生を視野に入れたアプローチが難しい状況であった ⚫ 認知症ケアで見出されたコンセプトを深め、セクターや領域における縦割りを横断し、既存の社会システムから“独立しな

    がら埋め込まれる主体”として官民協働で大牟田未来共創センターを設立した(2019年) 大牟田未来共創センター 大牟田市 地域資源 地域・住民 縦割りの打破(調整)、政策展開支援 ビジョンの共有 共創 共創 地域資源の価値を再構築 地域・住民との協働 福 祉 教 育 産 業 地域内のアクター (市民団体、 地場企業など) 地域外のアクター (国内外企業、 研究機関等) ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 国 予 算 制 度 事 業 基礎 自治 体 予 算 制 度 事 業 地域 実 践 取 組 対 象 多世代・横断 政策的統合 大牟田未来共創センター 統合的 アプローチ 計画 統合的実践 支 援 支 援 モデル提案
  14. 27 Copyright 2022 大牟田市 従来の介護予防施策では リーチすることが難しい人がいる (財政的制約も強まる) 企業 他地域で実施した 疾病の早期検知サービス

    の実証実験に人が集まらない 「早期検知」から、 「自らのことを知る新たな方法のデザイン」へと 課題設定を変更 地域 他地域で実施した 疾病の早期検知サービス の実証実験に人が集まらない 高齢者が自らの意欲育て、 多様な形で社会参加する機会が 十分ではなかった 「早期検知」から、 「自らのことを知る新たな方法のデザイン」へと課 題設定を変更 企業がリビングラボへ支払う対価(資金)を活用し、 高齢者が仲間を得て、自らのことを振り返る(知る)過程で意欲を育み、 多様な社会参加に向かう仕組みづくり検討 課題の再設定・統合的実践 別々に 見える 別々に 見える 企業との共創)地域課題解決とサービス開発の連動 •大牟田市民がこれまでの人生や 日々の生活を振り返りながら、続き の人生をわくわく考えることを目的と した全5回のプログラム「わくわく人生 サロン」を実施 •市民の主体的な関わりを通じて、 企業はサービス/テクノロジーのコン セプトやユーザ体験をリフレーム
  15. 28 Copyright 2022 市民との共創)市民が力を発揮する機会づくり デジタルデバイドへの対応だけでなく、意欲的にデジタル活用できる市民や地域に変わっ ていくために、市民・職員向け講座(インフォナビゲーター養成講座)を実施し、人々が デジタル活用の中で新たな学び、気づき、助け、出合いを得られる地域を目指す オンライン空間 公民館 住民

    既知の世界 (コミュニケーション) 未知の世界 =学び、気づき、助け、出会い デジタルデバイドの解消 未知の世界(情報)へナビゲート ・デジタルデバイドの解消 ・未知の世界へのナビゲート (学びへの転換) Wi-Fi オンライン空間への平等な 入り口(環境整備) ・既知の人とのやりとり ・既知の人との集い 公民館がオンライン空間と 生活のインターフェースになる 市民ボランティア 市民ボランティアの育成 デジタルデバイド(2) 未知の情報(世界)との接点 (オンラインを介する) サービス デジタルデバイド(1) 機器の保有 機器の使い方 デジタルデバイド(3) サービスの利用 インフォナビゲー ターの育成 人の可能性を引き出す インフォナビゲーター 機器の 使い方 機器の 保有 日々使う サービス利用 未知の情報 との接点 ※デジタル活用支援員推進事業等 市民が力を発揮する機会づくり
  16. 31 Copyright 2022 大牟田市 従来の介護予防施策では リーチすることが難しい人がいる (財政的制約も強まる) NTT西日本 他地域で実施した 疾病の早期検知サービス

    の実証実験に人が集まらない 「早期検知」から、 「自らのことを知る新たな方法のデザイン」へと課 題設定を変更 地域 他地域で実施した 疾病の早期検知サービス の実証実験に人が集まらない 高齢者が自らの意欲育て、 多様な形で参加する機会が 十分ではなかった わくわく人生サロンを新たに設計し、開催(運営:大牟田未来共創センター・NTT) 「早期検知」から、 「自らのことを知る新たな方法のデザイン」へと課 題設定を変更 企業がリビングラボへ支払う対価(資金)を活用し、 高齢者が仲間を得て、自らのことを振り返る(知る)過程で意欲を育み、 多様な参加に向かう仕組みづくり検討 課題の再設定・統合的実践 別々に 見える 別々に 見える わくわく人生サロン 課題の再設定 ⚫ NTT西日本が進めていたIoTを活用した疾病の早期検知サービスについて、他地域での実証実験で参加者が集ま らなかった(サービスが受容されなかった)という課題を乗り越える新たな場としてリビングラボでの活動を検討 ⚫ 大牟田市の視点からは、従来の介護予防施策ではリーチすることが難しかった高齢者にとって魅力的な場をつくり、 高齢者が自らの意欲を育み、多様な参加に向かう仕組みを検討 ⚫ 企業だけのための実験にしないため、大牟田市(行政)、地域の課題との共通点を見出して課題を再設定し、統 合的な実践として、参加者がこれまでの人生や日々の生活を振り返りながら、続きの人生をわくわく考えることを目 的とした全5回のプログラム「わくわく人生サロン」を設計・運営
  17. 32 Copyright 2022 (チラシを貼る) 第4回において、 睡眠センサーと家電センサー で得たデータを「自分の無 意識を知るための情報」とし て利用 ※参加者にとっても情報提

    供、センサー利用に価値が ある形にしている •対象者:大牟田市在住の要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の方 •募集期間:2019/11/28~2020/1/31・開催期間:2020/1/10~2020/3/13※ ※新型コロナウイルスの影響により、後半のグループは一部プログラムを延期(再開時期未定、フォロー中) •サロン申込者(面談参加者):35名/サロン参加者:32名(面談後の辞退:3名)/ センサー設置者:18名(センサー設置辞退:14名) わくわく人生サロン 実施概要
  18. 33 Copyright 2022 ここで得た知見を活用し、「パーソンセンタードな 人間観」を質的に体現する持続可能な地域モ デル(社会システム)やテクノロジー・サービス の実現に取り組んでいく パーソンセンタードの理念を共有したスタッフ • 地域の実践者の中でパーソンセンタードを体現できている人たちと理念共有を

    してチームを組んだ リラックスしやすい空間 • 普通の家に近い間取りやあたたかい電気カーペット、座り心地のよい椅子、大 牟田のお菓子などを用意した 安心して自分の話ができるプロセス • 事前に、評価でも傾聴でもなく、お互いが相手に関心があり自分のことを話す ような時間を過ごして、参加の可否を判断してもらった。また、サロン当日もビジ ネスWSのような言語的・計画的な進行ではなく、安心して、互いに尊重して いられる空気感や場づくりを行った だらしない一面のあるパン田さんのチラシ • 予防や就活とは異なるのんびり話す場であるというサロンのコンセプトが体感で き、また、ちゃんとした役割を担わなくても人は変わらず愛すべき存在、パンダさ んのイラストや3コマ漫画を通じて、大事にしている人間観についても共有する 情報発信をした 無目的なサロンプログラム 1. 架空の大牟田の昔の人について話して、自分の過去に想いを馳せる 2. 個人的な好き嫌いと共通点を話す 3. 自分のエピソードをつまみにおしゃべり(事前に振り返りメモをゆったりと作る) 4. 普段意識しない自分の姿をデータも使って考える 5. 見えてきたいろいろな自分を大事にして、これからを考える機会 わくわく人生サロン 理念を体現するポイント どんな人であっても、人の繋がりや環境によって、 その人らしく暮せると考える「パーソンセンタード な人間観」を質的に体現する場・機会を、右の ような工夫ポイントを通じて生みだした
  19. 34 Copyright 2022 「大牟田市高齢者保健福祉計画・第7期介護保険事業計画」 総括時の職員の意見 「既存活動に関心が 薄い人もいることから、「わくわく人生サロン」 ように自分こ とを語る場を設けるなど 、新たな活動きっかけを作る必要が

