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Evolution on AI Agent and Beyond - AGI への道のりと、シンギュラリティの3つのシナリオ

2025/08/23 DragonGateで行われた、JapanBlockchainWeek でのAIセッション「Evolution on AI Agent and Beyond」での講演資料

AGI(汎用人工知能)、ASI(人工超知能)とその先の知能爆発 = シンギュラリティ(技術的特異点)の到来までの道筋を整理しながら、「シンギュラリティの3つのシナリオ(ソフトテイクオフ 2シナリオ、ハードテイクオフ 1シナリオ)」を紹介し、人材育成の再考とリーダーシップのあり方、社会と我々自身のあり方についても問う。

参考: 【シンギュラリティを問う Vol.3】AI進化の壁と可能性。シンギュラリティと私たちの未来
https://www.salesforce.com/jp/blog/jp-hakuhodo-mori-singularity-vol3/

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Masaya Mori (森正弥)

August 25, 2025
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  1. Japan Blockchain Week AI Edition Evolution on AI Agent and

    Beyond AGI への道のりと、シンギュラリティの3つのシナリオ 2025/08/23 博報堂DYホールディングス 執行役員・CAIO 森正弥
  2. 自己紹介 博報堂DYグループが目指す「人間中心のAI」の進化 アクセンチュア、楽天を経て デロイト トーマツにて先端技術・AI領域をリード(APACリード) 日本ディープラーニング協会 顧問 東京大学 共創プラットフォーム開発 顧問

    慶應義塾大学 xDignity センター アドバイザリーボード 森 正弥 (もり まさや) 博報堂DY ホールディングス 執行役員 CAIO(Chief AI Officer) / Human-Centered AI Institute 代表
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    5 出典) https://www.ark-invest.com/big-ideas-2024 AI開発の進化は激しく、今年はAIエージェント元年。AGIへの到達も近いとされる
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    6 AI のゴッドファーザー Geoffrey Hinton氏は、あと5 年(2030年)から20年(2045年)でAGIが到来する と語る Singularity提唱の Ray Kurzweil氏は、あと 4年(2029年)と語る DeepMind の共同創業者Shane Legg氏 は、あと3年 (2028年) Elon Musk 氏は、 来年(2026年) AGIが開発さ れると語る Anthropic CEO Dario Amodei 氏は、 来年(2026年) AGIが開発さ れると語る
  5. Ⓒ HAKUHODO DY HOLDINGS Inc, All Rights Reserved. | CONFIDENTIAL

    7 AGI/ASI/シンギュラリティに向けたロードマップ: 「推論モデル」が大きなブレークスルー。次は「世界モデル」 シンギュ ラリティ (知能爆発) 人工超知能/ ASI (Artificial Superintelligence) 自己改善&進化、 無限の記憶容量、論理的思考力 フィジカルAI ロボティクスとして 物理空間でもタスクをこなせる (e.g.コーヒーテスト) 汎用人工知能/ AGI (Artificial General Intelligence) 人間と同レベルの認知能力・知能。 様々なタスクをこなせる 2045年~ 2029年~2032年 世界モデル 世界と相互作用・観測して世界が どういうものかを理解するモデル AIエージェント 自律的に判断・行動し タスクを代行するAI 推論モデル (Reasoningモデル) 既存の知識を元に新しい状況に対して 論理的に考え判断を導き出すモデル マルチモーダル 文字、音声、画像、動画など様々な データを組み合わせて処理する技術 デジタル ヒューマン 人間のような外見や動作・声で 振る舞うことができる3Dモデル 大規模 言語モデル 大量のテキストを学習し人間のような 文章を理解・生成できるAIモデル ロボティクス ロボットの設計、開発、制御に 関する技術全般 汎用 ヒューマノイド 人型のロボットで人間のような 判断・自律能力を持つ
  6. 「世界モデル」と自己超越アーキテクチャ Spatial Intelligence (空間知能) スタンフォード大学のフェイフェイ・リー氏とスター トアップ「World Labs」が取り組む「空間知能( Spatial Intelligence)」は、AIが物理空間を理解し相互 作用する能力の開発を目指している

