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ビジネスの仮説検証と実験の考え方 🧪 スタートアップの仮説思考 (4)

ビジネスの仮説検証と実験の考え方 🧪 スタートアップの仮説思考 (4)

仮説思考シリーズの4つ目のスライドであり、仮説思考以外のスライドも含めた総集編的なスライドです。これまでのスライドの内容を活かしながら、良い仮説検証を行うための Tips を紹介しています。

※ 本スライドを基にした本が出ました ➡ 『仮説行動

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Transcript

  1. スライドが本になりました 本スライドを基にした書籍 『仮説行動』発売 2 第1部 仮説行動を理解する なぜ仮説は重要なのか 仮説行動の全体像 第2部 仮説を強くする

    仮説を生成する 仮説を検証する 仮説マップを生成/統合する ループの停滞を回避する 第3部 仮説を現実にする 仮説を評価する 決断する 仮説を実行する 第4部 大胆な未来を実現する 影響度の大きな仮説を目指す 目次
  2. 例)課題仮説の確からしさ(確度) 検証を通して自分の仮説が「どの程度確からしいか」を学ぶこ とができる。 17 100% 0% 40% お金を払う 約束を覚書で してくれた

    80% 顧客が宣伝 してくれて いる 60% 想定していた 金額を払って くれた 90% 想定していた 以上の金額を 払ってくれた 25% お金を払う 約束を書面で してくれた 5% 欲しいと 言ってくれた 10% 使う約束 をして くれた 仮説の確からしさ
  3. 仮説検証プロセスを通して新たな情報を得る 確度を検証できるだけではなく、そのプロセスを通して新たな 情報や気付きを得ることができる。 THE SCIENTIFIC METHOD (AGW Falsified) by Dr.

    Vincent Gray 19 現象 観察 仮説 生成 実験⇒ データ データ 分析 仮説の 検証 仮説の 確認 仕組み 化 一連のプロセスの中で新たな情報が生まれる 例) • 顧客からの新たなコメント • 顧客からのフィードバック • 顧客の行動から生まれたデータ などなど
  4. 新たな情報を得て仮説を洗練させる そして検証のプロセスを通して得られた新しい情報を用いて仮 説を洗練させることができる。 THE SCIENTIFIC METHOD (AGW Falsified) by Dr.

    Vincent Gray 20 現象 観察 仮説 生成 実験⇒ データ データ 分析 仮説の 検証 仮説の 確認 仮説の 反駁 仮説の 洗練 仕組み 化 新たな情報を用いて仮説を洗練させる
  5. 変則的な情報を得たときの良くない反応 変則的な情報を拒否する人もいるが… Chinn & Brewer (1998) An empirical test of

    a taxonomy of responses to anomalous data in science 22 情報を拒否する たとえば「この製品は要らない」と言われ たときに、以下のような拒否反応をする場 合もある。ただしこれらは悪いサイン。 1. この情報は無視しよう 2. この情報は信じられるか分からない 3. この情報は保留にしておこう 4. この情報を再解釈するとこういう意味 だから問題ない
  6. 変則的な情報を得たときの良い反応 新たな情報を拒否するのではなく、新たな情報で仮説を修正す るように心がける。 Chinn & Brewer (1998) An empirical test

    of a taxonomy of responses to anomalous data in science 23 情報を拒否する たとえば「この製品は要らない」と言われ たときに、以下のような拒否反応をする場 合もある。ただしこれらは悪いサイン。 1. この情報は無視しよう 2. この情報は信じられるか分からない 3. この情報は保留にしておこう 4. この情報を再解釈するとこういう意味 だから問題ない 新情報で仮説を修正する 変則的な情報を説明できるような仮説を修 正することができる。 たとえば「要らない」と言われたら、どう すれば「欲しい」と言ってもらえるかを考 えたり、「ターゲット顧客が違ったのかも しれない、別のターゲットにしてみよう」 という風に考えて、仮説を修正したり、新 たな仮説を生成する。
  7. (1) サーベイ・分析による検証 多くの人はサーベイや分析が足りていない。調べればすぐに仮 説検証できることも多い。 48 資料調査 仮説の一部は過去の仮説が そのまま棄却されるときも ある。 関係のある書籍は可能な限