    あると考えます。 」 •地域包括支援センターがリーチすることが難しかった、20年間自宅に引きこもっていた方が参 加 •介護保険サービスでは居場所が得られなかった(合わなかった)方の居心地のいい場となる •制度利用がなく生きづらさを抱えている高次脳機能障害のご本人、ご家族への支援を実施 (個別にご本人、ご家族の不安や悩みに寄り添った対応を実施) •配偶者に先立たれた方たちによるピアが生まれる(グリーフケア) •持っている資格やスキルを生かし、地域の課題を解決したいという方が生まれる(例:「防災 士の資格を活かして地域のために活動したい」「子どものための活動をしたい」「大牟田市をアピー ルする商品開発をしたい」などの自発的な言葉がある) •年齢が異なるが同じ大学やサークルに参加していた等「縁」のある人との出会いが生まれる (友人ができる) •前向きな動機をきっかけとして参加し、通所、ピア(グループ)、訪問、家族支援を、個別一 人ひとりの状況に合わせて柔軟に組み合わせて行う「多機能型サロン」とも言える相談支援拠点 の可能性を示唆 •自治体からの資金的な援助を得ることなく開催するモデルを構築(企業との協働) わくわく人生サロン 行政・地域にとっての価値 これまでの行政施策でリーチすることが難しかった人に出会うことができ、同じ経験や悩みをもつ人と語らいあう居場所 が生まれ、意欲が育っていく中で新たなことに取り組もうとする人が現れた
  20. 35 Copyright 2022 「疾病を前もって知ること=価値」の社会的合意 疾病の早期検知技術 知る意味のデザイン (サービスコンセプトの転換) UI 生活者 知る意味のデザイン

    UX 「疾病を前もって知ること=価値」の社会的合意 疾病の早期検知技術 地域の調剤薬局 睡眠センサー・睡眠レポート 生活者 NTT PARAVITA株式会社の「ねむりの窓口」 UX わくわく人生サロン 企業にとっての価値 ⚫ 企業(NTT西日本)としては、これまで開発してきたアルゴリズムをサービスに活かすための土台となる、「(自らの ことを)知る意味のデザイン」の知見を獲得することができた ⚫ この知見をもとに、地域のかかりつけ薬局が地域住民と対話的な関係性を構築し、自らのことを知る体験(UX) を提供するサービスモデルを提供
  21. 36 Copyright 2022 存在が肯定され人が意欲をあたためる場・機会 意欲的に動き出す担い手がいる(社会参加)と解消される社会課題 存在不安になり社会的孤立になると発生する社会課題 不登校 少年犯罪 摂食障害 援助交際

    育児不安 孤育て 幼児虐待 うつ病休職 失業 自殺 フレイル 認知症 孤独死 ・・・ 空き家 防犯 防災 介護 買い物難民 貧困 フードロス 環境問題 ・・・ 原因 解消 担い手 創出 参考)大牟田で実証済みの「これまでの人生や日々の生 活を振り返りながら、続きの人生をわくわく考える場:わくわ く人生サロン」の効果 •地域福祉がリーチできなかった、20年間自宅に引きこもっていた方が参加 •介護保険サービスに合わなかった方の居心地のいい場となる •配偶者に先立たれた方たちによるピアが生まれる(グリーフケア) •看護師や防災士の資格を活かして地域のために活動したい人 •子どものための活動をしたい人 •大牟田市をアピールする商品開発をしたい人 ※エンパワーメント:環境的制約により発揮されていなかった、本人が本来持っている力を、社会 資源や条件整備によって発揮できる状態にすること。1970年代アメリカ公民権運動で重要性を 指摘され、人権運動や看護・介護さらにはビジネスの分野でも使われるようになっている。 地域のエンパワーメントを理念とする地域共創拠点のコンセプト 地域や住民がエンパワーメントされる状態をつくることで、おのずと動き出す住民・みずからの手で変えていける持続可 能な地域が生まれる。その実態は「存在が肯定され人が意欲をあたためる場・機会」によって、社会的孤立が解消され、 社会参加が活性化(担い手創出)される状態である。 ※木村ら (2020) 人の暮らしを中心に体験を考えるリビングラボの実践知、日本デザイン学会研究発表大会概要集.
  22. 37 Copyright 2022 地域構造分析/ 未来予測/有識者対話 存在が肯定される 機会 創造的衝動(うずうず) が現れる機会 社会活動/参加の機会

    (リテラシー、価値創出経験等) ビジョン形成 (経済政策・社会政策等) 社会実装/実践 (サービス/政策/コミュニティ) 主体性のあたままり 為すことによって学 ぶ チャレンジできる空気の醸成 未来に向けた問い バックキャスティングから見出すアクション 新たな違和感/問題意識 トップダウンでもボトムアップでもない共創のプロセス 地域のエンパワーメントを理念とする 地域共創拠点 地域主語の共同運営メンバー (地域・企業等が参画) 地域の生活者 企画者 ▪社会的孤立解消/社会参 加活性化のための運用資金 自治体の既存課題であり、自治体予 算の組み替え(介護予防、デジタルリテ ラシー、防災共助、社会教育などの人 材育成系事業や、移動・交通、中心市 街地活性化/立地適正化、地域コミュニ ティなどの場づくり系事業など) 企業・国・公的機関 ▪普遍的な価値を生み 出すための運用資金 企業の新たな事業開発や国の 政策モデル実証事業(企業の新 規事業開発部署のリサーチ、PoC や、各省庁・公的機関の研究・モ デル事業など) 自治体 地域のエンパワーメントを理念とする地域共創拠点:体制イメージ ➢地域や企業がそれぞれ地域にコミットして共同運営することで、それぞれのメンバーが地域に主語を持つ立ち位置で、 問いを持ち、ビジョンを語り、社会実装に取り組むことができる ➢運用資金は、共同運営メンバーや関係者で知恵を絞り、既存の自治体予算の組み替えや国や企業のモデル事業と の重ねあわせをするなどから獲得する
  23. 38 Copyright 2022 医療 住宅・住まい 教育・学び 社会/地域のあり方を問う対話 社会参加 サービス開発・産業創出 介護予防

    交通・移動 就労・雇用 DX・デジタルリテラシ・テクノロジー 社会システムの構造転換を志向したモデル地域実践
  24. 41 Copyright 2022 大牟田の地域課題への重層的アプローチ ⚫ 地域課題を構造的に捉えた上で、官民連携で政策転換を推進し、産業側の課題にも重層的にアプローチしている 既存産業 基幹産業の衰退(石炭産業) 人口減少 (特に生産年齢人口)