    空間知能の特徴: • 多次元的な感覚統合 • 空間関係や物体の操作 • 時間的変化の理解 • リアルタイムでの環境適応 JEPA:次世代アーキテクチャ メタ社のヤン・ルカン氏が提唱する「JEPA(Joint Embedding Predictive Architecture)」は、現行のLLM の限界を克服する次世代アーキテクチャ JEPAの特徴: • 自己教師あり学習を通じた自律的学習 • ラベル付きデータに依存しない学習 • 現実世界とのより深い接続 • 人間の脳の機能再現を目指す構造 これらが「自己超越」の可能性を探求する枠組みとして、AGI実現とシンギュラリティへの道を切り拓く次の一手 になると期待
  7. シナリオ1: 知性の共存(ソフトテイクオフ) 最も穏やかなシナリオです。非常に優れたAIが登場するものの、その 知性は人間のそれとは本質的に異なる(モラベックのパラドックスが 示す通り)。 主な特徴: • 人間とAIが互いの違いを尊重し合う未来 • AIは独自の創造性を獲得するが、それは人間の創造性とは異なる

    • 人間の創造性は身体性や感情、個人としての実存と歴史や社会性 に結びついている • AIの創造性はデータの広範な活用と情報共有に基づく、個体や文 脈の概念が異なる 人間とAIは互いを独自の存在として認識し、コンパニオン・スピーシ ーズとしてお互いの長所を活かして協働する世界が広がる
  8. シナリオ2: 人間とAIの融合(ソフトテイクオフ) 人類とAIが融合し、新たな知性体—「新しい種」が誕生するという未来像。すでに私たちはスマートフォンやウェアラブル端末 を通じてAIを「身にまとう」ように日常生活に取り入れていますが、この動きがさらに進化する AIと人間の機能統合 ブレイン・マシン・インタフェース (BMI)の高度化などにより、技術と人 間の融合がより深く進展。AIによっ て人間の認知能力や判断力、感覚ま でもが拡張される

    「スーパーヒューマン」の誕生 人間の持つ判断力や倫理観と、AIの 持つ膨大な計算力や処理能力とが調 和することで、これまでにない創造 性や可能性を発揮する新たな個体が 登場 人間性の再定義 人間とは何かという哲学的な問いに 直面。人間性と技術が一体化してい く未来で、「人間」「知性」「人格 」の定義が問い直される
  9. 未来のビジネスに不可欠な姿勢と戦略 AGIやASIが社会に浸透する未来では、ヒューマノイド型ロボットとAGI・ASIに よる大規模なエージェントが統合され、「汎用ヒューマノイド(GH)」が頭脳 労働、肉体労働、感情労働を包括的に担う可能性がある。 価値観の再構成 技術の進展そのものを追いかけ るだけでなく、それによって再 構成される価値観や社会構造を 的確に捉え、自らの在り方を柔 軟に見直す姿勢が重要。

    人間本来の価値の再定義 汎用ヒューマノイドの登場によ り「人にしかできない」とされ ていた業務領域が再定義される 。創造性や倫理観、関係性の構 築といった人間らしい力の意味 も問い直される。 組み合わせによるイノベーション AIと自社独自の強みを組み合わせることで、効率化やコスト削減を超えた 新たな価値提案が可能になる。過去の産業革命でも、複数の技術や領域の 組み合わせがイノベーションを生み出してきた。
  10. AGI時代のリーダーシップ 「リーダーとは未知との関わり(Engagement with the unknown)に挑み続ける存在である」 — ティム・ブラウン (IDEOの創業者、博報堂DYグループ ENND Partners共同創業者)

    この言葉は、AIが加速度的に進化する未来に向けて、リーダーが持つべき姿勢を象徴的に表して いる。 未来のリーダーに求められる資質 • 情報が不完全で曖昧な状況での決断力 • 仮説を立て、小さく試行しながら学びを重ねる柔軟性 • 結果が保証されない中でも踏み出す勇気 • 多様な視点を取り入れる包括性 • 倫理的・文化的視座
  11. AIガバナンスの再構築 AGIやASIの性能と影響力は、現行の社会ルールや制度では対応しきれない可能性がある。国や地域によって価値観や法 制度が異なる中、共通の倫理原則やルールをいかにアップデートしていくかが国際社会の中心的課題となる。 マルチステークホルダー型 ガバナンス 国家や企業だけでなく、市民社会 、研究者、技術者、ユーザー、学 生など多様な立場の関係者が参画 する協議と制度設計が不可欠に メタ認知AI