    り目を通して、できるだけ 論文なども読むようにする こと。 競合調査 既存の競合を調べてみるこ とで。多くのアイデアの場 合、同じことを考えている 人はいて、試している。 もしすでに誰かが試してい て成功していないのであれ ば、既存の競合とは違う仮 説を考える必要がある。 分析 分析だけで検証できること もある。例としては以下。 解決策の仮説の場合:どう 考えても技術的に実現不可 能なことが分かる。 市場の仮説の場合:自分の 仮説を基にビジネスのアッ プサイドを計算したときに、 スタートアップのアイデア ではないことが分かる。
  8. 誰かと一緒に行う仮説検証:インタビュー、議論 各種インタビューや議論を通して仮説が検証できることもある。 作らなくてよいので比較的手軽な手法。 51 インタビュー 顧客インタビューを通して 仮説検証ができる。また専 門家インタビューをするこ とで、基本的な仮説の検証 も可能(ただし専門家であ

    るがゆえに見逃している点 もある)。 これらは仮説生成にも有効 な手段の一つ。 観察 顧客の様子を観察して仮説 を検証することもできる。 仮説生成にも生きてくる。 議論・壁打ち 共同創業者や信頼できる人 に話してみることで、仮説 の弱いところなどが検証で きることもある。
  9. https://foundx.jp/ Takaaki Umada / 馬田隆明 東京大学 FoundX(インセプションプログラム) https://foundx.jp/ カスタマーマニアに なろう

    顧客インタビュー・現場現物現実・顧客との同化 「カスタマーマニアになろう」 のスライドを参照
  10. この BML ループをより早く回す思考が Lean Startup リーンスタートアップでは以下のような形で紹介されている。 59 アイ デア Build

    Learn Measure 製品 より速く構築 MVP ユニットテスト ユーザビリティテスト 継続的インテグレーション クラウド などなど より速く計測 スプリットテスト ファネル分析 コホート分析 より速く学習 顧客開発 5 つの 学び 反証可能な仮説 など データ
  11. 「今、何を学べば良いか」の解像度をとにかく高める 「意思決定のためには今どのよ うな学びや情報が必要か」につ いての解像度を高められれば、 最適な仮説検証の設計ができる。 学べば良いことについての解像 度が粗いときは、仮説の解像度 も粗い傾向にあるので注意する。 (※仮説が一般的な言明の場合 は粗い傾向にあるので注意)

    64 学び 1 学び 1.1 学び 1.1.1 学び 1.1.1.1 学び 1.1.1.1.1 学び 1.1.1.1.2 学び 1.1.1.1.3 学び 1.1.1.2 学び 1.1.1.2.1 学び 1.1.1.2.2 学び 1.1.1.3 学び 1.1.2 学び 1.1.2.1 学び 1.1.2,2 学び 1.2 学び 1.2.1 学び 1.2.1.1 学び 1.2.1.2 学び 1.2.1.3 学び 1.2.2 学び 1.2.2.1 学び 1.2.2.2 学び 1.2.2.3 学び 1.2.2.3.1 学び 1.2.2.3.2 学び 1.2.3 学び 1.2.3.1 学び 1.2.3.2 学び 1.2.3.3 学び 1.2.3.4 これを学べば 事業が最も進 むはず
  12. Measure の設計 単に計測をするだけではなく、そのあとに来る Learn がしやす いよう準備を整えておくことが重要。 73 計測方法 計測方法をあらかじめ決め てから

