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RESEARCH Conference2025 リサーチ手法としてのリビングラボ~人口減少時代...

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September 07, 2025

RESEARCH Conference2025 リサーチ手法としてのリビングラボ~人口減少時代における生成AIを活用した地域のあり方~

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Kimura Atsunobu

September 07, 2025
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  1. 1 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 木村 篤信

    (一社)日本リビングラボネットワーク 代表理事 地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ) ポリフォニックパートナー 東京理科大学/東京電機大学/東京都市大学 非常勤講師 リサーチ手法としてのリビングラボ 〜人口減少時代における 生成AIを活用した地域のあり方〜 2025/9/7 リサーチカンファレンス2025
  2. 2 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは Carayannis,

    E.G., Campbell, D.F.J., 2009. “Mode 3″ and “Quadruple Helix”: toward a 21st century fractal innovation ecosystem. Int. J. Technol. Manag 46, 201. 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model モノ・コトをつくるときに 生活者と行政・企業・大学が共に 暮らしの場(リビング)において 試行錯誤(ラボ)をする活動・場 (人口減少時代の社会課題解決に必要な方法論 ≒コレクティブ・インパクト) デンマークのスマートシティ研 究者とともに、日本初のリビン グラボ書籍(教科書)を刊 行。全国30カ所で対話イベ ント実施予定。 千葉工業大学(情報学部・デザイン学部) 関西学院大学(イノベーション研究会) 官民共創HUB×東京大学(産官学民関係者) 徳島県神山町(地域創生関係者)
  3. 3 Copyright 2024 木村 篤信 (Kimura Atsunobu) Profile 地域創生Coデザイン研究所(NTTグループ) ポリフォニックパートナー

    日本リビングラボネットワーク 代表理事 東京理科大学 客員准教授 東京電機大学/東京都市大学/大阪樟蔭女子大学(予定) 非常勤講師 生駒市「緑の基本計画改定懇話会」 有識者(リビングラボ) デジタル庁 認定Well-beingファシリテーター JST RISTEX「ケアが根づく社会システム」 領域アドバイザー 日本デザイン学会 情報デザイン研究部会 幹事 大牟田未来共創センター パーソンセンタードリサーチャー 京都大学デザインイノベーションコンソーシアム/ソーシャルビジネスネットワーク フェロー 横浜市PTA連絡協議会 理事 実践:社会課題解決/ソーシャルビジネス開発 研究:共創/リビングラボ/社会システムデザイン 教育:サービスデザイン/ソーシャルデザイン ⑧ ⑨ ⑩ 地域経営主体(中間支援団体)運営/伴走 地域共創拠点構築・運営 事業開発,政策立案,コミュニティ開発 学術論文・書籍 メディア・書籍取材 (人手不足、ウェルビーイング、民主主義、自律共生等) 大牟田市、奈良市, 岡崎市,生駒市, 八丈町,神山町, 天川村,佐渡市, 小松市、尼崎市 浦添市など 教育機関 非営利活動
  4. 6 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 世界のリビングラボの分布(ENoLL過去登録済みリビングラボ 500+@40か国,ENoLL,

    2024) ※ENoLLとは 欧州で2006年に立ち上がったリビングラボの 国際的ネットワーク。欧州委員会の資金提 供プロジェクトを活用しながら、EUの政策提 言や、リビングラボの推進に取り組んでいる。 出典:https://enoll.org/
  5. 7 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボの年表と分布 2005.03