    少子高齢化 (10万人以上で有数の高齢化率) 自治体財政の悪化 (税収減・政策対応の財政的・ 人的な制約が強まる) 仕事がない (事務職、高度 技術職等) 人手不足 地縁 コミュニティの 担い手不足 地縁 コミュニティの 脆弱化 都市ストックの需給ギャップ (空き家・空き店舗) ミスマッチ <医療・介護・福祉> 制度の利用増・制度疲弊 (民生費増加) 公共交通網の縮小 (高齢者等の移動困難者) 地域外への 流出 (若い世代) 事業継承 できない 財政圧迫 人口減少(社会減) コレクティブインパクト、 SIB、民間人材活用 乗合、自家用有償 除却、リノベーション NPO、テーマコミュニティ 民間協働、テック活用、 介護予防強化 •地域の社会課題と同期した DX・インキュベーションに取り組む •地域の本質的な社会課題について、官民連携で取り組 む体制を構築し、政策転換を推進している ◯介護予防:「支援」から「力を引き出す」への転換 ◯住まい・住宅:民間賃貸だけでない地方版社会賃貸住宅の創出 ◯雇用・就労:メンバーシップ型からジョブ型への転換・産業構造転 換を見越したリカレント教育や生活保障システム ◦・・・
  25. 42 Copyright 2022 介護予防:企業・行政視点から本人視点(Being-well)への転換 介護予防は本人視点では意識することができない概念であることを整理し、本人視点に立ったBeing- well※(本人の力が発揮されている状態)に転換。そのうえで、関わる事業者・団体についても、従来の 医療・介護サービス事業者ではない新たな事業者・団体が担う方向で、企業や地域と協働 要介護状態にならないように 予防する 要介護状態

    介護予防 介護が必要な状態になったことがない人にとって、 それを予防するという意識を持つことができない Being-well※(本人の力が発揮されている状態) どのような状態でも、本人の存在が肯定され、 力が発揮されている状態を目指す ※Well-beingが「Well(良い状態)」を先に規定していることに対して、「Being(存在)」を肯定した上で、多 様な「Well(良い状態)」に開かれていることを目指す理念。造語。 高齢者等 • 医療・介護サービス事業者が担う • 制度の構造として、医療や介護が必要な状態 になったほうが収益が上がるため、予防に対す るインセンティブが働かない 要介護状態 高齢者等 一緒に力を引き出す(見出す) ような関わり方 • 医療・介護サービス事業者ではない事業者・団体が担う (新たなビジネス領域の可能性) • 誰もが、どのような状態になっても、社会参加ができるよう参加機会のユ ニバーサル化を図る
  26. 43 Copyright 2022 介護予防(健康増進)の産業転換 ⚫ 介護予防(健康増進)領域でのサービス創出を行うにあたり、理念および構造を転換することで新たなビジネスドメイ ンの創出を検討 • 医療・介護サービス事業 者が担う

    • 制度の構造として、医療や 介護が必要な状態になっ たほうが収益が上がるため、 予防に対するインセンティブ が働かない • 医療・介護サービス事業者 ではない事業者・団体が担 う(新たなビジネス領域の 可能性) • 誰もが、どのような状態に なっても、社会参加ができる よう参加機会のユニバーサ ル化を図る
  27. 44 Copyright 2022 • 主体的な社会参加のために は、 「したくなる」という意欲 を温めるような対話的な場 (機会)が地域にあることが 重要

    • 意欲は、本人が意識的に高 めることが難しい 介護予防(健康増進)におけるビジョンマップ ⚫ 理念を転換しビジョンを描くことで、地域において多様な事業者の参画ができるドメインの存在に気づき直した • 介護予防とは、介護が必要 な状態になったことがない人に とっては意識を持つことができ ない、対象者を客体化した 概念 • Well-beingが「Well(良い 状態)」を先に規定しているこ とに対して、「Being(存 在)」を肯定した上で、多様 な「Well(良い状態)」に開 かれていることを目指す理念 としてのBeing-wellを設 定 1 2 • 社会参加を実現するために は、日常生活の中で「ユニ バーサルな就労」「ユニバーサ ルな学び」「アクセシビリティ (コミュニケーション・移動)」 が充実していることが必要 3 • 総合事業C型は、介護保険 事業の中でも、介護保険 サービスから卒業を目指す事 業であり、戦略的に理念を再 構築し、展開する起点として 位置づける 4 • データ化・システム化は、個人 の豊かな意味世界(幸せ・ 喜び・生きがい)をそぎ落とす ため、意味世界を豊かにする ための情報の再意味化が必 要 • 例えば、患者役割を担う病 院ではなく、元気になりたくな る病院をめざす 5
  28. 45 Copyright 2022 介護予防(健康増進)におけるNTTデータとの協働 ⚫ 理念転換した新たなビジネスドメインでの産業・サービス創出に向けてNTTデータと協働中。産業開発・サービス創出の 切り口でも大牟田で企業協働が行える土壌が整ってきている リアルな生活者像 (実在する大牟田の方をモデルとしたペルソナ) サービス創出が期待されるシーン

    (大牟田の実践を踏まえて転換された理念・コンセプト) (↓)8/25に開催したNTTデータ社員向けアイデア創発ワークショップ資料抜粋 × アウトプットの一例(→) (←)ワークショップ参加者のみなさんと 大牟田未来共創センター/探索Tメンバー
  29. 46 Copyright 2022 データ活用の展開とデジタル化に関する現状把握 ⚫ 未来予測のために行政内のデータと国等のデータを統合し、シミュレーション・意味化した上での活用について市長と合意 ⚫ 大牟田における地域のデジタル化に関する現状・課題について、行政・事業者等にヒアリングを実施予定 既存の社会システム(政策体系) 帰納法的

    活用しきれない 縦割り 福 祉 ( 部 局 ) 住 ま い ( 部 局 ) 教 育 ( 部 局 ) 産 業 ( 部 局 ) ・ ・ ・ 計画 計画 計画 計画 計画 ビジョン(総合計画) データ データ データ データ データ KPI KPI KPI KPI KPI 政 策 的 経 緯 調査の重複 国等のデータ (統計・調査) 統合的データ (統計・調査) 未来予測 データ 集積・統合 物語(体験)的な未来像 「具体的な暮らしのシーン がどうなっているか?」 シミュレーション 統合的・横断的戦略 (アジェンダ)A 統合的・横断的戦略 (アジェンダ)B ・・・ 問い・対話 (理念的問いを含む) 意味的な読み出し KPI KPI KPI KPI KPI 人間・暮らし(統合的) 未来志向のビジョン (新たな社会システム) 意味的に共有する データも活用する 多様な市民 業界関係者 有識者 政策担当者 KPI再検討 政策再検討 政策的に分断 データから 見えない 協働 プロジェクト プロジェクト 海外の自治体・教育研究機関等 バックキャスティン グ (演繹的) ファクトだけでは伝わらない 具体的に未来を検討できない 地域共創拠点 地域外の企業群 見直し続ける 創業 市民活動 KPI KPI KPI KPI KPI KPI 質的なヒアリング 未来シナリオの検討 見直し続ける 足りないデータの収集 1 2 3 4 シチズンシップ、リーダーシップ • 行政だけでは統合・分 析しきれないデータにつ いて、共創センターが統 合しつつ、統合した政 策についてのKPIを設 定 • 地域共創拠点において コーディネートすることで、 市民や市内の事業者 等とデータを共有しな がらコミュニケーションす る機会を創出 • 行政内には、 データ加工・分析 をする専門部署 がない • 行政内では、帰 納法的なビジョン 作成に陥りがち
  30. 47 Copyright 2022 住まい:空き家マッチングから「はたらく」と繋ぐ仕組みへの転換 顕在化した空き家をマッチングする制度があるが、近隣トラブルや社会的孤立、自治会運営困難化の加速 につながるため、転換したアプローチが必要。潜在している空き家を地域住民と連携して探すとともに、可処 分所得の少ない若者や移住希望者も住宅確保が困難な人と捉え、「はたらくこと」や「地域とのつながり」も 含めてコーディネートする仕組みを創出 顕在化した空き家 (安価で借りることが