    Build する。たとえ ば継続率なら継続率を確認 するツールを入れる。 なお、計測コストは十分に 低いものを選ぶ。基本的に は売り上げがお勧め。 目標設定 どの数値を達成すれば「検 証できた」と言えるかどう かを予め決めておく。例: • このマーケティング手段 で1週間で100人登録し たら、この手段の有効性 は確度は十分と見做し、 次のステップに進む • 売上100万円以上ならOK 関係者での合意 ステークホルダー(主に チームメンバー)間で、こ れらのバーを合意しておく。
  13. https://foundx.jp/ Takaaki Umada / 馬田隆明 東京大学 FoundX(インセプションプログラム) https://foundx.jp/ MVP の作り方

    とにかく雑に作る「手作業型 MVP」のススメ 「MVP の作り方」のスライドを参照
  14. 10 回に 1 回成功するつもりで BML ループを回す 一度の実験でうまくいくことはほとんどない。この BML ループ を何度も回すことが大事。

    82 Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct Ide as Build Learn Da ta Measur e Pro du ct
  15. BML ループのミス ミスをしないように注意して進める。 84 Learn のミス • そもそも学びたいことが 明確ではない •

    顧客の発言をそのまま学 びとしてしまい、顧客の 発言の本当の ”原因”にま で深堀りできていない • メトリクスの設定を間 違って、良い学びが得ら れない Measure のミス • 何を Measure するかを 決めずに Build を始めた • 測定のコストや存在を無 視してしまい、想定以上 に時間とコストがかかる • 測定の段取りが下手で、 時間がかかりすぎている (解析ツールを後から入 れるなど) Build のミス • MVP のサイズが大きす ぎて Build に時間がかか りすぎる • 複数の目的の MVP を 作っていてフォーカスが ぶれている • Viable (実用的) である ことを低く見すぎる
  16. どの変数を制約条件にするか いずれかを制約条件にした場合、変更できるのは残り二つとな る。 87 制約条件:スコープ 必要なものをすべて作り切 る場合。 お金をどれだけでも使い (必要であれば調達し)、 時間は伸びても構わない、

    という風になる。 制約条件:お金 一定のお金で行う場合。 スコープを変えたり、時間 が伸びても良い場合はこち ら。 お金が最も希少なリソース の場合はこのケースになる。 制約条件:時間 一定の時間で作れるものを 作る場合。 スコープを変えるか、お金 を大量に投入することで何 とかする。 時間が最も希少なリソース の場合はこのケースになる。
  17. フルスペックの製品を作る場合 「売れるかどうか」という一点において、フルスペックの製品 を作ればおそらく検証できるし、学びも多い。 96 学 び の 量 と 質

    フルスペックの 製品を作る 企画している製品が「売れるかどうか」の学びを得たい場合 スコープ (努力やコスト)
  18. 作る前に売る場合 作る前に売る、というスコープにすると、今すぐできる。 97 学 び の 量 と 質 製品を作る

    前に売る 企画している製品が「売れるかどうか」の学びを得たい場合 スコープ (努力やコスト)
  19. フルスペックの製品を作ろうとして失敗することも… それにフルスペックのものを作り切れるとは限らない。その場 合、努力やコストの割に学びがほとんどないことすらある。 99 スコープ (努力やコスト) 学 び の 量

    と 質 フルスペックの 製品を作ろうとしたものの… 長い時間をかけても 中途半端なものしか完成せず 学びがほとんどない というパターンは多い
  20. 仮説の正しさの検証と誤りの検証 114 仮説の「正しさ」の検証 自分の仮説が正しいことについてのデータ や顧客の声を集める。 自分の仮説に合わないデータや顧客の声を 無視して「正しさ」を維持してしまうこと もある。 確証バイアスもあってやりやすい。ただし 学びは少なくなる傾向にある。

    仮説の「誤り」の検証 仮説の間違っている部分を検証していく。 仮説が否定されることでその仮説自体は棄 却されるが、「この課題はないかも」や 「この顧客セグメントではないかも」など が分かっていく。 仮説を修正して仮説の誤りが減っていくこ とで、「この顧客セグメントにはこの課題 がある」といった正しい仮説へと辿り着く。
  21. Photo by Steve Jurvetson CC BY 2.0 135 おそらくほとんどの 決定は、あなたが