    仙台フィンランド健康福祉センター 2006.09 Lions Living Labo 2010.01-2014.03 湘南リビングラボ 2010.11 経産省 情報政策課 リビングラボ紹介 「情報政策の要諦ー新成長戦略におけるIT・エレクトロニクス政策の方向性」 2011.10 みんなの使いやすさラボ(みんラボ) 2011.12 BABAラボ 2012.08 富士通総研 リビングラボ研究レポート 2012.10 おたがいさまコミュニティ 2013.02 Living Lab Tokyo 2013.07 Virtual Living Lab 2014.12 松本ヘルスラボ 2015.01 三浦リビングラボラトリー 2015.04 子育てママリビングラボ 2015.09 Cyber Living Lab 2016.01 第5期科学技術基本計画(Society5.0) 2016.01 八千代リビングラボ 2016.06 みなまきラボ 2016.07 産総研スマートリビングラボ 2016.07 東急WISE Living Lab 2016.11 鎌倉リビング・ラボ ほか5件 2017.01 井土ヶ谷アーバンデザインセンター(井土ヶ谷リビングラボ) 2017.05 ともに育むサービスラボ(はぐラボ) 2017.06 福岡ヘルス・ラボ 2017.09 経産省 ヴィンテージ・ソサエティ構築実証事業(リビングラボ4 件) 2017.09 神奈川ME-BYOリビングラボ 2017.10 高石・僥倖リビング・ラボ 2017.12 ドリームハイツ ヘルスケア リビングラボ(とつかリビングラボ) ほか9件 2018.02 大牟田リビングラボ 2018.03 横浜リビングラボ創生会議 2018.04 第一回リビングラボネットワーク会議 2018.04 こまつしまリビングラボ 2018.07 経産省 「未来の教室」実証事業(大牟田リビングラボ含む4件) 2018.10 サイクル・リビングラボ 2018.11 地域共創リビングラボ ほか10件 2019.02 Well Being リビングラボ 2019.03 第二回リビングラボネットワーク会議 2019.10 岡山リビングラボ ほか3件 2020.07 関内リビングラボ 2020.08 厚労省 「介護ロボットの開発実証普及のプラットフォーム事業」 (リビングラボ6件) 2020.03 経産省 リビングラボにおける革新的な社会課題解決サービスの 創出に係る調査「リビングラボ導入ガイドブック」 2020.10 おやまちリビングラボ 2020.11 奈良リビングラボ ほか8件 凡例) オレンジ色:日本全体の動き 黒色:他の日本での取り組み ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における構造的課題、 (調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局を元に作成 日本のリビングラボデータベース (100件以上のリビングラボが存在) ※日本リビングラボネットワーク 実践事例部会調べ ( 2023/04 時点 ) 佐渡自然共生ラボ 大牟田LL おやまちLL 丹後LL 鎌倉LL 未来LL 磯子杉田LL みんなのまちづくり スタジオ ふじみ野LL はぐラボ むlabo TEN no KUNI Folke LLs Academy
  6. 8 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs さまざまな種類のリビングラボが日本にも増えてきている 政策イノベーションのためのリビングラボ

    (教育、介護予防、雇用、 移動交通、テクノロジー etc.) (大牟田、佐渡、会津、松本、神奈川MI-BYO・・・) 産業・ビジネス開発のためのリビングラボ (デスラボ、鎌倉リビングラボ、ナスコンバレー、つくばみんラボ・・・) 地方創生のためのリビングラボ (神山つなぐ公社、三豊, 丹後・・・) 公共施設開発・エリマネのためのリビングラボ (小千谷、小松、おやまち、たまプラーザ・・・)
  7. 9 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 日本のリビングラボに関連する国内政策 第6期科学技術・イノベーション基本計画

    内閣府 COI-NEXT、地域大学振興 文部科学省 産業開発・イノベーション政策 経済産業省 介護ロボット開発・実証 厚生労働省
  8. 10 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 日本リビングラボネットワーク(JNoLL)の活動概要 日本において共創やリビングラボの実践がさらに活性化し、普及することを目指して、設立。多様なステークホルダーが

    立場を超えてフラットにつながり、実践知や課題を共有し合うことで、さらなる実践や成果をもたらす場や機会をつくり出 している。また、リビングラボのポータルサイトでの情報発信や、支援サービスの提供も行っている。 ❸リビングラボ運営者支援サービス ❶リビングラボ実践者/ 研究者ネットワーク ❷実践を支えるフレームワークの 研究開発 チーム組成& ビジョン形成 計画立案・共有 予算・ 契約 具体的な 共創 価値の振返 り・発信 国内実践者・研究者と共に、事例対話の分析を通じて 実践支援の核となるフレームワーク等を研究開発 25地域を超える実践者が集い、コアチームを組成し、 実践者による実践者のためのコミュニティを運営。 1000名を超えるリビングラボ関心層に発信可能なネットワーク (企業7割,自治体2割,研究者1割) 研究開発の知見を核に、体系化されたリビ ングラボ運営者支援メニューを開発・提供 リビングラボML
  9. 11 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs ❶日本のリビングラボ実践者ネットワーク&実践知対話会 全国リビングラボネットワーク会議