    できる) 住宅確保が困難な人 (ひとり親、高齢者など) 空き家マッチング 地域で増加する空き家を、住宅確保が 困難な人にマッチング 潜在している空き家 *地域住民と連携して探す (家主へのアプローチ) 住宅確保が困難な人 の範囲を拡張 (若者、移住者も含む) 日本版社会賃貸住宅※ 住まいを、生活や人との関係等を「つくる」場と捉え直し、 「はたらく」ことや移住・定住等の文脈に位置づける ※イギリスやオランダ等において「国から認可された家主が、家賃、入居者の所得、 住戸割当方法に関する協定を国と結び、供給・管理する賃貸住宅」。一般の賃貸 住宅よりも安価で借りることができる。日本においては公営住宅(全体の戸数の 3%程度)しかないのに対し、イギリスやオランダ等では社会賃貸住宅が2〜3割 あり、ある程度の所得がある人も住むことができる。 はたらく リノベーション/管理 移住・定住 地域との つながり コーディネート 中間支援団体 ※住宅セーフティネット制度等
  31. 48 Copyright 2022 移動:公共交通政策から人を真ん中にした移動へ 個人 移動 (モビリティ) 目的 (目的地・機会) 徒歩(移動する力)

    自家用車 地域交通(コミュニティバス等) 公共交通(鉄道・バス・タクシー等) 私的 公的 ト レ ー ド オ フ 社会的包摂(地域共生社会) 地域経済活性化・地域活性化 免許返納 少子高齢化 つながり つながり 社会的孤立 フレイル 医療・介護政策 交通政策(狭義) コミュニティ政策 地域包括ケアシステム 産業政策 まちづくり政策 事業者 (医療介護・商業) 福祉輸送(移送) 財政負担増 減便・空白地 医療・介護政策 財政負担増 ※移動制約者は高齢者以外にもいる 移動主体 移動手段 モビリティミックス 経済的制約 •人口カバー率(大牟田市地域公共交通網形成計画より抜粋) 交通政策(狭義) 人を真ん中にした交通政策(広義)
  32. 49 Copyright 2022 情報:デバイド解消から人の可能性を引き出す情報社会への転換 コロナ禍の集いが難しい状況において、出合い、学びの機会が減り、フレイルリスクが高まるとともに、デジタルリテラシー の格差(デジタルデバイド)がそれを加速している。デジタルツールに関する知識提供だけでなく、意欲的にデジタル活 用できる人材や組織・地域に変わっていくために、住民・公民館/行政職員・企業社員向け講座(インフォナビゲーター 養成講座)を実施し、人々がデジタル活用の中で新たな学び、気づき、助け、出合いを得られる地域を目指す。 オンライン空間 公民館

    住民 既知の世界 (コミュニケーション) 未知の世界 =学び、気づき、助け、出会い デジタルデバイドの解消 未知の世界(情報)へナビゲート ・デジタルデバイドの解消 ・未知の世界へのナビゲート (学びへの転換) Wi-Fi オンライン空間への平等な 入り口(環境整備) ・既知の人とのやりとり ・既知の人との集い 公民館がオンライン空間と 生活のインターフェースになる 市民ボランティア 市民ボランティアの育成 デジタルデバイド(2) 未知の情報(世界)との接点 (オンラインを介する) サービス デジタルデバイド(1) 機器の保有 機器の使い方 デジタルデバイド(3) サービスの利用 インフォナビゲー ターの育成 人の可能性を引き出す インフォナビゲーター 機器の 使い方 機器の 保有 日々使う サービス利用 未知の情報 との接点 ※デジタル活用支援員推進事業等 人の可能性を引き出す情報社会
  33. 50 Copyright 2022 大牟田から未来をのぞき見る対話×テクノロジーの祭典 「にんげんフェスティバル2022」 ⚫ これまでの大牟田の実践を通じて深まっている問いや理念を地域内外の人たちと共有し体感できる場として、対話×テ クノロジーの祭典「にんげんフェスティバル2022」を企画し、12月2-4日に開催予定(共創学会年次大会も共催) ⚫ 今年は「IdentitieS

    ~わたしの行方」をテーマに掲げ、そのテーマに応じて先進的な実践をしている16名の有識者を 招いたトークイベントを開催するほか、VRなどのテクノロジー体験、フードマーケット等も にんげんフェスティバル2022 ▪問いと対話のトークイベントのゲスト(一部) ▪大牟田駅前で開催予定のテクノロジー体験企画(イメージ) 心臓ピクニック VR旅行 体験装置 Popper
  34. 51 Copyright 2022 関連情報 地域創生Coデザイン研究所(Coデザ) https://codips.jp/ 社会システム転換を志向する地域経営団体 大牟田未来共創センター(ポニポニ) https://poniponi.or.jp/ ポニポニとCoデザが人間・社会を問いなおす問いと対話のメディア「湯リイカ」

    https://dialogue-eureka.jp/ ポニポニの連載記事「ぐにゃりのまち」 https://digital-is-green.jp/branding/human-centered/001.html ポニポニのインタビュー記事「「匂い」を呼びさます地域経営」 https://note.com/pub_lab/n/n4b6f780cbc14 リビングラボ解説論文 https://www.jstage.jst.go.jp/article/serviceology/5/3/5_4/_article/-char/ja/ 根本的な社会課題解決を目指す社会システムデザイン方法論 https://codips.jp/news/data/20220608.pdf その他の論文リスト https://sites.google.com/view/co-creation-on-ubuntu/#h.z70gmdfc6v8
  35. 55 Copyright 2022 関連文献 1970年代後半から80年代において、リンツ市最大 の政治的課題は地域の「社会システム」の変革にあっ た。産業の復興と雇用の確保を最優先課題としつつ も、いかにして市民が置かれた生活環境を改善し、未 来へとシフトできるか。そのためには、鉄鋼に依存した 社会そのものを見直すこと、経済的開発と、文化・社