    AIを制御・評価するAIの仕組みが 、将来的に制度や社会システムの 中に組み込まれていくことが想定 される。これはAIの透明性や説明 責任、信頼性を確保する上で重要 な役割を果たす 国際協調の必要性 AI技術が国境を越えて拡散する性 質を持つ以上、国際社会全体での 協調は避けて通れない。格差と分 断を乗り越え、相互理解と信頼に 基づく関係性の構築が基盤となる 将来的には、AIがAI自身のガバナンスに関与するという構図も想定すべき現実の一部になる。
  12. コンパニオン・スピーシーズとしてのAI コンパニオン・スピーシーズ(companion species):技 術哲学者ドナ・ハラウェイ氏による概念。「共に生きる種 」を意味し、人間と非人間が支配・被支配関係ではなく、 相互に影響を与え合いながら共に歴史を形作る存在である ことを強調。 博報堂DYグループの調査によると、10代を中心とした若 い世代は、AIを単なるツールとしてではなく、感情や共感 といった人間らしさ(EQ:Emotional

    Intelligence)を見出 し、感情的な寄り添いやつながりを感じて、潜在的な仲間 として認識する傾向がある。 未来の人間とAIの関係性は、一方向的な構図ではなく、相 互に影響を与え合いながら成長し、共に未来を形づくる協 働的な関係性を基礎におくべき。 「私たちはどのような“先祖”として、未来の世代やAIに向き合っていくのか」 - ティム・ブラウン
  13. 26 近年は、能力・創造性を高める観点で「HCAI(人間中心のAI)」も注目 「(今後、5年間で最大4分の1の仕事が変化していくという予想をまとめている一方で) 3年前と比べて仕事の自動化の進展は見られていない」 WEF (世界経済フォーラム) 2023/04 出典) https://www3.weforum.org/docs/WEF_Future_of_Jobs_2023_News_Release_JP.pdf 「ほとんどの仕事や産業における自動化の影響は限定的で、AIが人に取って代わると

    いうよりもむしろ、人を補完する可能性が高い」 「AIは、仕事を奪う技術ではなく、人の能力を拡張していく技術」 ILO (国際労働機関) 2023/08 出典) https://www.ilo.org/global/publications/working-papers/WCMS_890761/lang--ja/index.htm 「AIを含むテクノロジーによって人間の能力を高め、包摂的なデジタルの未来を築くには、 人間中心のアプローチが不可欠」 UNESCO (国連教育科学文化機関) 2023/09 出典)https://www.unesco.org/en/articles/guidance-generative-ai-education-and-research 「生成AI技術の展開はボトルネックがあり、人間の仕事を完全には置き換えない」 「AIは人間の可能性を掘り起こし、新しい創造性を生み出す」 オックスフォード大学 オズボーン教授 2023/09 出典) https://www.oii.ox.ac.uk/news-events/generative-ai-has-potential-to-disrupt-labour-markets-but-is-not-likely-to-cause-widespread- automation-and-job-displacement-say-oxford-ai-experts/
  14. 28 ダナ・ハラウェイ氏:コンパニオン・スピーシーズという「共創関係」 ダナ・ハラウェイ (Donna Haraway) The Companion Species Manifesto: Dogs,

    People, and Significant Otherness (2003) • アメリカ合衆国の技術哲学者。カリフォルニア大学サンタクルーズ校名誉教授 • 「コンパニオン・スピーシーズ」という概念で人間と非人間の相互形成関係を説明 ▪コンパニオン・スピーシーズ (共に生きる種) • 文字通り「コンパニオン(仲間、伴侶)」と なる「スピーシーズ(種)」を意味する • 人間と非人間の関係は、共に社会を創ってい く(co-shaping) 関係である • 人間と他の種(Haraway は犬を例とした)が、 種の違いをこえて、単なる支配・被支配の関 係ではなく、相互に影響を与え合い、共に歴 史を形作ってきた存在であることを強調 AIは、自動化・効率化を越えた 「共に社会を創る」存在