    2018年に高齢社会の研究プロジェクトにおいて産官学民協働の実践としてリビングラボが活用され、その研究 活動の一環として、第一回リビングラボネットワーク会議が企画・開催。 第3回までは高齢社会の研究プロジェクトを牽引していた東京大学(未来社会共創センター)が主催で行っ てきたが、リビングラボの広がりともに、実践者による主体的な運営にシフトし、第4回以降は、大牟田、横浜、 大阪が主催となっている。 第1回(2018) 第2回(2019) 第3回(2021) 第4回(2022) 第5回(2023) 第6回(2024)
  10. 13 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs ❶日本のリビングラボ実践者ネットワーク&実践知対話会 全国リビングラボネットワーク会議

    in 大阪 ▪オープニングトーク ウェルビーイングな世界を万博そして大阪から 〜産学官民でつくる新たな街づくりを健都から〜 大阪府政策企画部成長戦略局長 池田純子氏 ▪B会場セッション セッションB1 市民と自治体のリビングラボのはじめかた ▪A会場セッション セッションA1 企業が複雑な問題に取り組むための共創アプローチ ▪基調講演 人口減少時代のイノベーションエコシステム としてのリビングラボ デンマーク パブリック・インテリジェンス社 CEO Peter Julius氏 セッションA2 社会に役立つ科学技術イノベーションのあり方を考える セッションB2 リビングラボを人材の視点から考える
  11. 16 Copyright 2024 ❷実践を支えるフレームワークの研究開発 JNoLL評価部会における共創プラットフォーム研究 ▼文部科学省 科研基盤研究(C) 「地域の共創基盤としてのリビングラボのアウト カムを評価する標準フレームワークの構築」 ※パートナー坂倉氏によるPJ(2024-27)

    ▼徳島県神山つなぐ公社 共同研究 「地域創生事業組織のプラットフォームとしての 間接的アウトカムの特定に関する研究」 ※パートナー坂倉氏・代表理事木村氏・理事 長島氏・原口氏によるPJ(2024) 連続的に共創活動のための リビングラボプラットフォーム の再帰的メカニズム 共創プラットフォームのもつ複 雑なメカニズムの一旦を、ビ ジョン、コネクション、アクティビ ティの観点で整理し、持続的 なプラットフォーム運営の示唆 を提案。 第72回日本デザ イン学会 春季研 究発表大会【左】 Open Living Lab Days2025 【右】
  12. 19 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボとは『セクターを超えた共創活動』 Steen,

    K. & Bueren, E. (2017). The Defining Characteristics of Urban Living Labs. Technology Innovation Management Review, 7(7), 21–33. ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本 における構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 4重螺旋モデル:Quadruple Helix Model
  13. 20 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボプロジェクトの事例 生活者・自治体・企業が地域/現場で課題探索や社会実装の試行錯誤を重ねることで,

    社会課題解決をするサービスを開発し,展開する事例が増えている 子 ど も の 成 長 ( 妊 娠 週 数 や 生 ま れ て か ら の 月 日 ) が 一 目 で わ か り 、 予防接種スケジューリング機能がキラーコンテンツとなった【母子モ】 B t o G t o C な の で 、 ユ ー ザ と 自 治 体 の 、 双 方 が よ り 便 利 で 使 い や す い サ ー ビ ス に し て い く 必 要 が あ っ た . た と え ば 、 紙 の 母 子 健 康 手 帳 の 内 容 の 中 か ら 、 電 子 化 す る べ き 項 目 を 取 捨 選 択 す る こ と に も 悩 ん だ が , 実 際 に 子 育 て し て い る 人 へ の ヒ ア リ ン グ や 、 母 子 健 康 手 帳 を 何 度 も 読 み 込 み な が ら 開 発 を 行 っ た . 2025 年 6 月 現 在 、 全 国 730 以 上 の 自治体で 導 入されて い る. 高 齢 者 サ ー ビ ス に 民 間 の 力 を 使 う こ と で 、 介 護 保 険 給 付 や 税 金 の 支出を減らせる乗り合い送迎サービス【チョイソコ】 未要 介護認定高齢者への調査で 「徒歩移動がつ ら い ・きつ い 」 「 バスの本数が少な い 、時 間 が 合 わ な い 」 な ど 不安 や 不 便 を 感 じ る 声 を 掴 ん だ 自 治 体 の 福 祉 担 当 ・ 公 共 交 通 担 当, ア イ シ ン は , 大 量 輸 送 で は な い 「 少 数 輸 送 」 の サ ー ビ ス が 地 域 に 必 要 と い う 目 的 意 識 を 共 有 し 、 バ ス と タ ク シ ー の 特 徴 を い い と こ 取 り し た サ ー ビ ス を 開 発 し た. 現 在 , 全 国 30 地域に展開さ れている .
  14. 21 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 事例:循環型都市の実験室 De