    会面での街の再生を切り分けることなく、一つの「社 会システム」として地域社会全体の方向性を転換さ せることが必要とされた。 グルントヴィは教育や信仰を通じてデンマーク国民が精 神を養い(中略)対話と相互の 人格形成による 「生のための学校」の必要性を説き、国民すべてが平 等な生活を送ることを唱えた。(中略) グルントヴィの 理念は、現在のデンマーク社 会に次のような影響を与 えている。①国民すべてが平等な生活を送ることに価 値をおく=格差の少ない北欧型社会システム②知識 ではなく対話を重視=コンセンサス型 社会システム ③死の学校から生のための学校=知識から、 知恵 や問題解決能力を習得する教育 「持続可能性」 は「環境」と関わり、「福祉」は富の分 配の公正や個人の生活保障に関わるものなので、「持 続可能な福祉社会」とは、「個人の生活保障や分配 の公正が実現されつつ、それが環境・資源制約とも 調和しながら長期にわたって 存続できるような社会」 を意味している。言い換えれば、「持続可能な福祉社 会」というコンセプトの主眼は、「環境」の問題と「福 祉」の問題をトータルにとらえる点にあり、 図表7-1 はまさにそうした観点から の国際比較なのである。
  36. 57 Copyright 2022 参考)構造転換を目指した実践アプローチ 社会システムデザイン方法論(2022デザイン学会等で発表) ①既存の社会システムのエラー(≒政策的帰結)を捉える ②社会のエラーを乗り越える実践者・研究者との対話から、新たな問い・理念を見い出す ③新たな理念に基づいたプロジェクトを実施する(政策・サービス・コミュニティ) 既存の社会システム 理念への

    問い・対話 違和感/ 当事者性 社会へ 開かれる 新たな 理念 政策的 経緯 役割が解除され 存在が保障される位相 (社会システムが持続的に変革し続ける土壌) 政 策 的 帰 結 システムエラー システムエラー 理念 参加 参加 解除 問い・対話への展開 一人目になる 転換へ 組成・協働 温まる 新たな理念に基づいた 仕組みの実装(プロジェクト) 既存システムの構造・ 理念の把握 背景を捉える 1 2 3 4
  37. 58 Copyright 2022 大牟田で得られた社会システムの構造転換に必要な知見の軌跡 ⚫ 地域の現場での違和感/当事者性をもとに背景の分析、理念への問い・対話を繰り返し、理念に基づく実践を展開 ⚫ 社会システムのエラーが生じているいくつかの領域(介護・福祉、住まい、就労、デジタルデバイド等)で重層的なプロ ジェクトを構築・実践することで、地域の多様なプレイヤーやパートナーとの関係が構築されている 違和感/

    当事者性 背景の 分析 理念への 問い・対話 理念に 基づく実践 大牟田未来共創センターの設立 (2019年) • 老人保健健康増進等事業 (2019年) • • わくわく人生サロン(2019年) • 人間観の問い直し(2020年) • • 市営住宅での相談支援の取組み (2020年~) • • • 健康福祉総合計画策定 (2020~2021年) • • 地域包括支援センター受託 (2021年~) • • 健康福祉総合計画推進 (2021年~) • 住まいの国土交通省モデル事業 (2021年~) • • インフォナビゲーター養成事業 (2021年~) • • 雇用・就労のモデル事業 (2022年~) • • • 新しい 社会システムへ 社会システムデザインプロセス モデル地域大牟田での成果 理念を共有するメンバーの拡大 Coデザとして得られた知見 パーソンセンタードな人間観、構造転換(新たな ビジネス領域獲得)のコア体制確立 ポニポニ創業メンバー※ パーソンセンタードな人間観、中間支援組織設立 ノウハウ(学会発表) 福祉現場担当者と企業担当者の協働体制の確 立 +行政職員、医療機関・介護事業所職員 (ソーシャルワーカー等) 地域課題獲得体制+企業協働との連動体制 → 地域共創拠点フレーム 理念を体感できるプロトタイプの確立と実証結果 獲得 +行政職員、医療機関・介護事業所職員、住 民 社会的孤立解消&担い手創出(学会発表) → 地域共創拠点コンセプト パーソンセンタードな人間観の深化(環境人間) +実践者・有識者 パーソンセンタードな人間観の深化(環境人間) 地域の社会福祉法人や関係機関との関係構築 住民に身近な場所での相談支援運営ノウハウ +社会福祉法人、市営住宅管理センター 政策的経緯がもたらす帰結の現実的理解 行政が理念的に活動できる計画を構築 +行政職員(福祉課を核として暮らしに関する部 署と関係構築) コンセプトを政策に組み込み、人中心の行政計画 を立案(中間支援組織運営ノウハウ) 地域課題獲得体制を実運用できる体制確立 +包括(×2)職員 (地域共創拠点フレームが社会実装) 理念に向けて行政と協働できる定期的な課長会 議を開始、介護予防のモデルプロジェクト組成 +行政職員、医療機関・介護事業所職員(セラ ピスト等)、NTTデータ等の企業担当者 人中心の行政計画を実行(中間支援組織運営 ノウハウ) 福祉課だけでなく建築住宅課との重層的なプロ ジェクトの着手 +地域の事業者、有明高専の教員・学生 重層的なプロジェクト構築(中間支援組織運営 ノウハウ) 生涯学習課との重層的なプロジェクト着手 地域のデジタル化・DXへの足掛かり +公民館職員、行政職員(生涯学習課) 地域におけるデジタル化の課題/重層的なプロジェ クト構築(中間支援組織運営ノウハウ) 障害者就業・生活支援センター等との重層的なプ ロジェクトの着手 +地域の就労支援機関、商工会議所、東大研 究者 重層的なプロジェクト構築(中間支援組織運営 ノウハウ) ※(地域内で事業を展開している者、地域外から大牟田市のまちづくりに関わっていた者、コンセプトに共感する地域外の政策形成に強み がある者、企業の研究者、行政職員などで構成)
  38. 59 Copyright 2022 大牟田未来共創センター(ポニポニ)の設立(2019) ⚫ 「認知症」や「高齢者」などの福祉に閉じた課題設定や取り組みでは、地域においてさまざまな領域で生み出される社会 課題や地域創生を視野に入れたアプローチが難しい状況であった ⚫ 認知症ケアで見出されたコンセプトを深め、セクターや領域における縦割りを横断し、既存の社会システムから“独立しな がら埋め込まれる主体”として官民協働で大牟田未来共創センターを設立した(2019年4月)

    ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 大牟田未来共創センター 大牟田市 地域資源 地域・住民 縦割りの打破(調整)、政策展開支援 ビジョンの共有 共創 共創 地域資源の価値を再構築 地域・住民との協働 福 祉 教 育 産 業 地域内のアクター (市民団体、 地場企業など) 地域外のアクター (国内外企業、 研究機関等) ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ ¥ 国 予 算 制 度 事 業 基礎 自治 体 予 算 制 度 事 業 地域 実 践 取 組 対 象 多世代・横断 政策的統合 大牟田未来共創センター 統合的 アプローチ 計画 統合的実践 支 援 支 援 モデル提案
  39. 60 Copyright 2022 老人保健健康増進等事業(2019) •事業名 地域包括支援センターが、「地域包括ケア」と「地方創生」を統合し、「まちづくり」の中核として機能するための「地域生活課題」 に関する情報集積及び活用等に関する調査・研究事業 •事業概要 (1) 地域包括支援センターが集積してきた「地域生活課題」に関する情報を整理・分析し、企業・商店等の新たな主体が課題

