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歴史は繰り返す 〜生成AIと自動化の皮肉〜
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Ray
July 23, 2026
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歴史は繰り返す 〜生成AIと自動化の皮肉〜
Ray
July 23, 2026
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Transcript
歴史は繰り返す 生成AIと自動化の皮肉 [Ironies of Automation] / AIを紡ぐ者たち #2 3-shake /
Reito Koike (Ray) Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 1
自己紹介 Reito Koike (Ray / @r4ynode) 株式会社スリーシェイク / SRE 普段は
Kubernetes 上で Platform Engineering を実践 訳書『実践 PF エンジニアリング』が 8/24 発売 (マイナビ出版、右上) 『セキュアAPI』はレビューで参加 (翔泳社、右下) Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 2
削った業務、増えた業務 ここ 1 年くらいの、自分の業務の変化。 削った業務 文書の生成 (記事・スライドの下書き) 仕様書・設計書の作成 実装 (コードも設定も)
技術調査の一次収集 Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 増えた業務 生成物のレビュー 出典のファクトチェック AI 向けの作業ルール整備 AI 向けのガードレール整備 3
本当にラクになった? 時間の差し引きでは、答えられなかった 分かったのは、業務が減ったのではなく、入れ替わったということ 増えた側の仕事の正体は何か。この入れ替わりの先に何があるのか 今日の話: この入れ替わりには先例がある。歴史から、いまの段階と次の一手を読み解く Copyright © 3-shake, Inc.
All Rights Reserved. 4
自動化の皮肉 [Ironies of Automation] 増えた業務をよく見ると、2 種類しかない。 見張る仕事: 生成物のレビュー、出典のファクトチェック 失敗に備える仕事: 引き取って直す、作業ルール・ガードレールの整備
これは 1983 年、プロセス産業 (化学プラントなど) や航空機の自動化で既に指摘されていた。 自動化が仕事を引き受けるほど、人間の仕事は「作ること」から「見張ることと、失敗への備え」 に移る Lisanne Bainbridge, "Ironies of Automation" (Automatica, 1983) の要旨 増えた業務は AI 固有の新現象ではなく、自動化のたびに繰り返されてきた変化 Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 5
先例: 工場の電化 新しい道具の効果はいつ現れるのか。道具の置き換えの先例として、工場の電化を見る。 舞台は 19 世紀末のアメリカの製造業。当時の工場では、織機や旋盤などの機械を 1 台の蒸気機関 で動かしていた。1880 年代、そこに新しい動力、電気モーターが現れる。
1880年代 1900年 電気モーターの導入が始まる 普及率はまだ機械動力の 5% 未満 1920年代 普及率 5 割超、生産性が加速 生産性が伸びたのは 1920 年代。導入開始から約 40 年後 (Paul David, 1990) Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 6
差し替えでは、速くならなかった 40 年間に起きたことを 3 コマで見る。 ① 19世紀の工場 蒸気機関 天井の軸とベルト 機械
機械 機械 蒸気機関 1 台で全機械を回す → ② 動力源だけ交換 電気モーター 機械 機械 機械 配置はそのまま。速くならない ③ 配置ごと再設計 → 機械 機械 機械 機械ごとに小型モーター。軸もベルトも不要 工程の順に並べ直し、生産性が跳ねた 生産性を上げたのは、新しい道具そのものではなく、道具に合わせた仕事の形の再設計だった Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 7
いまは、差し替えの段階 新しい道具 そのまま残したもの 起きたこと 電化の工場 (1890年代) 電気モーター 軸とベルトの配置 速くならない 生成AIの職場
(2020年代) 生成AI 既存の業務プロセス ラクにならない (業務の入れ替わり) 業務の流れはそのままに、一部の作業だけを AI に置き換えている 見張る仕事が増えるのは、この段階の特徴。仕事の形の再設計はまだ始まっていない Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 8
言語化の境界 では、この差し替えの時期に、何をする価値があるのか。冒頭のリストがヒントになる。 we can know more than we can tell
(我々は語れる以上のことを知っている) Michael Polanyi, The Tacit Dimension (1966) 削れた業務は、やり方を言葉で説明できる仕事だった。だから AI に渡せた 残った業務・増えた業務は、まだ言葉にできていない判断 自動化の境界は、技術力の境界ではなく言語化の境界 Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 9
増えた業務の正体 レビュー基準を書く。作業ルールを整える。判断基準を明文化する AI 運用の雑務に見えるが、実体は頭の中の判断を言葉に変える作業 ドキュメント整備は「書いても読まれない」で私は続かなかった。生成 AI は書いたら即座に働く 私が発表準備リポジトリに書き溜めた基準は、モデルが替わったいまも働いている 暗黙知 →
言語化 (ルールを書く) → 形式知 → AI に渡せる仕事が拡大 即座の見返りが、次の言語化の動機になる Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 10
本当の変化は、これから いまの入れ替わりは、道具の差し替えに伴う過渡期の変化 電化の工場がそうだったように、本当の変化は仕事の形の再設計から始まる。 それがいつ、どんな形で来るかは、まだ誰にも分からない それまでにやる価値があるのは、知っていることを、語れるようにしておくこと。 AI に指示した理由、レビューで直した基準を、1 行ずつ書き残すところから 書いたものは AI
が替わっても残り、再設計が来たときの材料になる 差し替えの時代の仕事は、言語化 Copyright © 3-shake, Inc. All Rights Reserved. 11