    Ceuvel 概要: 1世紀にわたる造船業によって荒廃し土壌汚染していた造船所跡地を改 善するため、アムステルダム市が民間公募して生まれた循環型都市開発 のためのリビングラボ。アムステルダム北部に位置する敷地面積1250m² の小さなエリアで、地域のエネルギー、栄養素、廃棄物サイクルの「ループを 閉じる」完全なリサイクルを実現する再生技術の開発や実証に、建築家、 芸術家、起業家、研究者、ボランティアなど多様な組織が協力して取り組 んでいる。アムステルダム市からの補助金(€250,000)と市の保証によ る銀行融資(€200,000)を受けて資金を調達している。14隻の貸し 出しハウスボード、ラボ&コミュニティ施設、レセプションスペース、カフェ・レス トランから構成され、文化的およびコミュニティのハブとなっている。 主体:Metabolic社 (2014~2024) 活動: ハウスボートは廃船をアップサイクル利用し、根を通して汚染物質を吸収し て分解する特殊な植物で覆う「分散型葉緑素ろ過のシステム」を開発 再生可能エネルギーの地域生産と交換を促進するため、ブロックチェーン 技術を用いた仮想通貨のJouliette(ジュリエット)を導入 温室で育てた植物、海藻バーガー、キノコで作ったミートボールなどを敷地 内レストランで提供 地域との関わり方: 毎年35,000人を超える訪問者(Covid-19前)。 作り手として関わるイベント(土壌を回復させる植物を植える、カフェやハウ スボートオフィスなどのテーブルなどに釘を打つ、オフィスのデザイン等) ②行政サービス改善 ①サービス・技術開発 ③地域活性化
  15. 22 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 事例:小千谷リビングラボ「at!おぢや」 概要:

    旧小千谷総合病院の統合移転に伴う跡地整備の計画として、図書館を 核とした複合施設を整備し、中心市街地の活性化を図る事業が起点に なったプロジェクト。その根幹には、リビングラボの思想と重なり、新しい公共、 新しい公共空間をみんなで創っていくプロセスが大事にされた。そして、「つく る」「つかう・参加する」「見つけ・動かす」などにフェーズを区切りながら、まち や公共施設における市民の関わり代を生み出していった。2020年12月の プレイベントより始まったこのプロジェクトを経て、2024年9月に施設「ひと・ま ち・文化共創拠点 ホントカ。」がオープンし、市民が関わる多数の活動が 行われている。 主体:小千谷市役所 (2020~) 活動: 市民参加プラットフォームを育てるためのシンポジウム 第1~16回小千谷リビングラボ「まちと公共施設の未来をともに創造する」 小千谷リビングラボ(仮称)愛称市民投票 出張at!おぢや(ふるさと夢づくり教育) 新潟工科大学連携プログラム 共にある 共に創る暮らし「鰯新聞」(いわしんぶん) 地域との関わり方: 従来は行政と委託事業者だけで進めていたプロセスを、市民に開き、市民 がみんなで創っていくプロセスとなるように事業が設計された。また、施設の 設計においてもハード中心ではなく、その後の活動が中心となるように、地 域の若者、子育て世帯、高齢者など多様な人が活動しやすくする仕掛け を埋め込んでいる。 ②行政サービス改善 ③地域活性化
  16. 23 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs フェアな価値創出を促すリビングラボのパラダイム 提供者

