2019.03.17に行われた、第11回愛知県青少年育成アドバイザー研究集会in豊田での講演内容(公開用)
SNSをつかう子どもたちとどう向き合うか岡崎女子大学 子ども教育学部講師 花田経子[email protected]
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自己紹介• 花田 経子(Kyoko Hanada)• 岡崎女子大学 子ども教育学部 講師• 2002年 愛知大学大学院経営学研究科博士後期課程満期退学• 2002~2015年 新島学園短期大学キャリアデザイン学科専任講師• 外部役員等(一部)• 文部科学省enPiT-Security アドバイザリー委員• 愛知県警 中小事業者情報セキュリティ対策支援ネットワークアドバイザー• 研究分野• 情報システム監査の監査人のキャリア形成と人材育成• 情報セキュリティ人材のキャリア形成と人材育成• 初等教育における情報教育と情報セキュリティ教育のための人材育成• その他• デジタルネイティブな小学校2年生を育てる母親
子どもたちとSNS(実態)
各年齢別のSNS利用実態(40~60代)H29年度情報通信白書より
各年齢別のSNS利用実態(10代~30代)
本学でのSNS利用実態(2018年4月)1171421258415 11 7 6 419020406080100120140160先週一週間以内に利用したSNS(N=142)LINEは100%の利用率(公式の連絡手段)TwitterとInstagramが主な情報収集・発信用サービス
SNSにもいろいろある(主なもののみ)Twitter・アカウントは複数作成可能・短文が中心・ほかのサービスと連携可能LINE・アカウントは1台1つ・連絡をとるときに使う・内部にいろんなサービス有Instagram・画像・動画が中心・短時間で削除されるストーリーという機能有Tik Tok・短時間動画・簡単な操作で面白い動画が作れるため人気がある
用途に応じて使い分けられるSNSTwitter・目的ごとに応じたアカウントを持つ・広く連絡を取ることも可能LINE・親や友人、クラス内の人と連絡を取るために用いる・ゲームや漫画なども使うInstagram・画像をシェアして楽しむ・服などを買うときには検索用にも使うTik Tok・仲間内で楽しむ・自分アピールなどにも・キャンペーン応募
Twitterアカウントの複数所有は当たり前8755アカウントを複数所有しているか(N=142)はい いいえ【アカウントの所有個数】平均が3個10個以上の学生が10名(最大値 16個)用途に応じて使い分ける使い捨てる子どもたちも
Twitterアカウント(垢)の主な種類アカウント(垢)の通称 内容通常垢・リア垢・本垢一番オーソドックスなアカウント。外向けのアカウント。実名やニックネーム、学校名などを記載することが多い。裏垢・限定垢 限られた人とだけコミュニケーションをするために使うアカウント。鍵をつけて申請・承認した人しか見られないようにすることが多い。本音を吐露したりするケースも多い。趣味垢 自分の趣味のために用いるアカウント。勉強垢 勉強のために記録をとったり、モチベーションを高める。取引垢 チケットなどを取引したりする場合に使うアカウント。エロ垢・売り子垢 性的な自画撮りや、その他の性的に問題のある行動をするためのアカウント。病み垢 自身の精神的な状況を聞いてほしいために作成される
SNSの実名での利用は?Twitterの場合は、アカウント欄にニックネーム、プロフィール欄に実名や学校名、部活名などを記載参照:https://mmdlabo.jp/investigation/detail_1703.htmlなぜ?円滑なコミュニケーションのため
今の時期は友達探しの時期入学式より前の段階で、SNSを通じた知り合いができそれが今後の学校生活での友人へとつながっていく
子どもたちにとってのSNS・ネット• スマートフォンを持った時点で、これらのサービスも利用し始める• インターネットに情報を発信している、という自覚は薄い• 使い方を誰かに教わるわけではない(友人知人・独習)• SNSをスマートフォンのアプリの一つだと考えている• 操作には詳しい、技術には詳しくないあって当たり前・リアルの一部
SNSを通じたトラブル事例
事例1:SNSの残念な利用方法からいじめに発展した例
事例2:自画撮りと拡散による被害・加害
事例3:中学生が行ったチケット詐欺