    解決の主体となるために必要な情報集積のあり方についての調査・研究 (2) 集積した「地域生活課題」に関する情報を、地域包括支援センターがどのように活用し、商店や企業などの産業セクターを 主体化していくのか、そのあり方について調査・研究 (3) 上記(1)(2)を踏まえ、地域包括支援センターが、包括的相談支援窓口の役割を担い、更に経済・産業を視野に入れた 「まちづくり」の拠点としてどうあるべきか、いくつかのオプションを示し、全国の自治体が選択可能なものとして提示する。 https://www.city.omuta.lg.jp/common/UploadFileOutp ut.ashx?c_id=5&id=12639&sub_id=2&flid=48981 【問い】憲法25条(生存権)から13条(幸福追求 権)へと基盤を転換する社会保障・介護予防の可能性 中間支援組織・ リビングラボ活用の可能性と重要性 ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 地域包括支援センターの現場での難しさを明らかにし、地方創生とつなげたかたちで解決する方策を見出すために、大 牟田市と協働して厚生労働省事業に取り組む それぞれの領域の政策的経緯を把握し、地域内外の実践者との対話を重ねることで、「生存権の保障(憲法25条) から幸福追求権(憲法13条)の保障へ」(菊池:2019) という新たな理念を見出した
  40. 61 Copyright 2022 わくわく人生サロン(2019) ※第4回において、睡眠センサーと家電センサーから得た データを「自分の無意識を知るための情報」として利用 •対象者:大牟田市在住の要支援・要介護認定を受けていない65歳以上の方 •募集期間:2019/11/28〜2020/1/31、開催期間:2020/1/10〜2020/3/13 ※新型コロナウイルスの影響により、後半のグループは一部プログラムを延期(再開時期未定) •サロン申込者(面談参加者):35名/サロン参加者:32名(面談後の辞退:3名)/センサー設置者:18名(センサー設置辞退:14名)

    ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 ⚫ 見出した理念を具現化するプロジェクトとして、「わくわく人生サロン」(住民・行政・企業の協働プロジェクト)を実施 ⚫ 介護予防や健康増進分野で中心となっている「グループに注目して集うこと」を目的とするサロン(居場所)とは異なり、 「一人ひとりに注目し、対話的な関係によってそれぞれの潜在的な力(自由)を引き出していくこと」を目指した ⚫ 安心できる場において対話を行うと、人は役割から外れ、温まり、他者や社会への関心に開かれ、自然と動き出していく
  41. 62 Copyright 2022 人間観の問い直し(2020) ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に

    基づく実践 自己定立 変化のなりゆきを見守る他者との関係 意思の自由 その人の力の表現 客観世界の側にある 主観的公共性 自己同一性 自由 公共性 ⚫ ビジネス開発、地域での実践、政策展開を総合的に支えることができる新たな人間観を明らかにするため、地域内 外の先進的な実践者や有識者との対話を行った ⚫ 制度やビジネスの前提となっている人間観「近代的主体」が現実と合わなくなり社会課題を生み出していること、そし て、アイデンティティ自体が他者や環境と共有されているとする人間観(環境人間)を見出した ▪対話した実践者や有識者 ・小規模多機能型居宅介護施設「てつお」管理者 ・社会福祉士・主任介護支援専門員 ・大牟田市立病院 社会福祉士(医療ソーシャルワーカー) ・宅老所よりあい代表 ・大牟田市手鎌地区包括支援センター ・大阪大学大学院 知能ロボット研究者 ・コンピュータメディア研究者
  42. 63 Copyright 2022 健康福祉総合計画(2020~2021) ✓ これまで別々に策定されていた、高齢、障害、健康増進、食育など9本の行政計画を、「地域共生社会の実現」という 共通のビジョンに向けて1つにまとめた。 ✓ 概要版については、通常、「計画のサマリー」にとどまりがちであったものを、「計画の理念を体感してもらうもの」へと位置 付けを変え、親しみやすいイラストを活用し、実際に大牟田で暮らしている人たちのエピソードを紹介する形とした。タイト

    ルにつけた「うずうず」は、わくわく人生サロンの際に見出した「温まる」を言葉にしたものである。この考え方(感覚)を行 政、市民と共有することを試みている。あわせて、計画策定の大牟田市側の担当者と強く理念を共感できるようになり、 それ以降計画推進全体のキーマンとなっている(現在、健康づくり課長)。 ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 ⚫ 個別プロジェクトでの示唆を体感的に共有し、住民・企業・行政が社会システム全体をデザインし直すため、暮らしの総 合計画ともいうべき大牟田市健康福祉総合計画の策定を大牟田市と協働 ⚫ 縦割りの行政計画でなく、統合的に地域や生活を捉え直す構造とした計画として策定。あわせて、行政リソースや過去 の実績をベースとした「今できること」ではなく、協働が期待される余白を生み出すために「今方法は見出せてないが、取 り組むべきこと」を記載
  43. 64 Copyright 2022 地域包括支援センター受託(2021~) ◯手鎌地区地域包括支援センター(公民館内) ◯三川地区地域包括支援センター(公民館内) •地域包括支援センターとは 地域の高齢者の総合相談、権利擁護や地域の支援体制づくり、介護予防の必要な援助などを行い、高齢者の保健医療の向上及び 福祉の増進を包括的に支援することを目的とし、地域包括ケア実現に向けた中核的な機関として市町村が設置しています。 厚生労働省ウェブサイトより引用

    https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/chiiki-houkatsu/ ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 ⚫ より実践的に社会システムをデザインするため、地域に根ざす公益的な実践主体でもある地域包括支援センターを 2箇所受託。これにより、地域において発生するいわゆる「狭間の問題(システムエラー)」を受け止め、ネットワーク を通じて協働を引き出し、領域を超えて取り組むことができるようになった
  44. 65 Copyright 2022 地域共生社会の実現に向けた連携協定(2021~) •2021年10月29日付で大牟田市と連携協定締結(推進) ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話

    ④理念に 基づく実践 ⚫ 行政内各部署との幅広い領域における政策形成の支援が可能となり、介護予防(健康増進)についても包括的 な観点で実施していくことが可能となった ⚫ 公共的なことは行政だけが取り組むという状況を転じ、民間と行政が協働で地域に根ざした社会システムデザインに 取り組んでいく状況を生み出した
  45. 66 Copyright 2022 市営住宅での相談支援の取組み(2020~) ⚫ 市営住宅の建替えにより、長年住んでいた住まいから強制的に移転せざるを得ない高齢者を対象に引っ越し支援を実施 ⚫ 公営住宅が住宅セーフティネットの機能を高めるために、政策的帰結として急激な高齢化の進展や障害者等の生活に支 援が必要な人が暮らし、地域コミュニティが維持できない状態になっていることを把握 ⚫