    (企業/行政) 客体的な関係性 (サービス提供/利用) フェアなパートナー関係 共に主体的な関係性 (学び合い相互に変容) 利用者 (市民) C o デ ザ イ ン リ ビ ン グ ラ ボ 一 般 的 な サ ー ビ ス デ ザ イ ン パラダイムの変化 一方的な提供者-利用者関係 提供者 (企業/行政) 利用者 (市民) 協働をしても、セクターの枠組みに縛られ 部分的な問題解決になりやすい セクターを超えて本質的な 価値を探索できる枠組み ・人口ボーナス期 = 拡大・成長期 ・潤沢な供給リソース と需要 ・官僚組織による計画 的マネジメント ※広井(2019)人口減少社会の デザイン, 東洋経済新報社. ・人口オーナス = 定常期※ ・ひっ迫した供給リソー スと減らない需要 ・共創によるアジャイ ル・ガバナンス (デジタル活用、プラットフォー ムビルダー化) 社会背景 市民のアップデート 政策のアップデート Techのアップデート
  17. 25 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボの3つの系譜 系譜1:現場で学びを得る科学へ

    系譜2:みんなに開いてつくる文化へ 系譜3:使うものを自らつくる権利へ
  18. 26 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 系譜1:シチズンサイエンス(現場で学びを得る科学へ) ※川喜田(1967)発想法―創造性開発のために,

    中央公論社. 1990年代から実験科学・市民科学の分野でLiving Labと名前の付い た活動が行われている • “The Living Lab is a pilot program teaching estuarine issues to junior and senior high school students.” (Short, 1992) • “The program has a room in the residence quarters of the YMCA called the ‘’Living Lab.” This laboratory is an opportunity for a youth to gain practical experience living on his or her own while receiving support from staff, DYFS and other agencies.” (State of New Jersey, 1993) • “From using the environment as a living lab to enhance your science and math studies to using it to help inspire your students to create poetry, there are many innovative ways to promote outdoor experiences with your students.” (Wood et. al., 1993) 実験科学[Lewin,1946;Kawakita,1967;Neisser,1978]や市民 科学[Short,1992;Wood,1993]の分野では、限定的な環境での試 行実験の限界に対して、アクションリサーチ、野外科学、PBLなどの実環 境での実践や検証が重要視された。リビングラボの概念の提唱者として 知られるWilliam J. Mitchellは建築分野でこの取り組みを行った人物 である[Mulvenna;2011]。 特徴 • 実環境下(real-life setting) • 生徒の巻き込み(student involvement) • エンパワーメント(empowerment)
  19. 27 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 系譜2:オープンイノベーション(みんなに開いてつくる文化へ) ※D.A.

    Norman, (1990)誰のためのデザイン?,新曜社. Human Computer Intaraciton(HCI)の分野では、ジョージア工科大学の Aware Home Projectが1999年にLiving Laboratoryという概念を取り上げ て研究を行った(Cory et al.1999) 欧州委員会は2013年のダブリン宣言で、オープンイノベーション2.0をオープンイノ ベーションの新たなパラダイムとして考え、欧州全体で推進していくこと ・ 世界に発信し ていくことが決議され、「Open Innovation 2.0 Yearbook」では、Living Lab が多く取り上げられている 1980年代にパーソナルコンピューターが普及したとき、人としての使いやすさに焦点を当てた ユーザ中心設計Norman(1986)が提唱された。これは限定的な関係者による設計の 限界に対して、実際のユーザの巻き込むアプローチであり、その後サービスデザイン [Stickdorn;2012]などに拡張されていった。また、企業イノベーションにおけるオープンイノ ベーション[Chesbrough;2003]や行政運営における市民参加の梯子 [Arnstein;1969]など、さまざまなセクターのモノづくり(コトづくり)においても、関係者に 開いてつくる文化(デザインの民主化)へのシフトが志向されている。 特徴 • ユーザの巻き込み(user involvement) • 共創(co-creation) • 価値協創(joint-value) • ガバナンス(governance)
  20. 28 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 系譜3:参加型デザイン(使うものを自らつくる権利へ) ※S.