    持っていたい情報の 70%程度で行われ るべきです Jeff Bezos (Amazon, Founder) 2016 年の株主への手紙
  22. 確度が低い状態で進めたときに起こりうる無駄 仮説を検証せず、確からしさが低いまま進めてしまったときに は、様々な無駄が発生する可能性が高まる。 142 時間の無駄 たとえば顧客が欲しがると 思って、半年間を使って 作った製品が使われなかっ たとしたら、その半年間の 時間が無駄になる。

    時間の無駄は、寿命が短い スタートアップにとっては 一番痛い無駄。 お金の無駄 その製品を作ったのにつか われなかった場合、製品開 発にかかったコストは大き なお金の無駄になる。 人の無駄 採用した人のスキルが十全 に活かさなかったりするこ とは、才能の無駄使いにな る。
  23. 仮説検証で意識すると良いこと 162 学習と学習棄却 学びを得たり、アンラーン をして、意思決定に役立て るのが仮説検証の目的であ り、仮説が合っているかど うかは最重要ではない。 学びにフォーカスして仮説 検証を進めること。

    スコープを最適化 同量の学びが得られるス コープを設定することで、 早く仮説検証を行うことが できる。 MVP なども最大の学びが得 られる最小のスコープの MVP を作ること。 コツ • 学びたいことを解像度高 く把握する • 反証する • 負荷をかける(淘汰圧を かける) • 意思決定に必要な確から しさを定める • 実行を早くする
  24. FoundX とは 165 東京大学 FoundX は東京大学 産学協創推進本部の下部組 織です。東京大学 本郷キャンパスの近くに 3

    つの施設を構 え、起業志望者向けのプログラムを複数提供しています。 投資は行いませんが、無償での個室貸与やプログラムの提 供、起業家コミュニティへの参加を支援します。 興味 情熱 Fellows (6 か月) Pre-Founders (6 か月) Founders (9 か月) 共同創業者 の説得 有利な 資金調達 フル コミット ビジネス 実績 初契約 初売上 製品開発 と改善 助成金や コンテス ト 賞金の獲 得 Review, Resource, School 試行 錯誤 アイデア の種 検証された アイデア 起業家の 基礎知識 &スキル プロト タイプ 顧客イン タビュー
  25. FoundX の提供する起業家支援プログラム & リソース 主に東京大学の卒業生向けに、無償のスタートアップ支援プロ グラムや学習リソースを提供。 166 チーム向け Founders Program

    事業と起業家の成長を、コ ミュニティを通して達成す るプログラム。個室を無償 で最大 9 か月間貸与。 Pre-Founders Program Founders Program に入る までの準備を行うプログラ ム。 個人向け Fellows Program スタートアップ的手法の実 践を通してアイデアを見つ け、育てるためのプログラ ム。 学習リソース FoundX Review 平日ほぼ毎日更新し、ス タートアップのノウハウ情 報を提供。カテゴリ別のま とめは FoundX Resource。 FoundX Online School 動画形式でスタートアップ の基礎を学べる。
  26. スライド著者 & FoundX 運営 馬田隆明 (東京大学 FoundX ディレクター) University of

    Toronto 卒業後、日本マイクロソフトでの Visual Studio のプロダクトマネージャーを経て、テクニカルエバンジェリス トとしてスタートアップ支援を行う。スタートアップ向けのスライド、 ブログなどの情報提供を行う。 サイト: https://takaumada.com/ 167 スタートアップの 方法論の基礎 Amazon (2017年3月) 起業環境の重要性と アクセラレーター の設計方法 Amazon (2019年4月) スタートアップの 公共や規制との 付き合い方 Amazon (2021年1月) スタートアップに ついてのスライド Slideshare SpeakerDeck