    日常的な生活支援と気軽に相談できる場(集いの場)を実装することで、市内全域での展開を目指す ⚫ 2022年からは有明工業高等専門学校、NTT社会情報研究所等と連携し、Well-beingな住まいのあり方を探るプロ ジェクトを実施(歴木市営住宅でのプロジェクト) ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 市営住宅の集会所で実施する集いの場 大牟田 未来共創 センター 社会福祉 法人 市営住宅 管理センター 大牟田市 大牟田 未来共創 センター NTT 社会情報 研究所 有明高専 地域創生 Coデザイン 研究所 大牟田市 居住支援 協議会 市営住宅 管理 センター 協力 社会福祉 法人 住人のアイデンティティが染み出すことによって多様な「住みこなし」がみられる歴木市営住宅 2023年4月 移転予定 歴木市営住宅の中に市営高泉住宅(移転先)のモデルルームをつくり、 リロケーションダメージを軽減 プレイヤーの 広がり プロジェクト の展開 移転先の市営高泉住宅
  46. 67 Copyright 2022 国土交通省モデル事業(2021~) •国土交通省事業:「地方公共団体における福祉部局・住宅部局の連携による住まいに関するモデル事業」 ◯事業を始める前から動いていた相談や生活支援の活動「ふらっと」 2014年度から続く建て替えによる移転(住み替え)によって生活環境が変化し、生活につい てのサポートの必要性が発生している市営高泉団地や歴木市営住宅において、相談の場を開 設し、集いの場、アウトリーチ(訪問)、生活支援、自治会への支援等を行っている。 ①違和感/

    当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 ⚫ 大牟田市の住宅部局、福祉部局、有明工業高等専門学校と協働し、国土交通省事業を実施。健康福祉総合計 画でも位置づけた具体的な事業を実施することで、住宅・住まいに関する詳細な政策的背景の把握や地域におけ る実態調査を実施 ⚫ その過程において「生存権の保障(憲法25条)から幸福追求権(憲法13条)の保障へ」のコンセプトを広げる 「社会的包摂の実質化」(宮本:2017)という理念を見出した
  47. 68 Copyright 2022 インフォナビゲーター養成事業(2021~) ⚫ コロナ禍の集いが難しい状況において、出合い、学びの機会が減り、フレイルリスクが高まるとともに、デジタルリテラ シーの格差(デジタルデバイド)がそれを加速している。デジタルツールに関する知識提供だけでなく、意欲的にデジタ ル活用できる人材や組織・地域に変わっていくために、住民・公民館/行政職員・企業社員向け講座(インフォナビゲー ター養成講座)を実施し、人々がデジタル活用の中で新たな学び、気づき、助け、出合いを得られる地域を目指す オンライン空間

    公民館 住民 既知の世界 (コミュニケーション) 未知の世界 =学び、気づき、助け、出会い デジタルデバイドの解消 未知の世界(情報)へナビゲート ・デジタルデバイドの解消 ・未知の世界へのナビゲート (学びへの転換) Wi-Fi オンライン空間への平等な 入り口(環境整備) ・既知の人とのやりとり ・既知の人との集い 公民館がオンライン空間と 生活のインターフェースになる 市民ボランティア 市民ボランティアの育成 デジタルデバイド(2) 未知の情報(世界)との接点 (オンラインを介する) サービス デジタルデバイド(1) 機器の保有 機器の使い方 デジタルデバイド(3) サービスの利用 インフォナビゲー ターの育成 人の可能性を引き出す インフォナビゲーター 機器の 使い方 機器の 保有 日々使う サービス利用 未知の情報と の接点 ※デジタル活用支援員推進事業等 人の可能性を引き出す情報社会 ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践
  48. 70 Copyright 2022 雇用・就労のモデル事業(2022~) ⚫ 健康福祉総合計画に位置づけた超短時間雇用モデル※(東京大学先端科学技術研究センター:近藤武夫教授が提 唱)を大牟田をフィールドに実装 ※ 障害や疾患などある人々が、週に最短15分から、一般の企業・職場で、特定の職務を担当して働くワークスタイルを実現する雇用・労働モ デル。一般的な日本型雇用での働き方にマッチせず、排除されがちだった人々が一般企業で働く機会を生み出している

    ※ 障害の状況から長時間安定して働くことが非常に難しい人、特定の職務であれば果たすことができるものの職場で汎用的に様々な職務を こなすことには大きな困難がある人などが対象 ①違和感/ 当事者性 ②背景の分析 ③理念への 問い・対話 ④理念に 基づく実践 (https://ideap.org/project/job/ より抜粋) 大牟田のプレイヤー 実施体制イメージ 大牟田 未来共創 センター 障害者 就業・生活 支援センター 東大 先端研 大牟田市 ハロー ワーク 大牟田 商工 会議所 協力 包括連携協定 (予定) 地域創生 Coデザイン 研究所
  49. 71 Copyright 2022 学び:管理的な学校教育から、安心して学びたくなる場への転換 (正解に向けた)知識や正解を得る学びの場から、生きることの多様性を体感し存在肯定される学びの場への転換 事例:市立宅峰中学における総合的学習(学びの場を規定している先生が安心して生きることの多様性を語る場をも つことで、生徒も安心して学びの場に参加できる状況を生みだした) 学校 ≒管理的(ねばならないの優先) 上

    下 関 係 ・ 画 一 性 教員 生徒 不登校 大牟田未来共創センター /NTTチーム フラットな関係・多様性 総合学習の時間 <実施時のポイント> ・「ねばならない」の解除 ・徹底した自己開示 ・できる限り管理的ではない授業運営 ・多様なメンバー ・「好き」を生かした授業企画 (例 アニメを活用した授業) ※不登校児等への個別的な支援の必要性は言うまでもないが、 学校がもつカルチャー・システムをフラットで多様性を尊ぶものへ転 換していかないと応急処置的にならざるを得ないと考えている 教員、生徒 双方に 過度なストレス 生徒 教員 不登校
  50. 74 Copyright 2022 存在が肯定され人が意欲をあたためる場・機会 意欲的に動き出す担い手がいる(社会参加)と解消される社会課題 存在不安になり社会的孤立になると発生する社会課題 不登校 少年犯罪 摂食障害 援助交際

    育児不安 孤育て 幼児虐待 うつ病休職 失業 自殺 フレイル 認知症 孤独死 ・・・ 空き家 防犯 防災 介護 買い物難民 貧困 フードロス 環境問題 ・・・ 原因 解消 担い手 創出 参考)大牟田で実証済みの「これまでの人生や日々の生 活を振り返りながら、続きの人生をわくわく考える場:わくわ く人生サロン」の効果 •地域福祉がリーチできなかった、20年間自宅に引きこもっていた方が参加 •介護保険サービスに合わなかった方の居心地のいい場となる •配偶者に先立たれた方たちによるピアが生まれる(グリーフケア) •看護師や防災士の資格を活かして地域のために活動したい人 •子どものための活動をしたい人 •大牟田市をアピールする商品開発をしたい人 ※エンパワーメント:環境的制約により発揮されていなかった、本人が本来持っている力を、社会 資源や条件整備によって発揮できる状態にすること。1970年代アメリカ公民権運動で重要性を 指摘され、人権運動や看護・介護さらにはビジネスの分野でも使われるようになっている。 ※木村ら (2020) 人の暮らしを中心に体験を考えるリビングラボの実践知、日本デザイン学会研究発表大会概要集. 地域をエンパワーメントする地域共創拠点のコンセプト ➢ 地域や住民がエンパワーメント※される状態をつくることで、おのずと動き出す住民・みずからの手で変えていける持続可能な地域が生まれる。その実態は「存 在が肯定され人が意欲をあたためる場・機会」によって、社会的孤立が解消され、社会参加が活性化(担い手創出)される状態である
  51. 75 Copyright 2022 エンパワーメントを理念とした地域共創拠点 図:シティ・チェンジ・テストの様子 鷲尾和彦, アルスエレクトロニカの挑戦: なぜオーストリアの地方都市で行われるアートフェスティバルに、世界中から人々が集まるのか, 学芸出版社, 2017.