    Bodker et al. (2021) Participatory Design, Springer. 職場の生産性を高めるために技術システムを導入したい経営者と、自分たちの 労働の現場に技術システムを入れることに不満を持つ労働者との対立に対して、 第3の道として、民主主義的な方法で問題解決を図ったのが参加型デザイン ノルウェー鉄・金属労組の技術プロジェクト(1970年〜) スウェーデンのDEMOSプロジェクト(1975〜1979年) デンマークのプロジェクトDUE(1977〜1980年)など 北欧リビングラボの源流と言われる参加型デザイン[Nygaard,1975]は、社会民 主主義的な理念を持ち、生活者やユーザの権利として、自らが身の回りにある組 織構造やプロセス(社会技術システム:Socio-technical system[Trist,1951])に対して主体的に関わっていくことが基本的な考え方と なっている。形を持つ製品から、形を持たないサービス、さらには組織や社会につい てまで、それを設計・運用することに主体的に関わる活動が展開されてきた。 特徴 • エンパワーメント(empowerment) • 自発性(Spontaneity) • ガバナンス(governance) • ラピッドプロトタイピングと評価(rapid prototyping & testing )
  21. 29 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボが示すパラダイムの変化 系譜1:現場で学びを得る科学へ

    系譜2:みんなに開いてつくる文化へ 系譜3:使うものを自らつくる権利へ WHERE 現場で 学びを得る WHO みんなに 開いてつくる WHY 使うものを 自らつくる
  22. 30 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボで促される3つの効果 1.現場で学びを得る

    → 現場の統合性が 社会構造に対するリサーチを促す ≒ システミックデザイン 2.多様な当事者に開いてつくる → フェアな関係で 多面的なリサーチを促す ≒ インクルーシブデザイン 3.使うものを自らつくる → 違和感・当事者性が 企画者の自分ごと化を促す ≒ アクションリサーチ/当事者デザイン
  23. 31 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボのアプローチが有効な事業領域 企業がサービスを一方的に提供するだけでなく、それを利用・運用する人・団体が一体的

    に変容する必要がある領域において、Coデザイン/リビングラボのアプローチが有効 地域銀行・インフラ会社・自治体等 地域事業者と一緒に 地域経営を考える 中央官庁・自治体・デベロッパー等 生活者・当事者と一緒に 政策や官民協働プロジェクトを考える (プロセスエコノミー等) サービス・プラットフォーム提供者等 (CtoCマーケットプレイス、製薬会社) 利用者と一緒に プラットフォーム利用体験を考える 社会的インパクトを志向する研究者・開発者 生活者・自治体・企業と一緒に 研究の社会実装を考える (現場の統合的な課題把握)
  24. 33 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 自治体職員 ・審議会などを開くが、ポジショントークで終わり、

    議論が深まらない ・統合的に政策課題を議論する場がない 企業担当者 企業の意図 複数の生成AIが多様なアイ デアを出す機能検証から、 空気社会において議論が深 まらないという地域の構造的 課題の解決へと課題設定を 変更 地域住民/事業者 複数の生成AIが対話する新たな技術開発を 行っているが、具体的に社会や地域のどの場面で 有用に使えるのかユースケースが見えていない ・従来の年功序列や忖度などで、限界に近付い ている地域の現状が変わって行かない ・地域の未来についてフラットに話す機会がない 地域の意図 企業がリビングラボへ支払う対 価(資金)を活用し、 地域の統合的な政策課題を 従来の慣習(空気社会にお ける議論の場)から離れて議 論できる仕組みづくり検討 大牟田リビングラボでのあるプロジェクトの始まり 大牟田リビングラボ 課題の再設定・ 統合的実践
  25. 34 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 複数の生成AIが対話する新たな技術のユースケース探索 NTT研究所が掲げる「技術コンセプト」に対して、

    地域の産業・福祉課題、また意思決定プロセスの課題等の リアリティを踏まえたユースケース・UI・UXの具体化をすることに 大牟田リビングラボが伴走
  26. 35 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 忖度と縦割りによる 地域/組織における「議論・意思決定」のボトルネック

    地域においても、企業においても、忖度・縦割り・形式的な合意形成によって、実質的な 議論や創発が生まれにくい構造がある(サービスデザインのプロジェクト範疇だと起こりづらいが。。。)
  27. 36 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 権力勾配や認知的不正義の起きやすい地域/組織における 「議論・意思決定」のボトルネック

    たとえば、介護予防がテーマで、医者、看護師、行政職員、市民が議論しているとすると、 以下のようなボトルネックが発生する 医師 行政職員 看護師 市民 関係性上、言いたい ことが言えない 専門的な知識が なくて話しづらい 民間人の発言には 気を遣う 権力があり自分だけ の目線で語りがち
  28. 37 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 忖度と縦割りによる 地域/組織における「議論・意思決定」のボトルネック