事例3:中学生が行ったチケット詐欺愛知県女性A京都府中学生Z徳島県高校生B和歌山県女性C① [Twitter:A垢]チケットを売ります③書き込みを見る②BとCが返信④Aと直接売買交渉(8万円)⑤A垢に成り済まして別垢作成⑥B、Cと売買交渉(一人4万円)⑦Aの口座に入金するよう指示⑧BとCがそれぞれ4万円ずつ口座に入金関東地方女性E⑨[チケット販売オークションサイト]チケットを売ります⑩Eが購入希望⑪Eと売買交渉(6万円)⑫Eの住所へ送付指示⑬Eにチケットを送付チケットが届かないのでBが警察へ警察は当初Aの犯行として誤認逮捕その後Eへの送付記録が見つかり、EとZのやり取りからZを立件へ
定期的に発生する『バイトテロ』• アルバイト中の高校生・大学生などが、倫理的に問題のある行動をふざけて行い、それを写真・動画でSNSにあげること• 回転ずしチェーン店:床下に魚を落としてそれをまな板に載せる• 誰が行動をしたのかなどの特定• SNSを複合的に見れば、だれが実行したのかがわかる• 影響• 企業:閉店、謝罪(場合によっては店を閉めるなどの問題)、金銭的補償• 本人:損害賠償、退学、精神的な苦悩• 本人の周り• 意図的に炎上を図るために問題行動を拡散させる行為
日常的に発生する、パスワード乗っ取りごっこ• 自分のアカウントを利用するためのパスワードを、友人たちに教える。• 教えてもらったパスワードを使って、書き込みをできたら「のっとり成功!」のっとったことを、tweetする。• まれに、友人知人ではない人にパスワードを教えているケースもある。パスワードの安全な管理は教えられていない???
子どもたちによるトラブルは被害者・加害者どちらも発生している被害者になるケース加害者になるケース結果的な被害者が増えているダメージ後の回復がうまくいかないケースも多い
サイバー空間での子どもたち理想現実情報活用能力の育成プログラミング教育情報社会に参画する態度の育成アンバランスな知識相談できない環境対処療法的情報モラル教育
「知らない人には会わない」の矛盾• 今年8月~9月に遭遇したとある事例• X(男性)は、Twitter上で多くの女子中学生・高校生との性交渉を記録した写真を掲載し、動画の販売を促していた。• 子どもたちは、Xとは彼氏彼女の関係だと信じていた。• X自身の行動が、子どもたちが自分に対して強い好意を抱くようにしむけていた。• Xは子どもたちを児童ポルノ販売の道具として扱っている。• 各種さまざまな情報をインターネット上で探し、警察に情報提供を行った。• Xは逮捕され起訴された、という情報を得ている。Xのことを「知らない人」と位置付けることができない
子どもたちはなぜ相談しない?•恥ずかしい•親に心配をかけたくない•言うと「またSNSばかりやって」と怒られる•親の方が知らない子どもたちを危うくしたのは大人の責任ではないか?
子どもたちのためにできることは?×問題行動をおこすようなSNSを禁止させる〇SNSを安全に使う方法を教える子どもたちが相談できる環境を作る
発生したらどうすれば?
子どもも大人もわかってないこと被害行為・加害行為があったら、どうすればいいのか対応は内容ですべて異なる!(万能な方法が存在していない)
子どもたちの「やってまった・・・」LINEのスタンプをくれるというので顔写真を送ったら脅された裏垢に彼氏の悪口を書いてたら彼氏にバレたフィッシングサイトを作ってみたウィルスを作った漫画村で無料で漫画を読んでいたオンラインゲームでチートツールを使ったチケット買おうとしてお金を振り込んだけどチケットが来ない
各法律ごとに対応方法が異なる自画撮り事案児童ポルノ・リベンジポルノ名誉毀損、削除請求・発信者情報開示パスワード管理サイバー犯罪不正アクセス禁止法等海賊版サイト問題著作権法・知的財産権利用規約違反著作権法・威力業務妨害詐欺事案消費者トラブル
被害を受けた場合の基本的な事項①被害を受けた本人の気持ちを優先させる②証拠を確保する③どの専門家につなぐのかを考える
警察は頼りになる• 警察に相談することはとても重要対応の際のトリアージとして警察に相談することは有用である
大切なのは、その後をフォローすること• SNSのトラブルはSNSの問題なのか?ネットの問題ととらえると本質を見誤る子どもが抱えるリアルの問題をどう支援するか
われわれができることはたくさんある①知る・調べる②他人事にしない③受容して支える
子どもたちのトラブルは大人の責任①子どもたちが安全に利用できるようにみまもる②相談できる環境を作る(話しやすい環境・知識)