    図:上空から見たリンツ 地域共創拠点の要件 (1)人の流れがあり、地域に対して「さらされている」立地にある (2)社会構造の中心にありながら、既存のあり方、社会システムから自由になれる (3)地域のキーマンが集い、所属組織・専門領域を超えたテーマの議論が行われる (4)地域の人たちに開かれ、問いを得て、動き出すサポートを得ることができる
  52. 76 Copyright 2022 フェスティバルの一環として「共創学会」を誘致 参考:アルスエレクトロニカフェスティバル 【1】 地域共創拠点 構築・運営 【2】 フェスティバル

    【3】 問いと対話の メディア 【4】 テクノロジー体 験・実証実験 地域共創拠点を含む一連の取り組み 地域をエンパワーメントする地域共創拠点(大牟田)の取り組みについて ➢ 大牟田市では、これまで自治体職員や市民、事業所、民間企業と協働し、Coデザビジョンである人々が主体的に共創できるまちのモデル構築に取り組んでき た ➢ 活動の理念を体感的に共有し、多くの市民が参画できる場として、地域をエンパワーメントする地域共創拠点※の構築を行っている ➢ 地域共創拠点ビルの運営と並行し、フェスティバル開催、有識者対話、テクノロジー体験提供に取り組むことで、地域の関係者が主体的に「我々が人間である ことを社会との関係の中で見つめなおす場」を持つ ※地域創生のキーコンセプトとなる「地域をエンパワーメントする地域共創拠点」については別ページに記載
  53. 77 Copyright 2022 問いと対話のメディア(湯リイカ) ⚫ さまざまな有識者との対話において、老いや疾病、社会、テクノロジーのあり方などについての問いを深めるとともに発信 ・老いはアップデート ・お年寄りは今ココを生きている ・介護されたいお年寄りはいない ・数値化された「わたし」の苦しさ

    ・one and onlyの自分と確率論的な自分 ・食べることのままならなさ ・対話が持つ力 ・他の人と考えることは楽しい ・自分の発言が否定されない安心感 ・生き心地よさ(自殺希少地域) ・ゆるやかなつながり、失敗の許容 ・選択肢がないことの苦しさ ・存在が肯定されると行動する勇気がわい てくる ・「交通」から「移動」へ ・行きたいところに行けることは「人間らしさ」 ・移動保障は生活保障 ・憲法13条を基盤とする社会保障 ・自立ではなく自律 ・自分なりの生き方は、リスク保障からは生 まれない ・隣にいることの価値 •村瀬孝生氏 •磯野真穂氏 •梶谷真司氏 •岡檀氏 •野村実氏 •菊池馨実氏
  54. 78 Copyright 2022 オーストリア リンツ市のアルスエレクトロニカ・フェスティバル 市民が主体的にまちづくり・テクノロジー活用に関われ、未来に向けた体験や対話が起きるフェスティバル 図:人とテクノロジーを問いなおす展示 鷲尾和彦, アルスエレクトロニカの挑戦: なぜオーストリ

    アの地方都市で行われるアートフェスティバルに、世界 中から人々が集まるのか, 学芸出版社, 2017. 図:子供も大人も楽しめるラボスペース 1970年代後半から80年代において、リンツ市最大の政治的課題は地域の「社会システム」の変革にあった。産 業の復興と雇用の確保を最優先課題としつつも、いかにして市民が置かれた生活環境を改善し、未来へとシフトで きるか。そのためには、鉄鋼に依存した社会そのものを見直すこと、経済的開発と、文化・社会面での街の再生を 切り分けることなく、一つの「社会システム」として地域社会全体の方向性を転換させることが必要とされた。 参考)まちを統合的に転換することを志向したリンツ市のアルスエレクトロニカ
  55. 79 Copyright 2022 地域構造分析/ 未来予測/有識者対話 存在が肯定される 機会 創造的衝動(うずうず) が現れる機会 社会活動/参加の機会

    (リテラシー、価値創出経験等) ビジョン形成 (経済政策・社会政策等) 社会実装/実践 (サービス/政策/コミュニティ) 主体性のあたままり 為すことによって学 ぶ チャレンジできる空気の醸成 未来に向けた問い バックキャスティングから見出すアクション 新たな違和感/問題意識 トップダウンでもボトムアップでもない共創のプロセス 地域のエンパワーメントを理念とする 地域共創拠点 地域主語の共同運営メンバー (地域・企業等が参画) 地域の生活者 企画者 ▪社会的孤立解消/社会参 加活性化のための運用資金 自治体の既存課題であり、自治体予 算の組み替え(介護予防、デジタルリテ ラシー、防災共助、社会教育などの人 材育成系事業や、移動・交通、中心市 街地活性化/立地適正化、地域コミュニ ティなどの場づくり系事業など) 企業・国・公的機関 ▪普遍的な価値を生み 出すための運用資金 企業の新たな事業開発や国の 政策モデル実証事業(企業の新 規事業開発部署のリサーチ、PoC や、各省庁・公的機関の研究・モ デル事業など) 自治体 地域のエンパワーメントを理念とする地域共創拠点:体制イメージ ➢地域や企業がそれぞれ地域にコミットして共同運営することで、それぞれのメンバーが地域に主語を持つ立ち位置で、 問いを持ち、ビジョンを語り、社会実装に取り組むことができる ➢運用資金は、共同運営メンバーや関係者で知恵を絞り、既存の自治体予算の組み替えや国や企業のモデル事業と の重ねあわせをするなどから獲得する
  56. 80 Copyright 2022 拠点呼称 主な狙い 概要 コワーキングスペース/ 地域交流施設 連携の機会 集い、連携する機会。価値共創が主題ではなく、ネット

    ワーキングやイベントなどがメイン イノベーションラボ (創業支援施設) 共創の促進 (価値を生みだす) イノベーション(価値創出)を主題とした場。価値創 出プロセスを支援するサービスなども提供。地域に設置さ れることで、地場産業や地域リソースとの協働を促す。 エンパワーメントする 地域共創拠点 共創土壌の耕転 (価値を生む人や地 域を耕す) 地域や住民をエンパワーメントする場。価値創出するモチ ベーションがある人だけでなく、地域のすべての人の可能 性をひらいていくことを目指す。地域の価値創出や産業 転換を目標に、変化やそれに対する価値創出が生まれ る土壌を豊かにする。 参考)カフェ・パブなど の公共の場 集う場 集う機会。連携や共創が主題ではなく、個別の集いがメ イン 「地域で共創する拠点」の類型 地域共創に取り組む拠点や活動は多数あるが、「エンパワーメントする地域共創拠点」の特徴は、人の存在が肯定さ れ、意欲があたためられ、社会に関わる活動に向けて動き出すまでを伴走するような存在である。