    空気社会、縦割り構造の日本においては、特に、現場の価値に根差した議論が深まりず らい構造(ボトルネック)がある アイデア出し ディスカッション 意思決定・優先順位付け 意見交換 (ポジショントーク) 目標・目的/論理・根拠 ビジョン・判断基準・制約 議 論 の 広 が り 議論の深まり 地域のイベント (WS等) 多くの審議会・協議会 ・業界団体内 ほとんど存在しない (「意見交換」化している) 意思決定者が決定 地域/組織における「議論」 地域の 審議会 企業の 経営会議 地域の 審議会 企業の 経営会議 アイデアの広がり 当事者参加:多 (市民、現場担当者、ユーザ) 当事者参加:少 当事者参加:なし 磨かれた意見 選ばれた意見 決定された施策 当事者参加:- それぞれ、担う役 割としての意見は ある(公式見解)
  29. 38 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 地域には多くの「会議」がある 一方で、「議論」になりづらい

    (構造的な問題) テクノロジーが発展している 現状、効率化への活用 積極的な議論・意思決定 (やらないことを決める) 「人の可能性を引き出す」 テクノロジーの活用 労働供給制約と呼ばれる構造的な人手不足 地域の議論における構造的問題を解決する「会議シンギュラリティ」 ①大牟田における中小 企業の生産性向上に 向けた施策の検討 ②大牟田における 介護予防施策の検討 議論・意思決定が 必要な地域のテーマ 知識はあるが文脈を読まない AIの発言機能
  30. 39 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs ・本イベントの趣旨説明 ・生成AI技術についての説明

    テーマ:中小企業支援&介護予防 |開会 15分 ・AIたちによるアイデア出し (パート1) ・個人ワーク→グループ内共有→全体共有 |会議前半 40分 |休憩 ・AIたちによる議論 (パート2) ・個人ワーク→グループ内共有 ・グループワーク→全体共有 |会議後半 45分 ・アンケート記入等 |閉会 5分 会議シンギュラリティの流れ
  31. 41 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 人間が安心して発言できる場で「AI同士の発言」を見る効果 AIが余白のある80点程度の発言

    人間側が無礼講状態になり、発言可能な領域が増えた 同じ属性の専門家がAIに付け足す・批判するなど発言が引き出された 通常言いづらい関係でも、AIが 空気を読まずはっきりと批判
  32. 43 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs AI体験デザインのアプローチ 効率性

    創 造 性 これまでにない 可能性を 引き出してくれるAI 前例を踏まえて 妥当な解を 導いてくれるAI
  33. 44 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 事例:地域事業者・行政職員等と考える生成AI技術 (1)技術・社会実装課題

    ・複数の生成AIが多様なアイデアを出す という技術コンセプトが資する、具体的な 社会課題が見えていない (2)生活課題 ・従来の年功序列や忖度などで、限界に近付い ている地域の現状が変わって行かない ・地域の未来についてフラットに話す機会がない (3)政策課題 ・審議会などを開くが、ポジショントークで終わり、 議論が深まらず、統合的に政策課題を議論する 場がない (4)課題の捉え返し ・地域の持続に向けた「問題の根源 ※1,2」の議論がないと、多様なアイデアは 無意味 ※1:生活を維持するための労働力を日 本社会は供給できなくなる(古屋) ※2:地域間・男女間の賃金格差や、 様々な場面にある. アンコンシャス・バイアス (無意識の思い込み)(冨山) 技術の 社会実装課題 リアリティを踏まえた 生活・政策課題 有識者知見に基づく 課題再設定 地域の現場での プロトタイピング (5)会議シンギュラリティ それぞれの課題が重なる領域を捉え返し 新たな課題「自分の言葉が出る会議」を 設定 ・具体的な示唆を得ることができる場とし て、知識はあるが文脈を読まないAIの発 言機能を活用した議論・意思決定ができ る会議「会議シンギュラリティ」を企画・開 催
  34. 45 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 事例:専門職・行政職員等と考えるヘルスセンサー技術 (1)技術・社会実装課題

    ・睡眠センサー・電力センサーを活用した 軽度認知障害の検出アルゴリズムの開発 をしている ・他地域で実証実験を行う際、参加者が 集まらない。何が足りないか検討がつかな い。 (2)生活課題 ・高齢者扱いをされる「デイサービス」、高齢者だ けが集まる「サロン」以外の居場所がない (3)政策課題 ・介護予防、地域の担い手不足への対応におい て、高齢者の想いや意欲を中心に据え、引き出 すような施策が検討・実施できていない。 (4)課題の捉え返し ・参加へのためらいの背景には、「体調の変 化、特に疾病の予兆をあらかじめ知る」とい うことへの不安や恐れがあり、さらに「セン サーを介して知る」ということがその不安や恐 れを大きくしているのではないか。 (村瀬、上岡、石川、北嶋) 技術の 社会実装課題 リアリティを踏まえた 生活・政策課題 有識者知見に基づく 課題再設定 地域の現場での プロトタイピング (5)わくわく人生サロン それぞれの課題が重なる領域を捉え返し 新たな課題「知ることのデザイン」 を設定 ・具体的な示唆を得ることができる場とし て、一人ひとりにフォーカスした場で多様な 人に出会い、ユニークな「自分を知り直 す」わくわく人生サロンを企画・開催
  35. 46 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs 事例:建築専門家・行政職員等と考えるスマートシティ技術 (1)技術・社会実装課題

    ・IoT、音声アシスタント、家電遠隔操作 アプリなど、Well-beingに暮らすスマート シティ・スマートホームに関する設計手法 の研究に向けて、従来の技術を設置する だけのアプローチに限界を感じている (2)生活課題 ・市営住宅に住む高齢者の移転への不安、自 分の一部となっている ・住まい・住環境との別れの準備、新たな住まい への適応・住みこなし (3)政策課題 ・市営住宅の移転に伴う引越しにおいて起こる 「リロケーションダメージ(アイデンティティ・クライシ ス)」への対応が必要。 (4)課題の捉え返し ・「Well-beingに暮らし」は、豊かなアイデ ンティティ形成と不可分であり、それは「人と 社会」のみならず、「人とモノ」「人と住まい」 「人と空間」へ広がっている。一方で、「ス マートさ」は、それが形成される契機を奪う 可能性が孕まれているのではないか。 (伊藤、石井、三宅、篠原) 技術の 社会実装課題 リアリティを踏まえた 生活・政策課題 有識者知見に基づく 課題再設定 地域の現場での プロトタイピング (5) 「AR的モデルルーム」 ・これら3つが折り合うところに新たな課題「アイデ ンティティ形成を促す設計」を設定 ・具体的な示唆を得ることができる場として、アイ デンティティの再構成、新たな住宅との関わりを可 能とする、)「AR的モデルルーム」「住みこなし DIY」等の企画・開催
  36. 47 Copyright 2024 Japanese Network of Living Labs リビングラボ・トーク シリーズ

    組織・セクターを超えた価値共創について対話したい人はぜひご登録ください ▼当面の予定 ・5/28〜 in Muture Podcast 公開中 (Muture CEO 莇大介さん共催) ・7/7〜 in 山田崇ラジオ 公開中 (元日本一おかしな公務員、現NTTドコモ 山田崇さん共催) ・8/22〜 in渋谷でDeathラジオ 公開中 (一般社団法人デスフェス 市川望美さん、小野梨奈さん共催) ・10/21(火) KOEL Design Studio 田中友美子さん in 大手町 ・11/2(日) 東北芸術工科大 森一貴さん/福井県立大 高野さん in福井 ・11/6(木) Biotope 佐宗邦威さん in 霞が関 ・11/16(日) Deep care Lab 川地さん/田島さん in應典院(天王 寺) ・12/19(金) ミラツク/エッセンス 西村勇也さん共催 in京都 ▼今後の予定 ・PYNT 吉備 友理恵さん共催 in飯田橋 ・北海道大学 土井將義さん共催 in北海道 ・沖縄県浦添市 松岡竜太さん、榎本雄太さん共催 in 沖縄 ・ここにある 藤本遼さん共催 in 尼崎 等多数企画中 デンマークのスマートシティ 研究者とともに、日本初の リビングラボ書籍(教科 書)を刊行。全国30カ所 で対話イベント実施予定。 リビングラボML トーク含めた国内のLLイベント情報 『はじめてのリビングラボ』NL 書籍の中身やトークに関するつぶやき