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情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して/IPSJ-CE168-19

 情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して/IPSJ-CE168-19

NAKAZONO Nagayoshi

February 12, 2023
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Transcript

  1. 情報科教員の採用において
    求められる知識・技能
    教員採用試験の分析を通して
    麗澤大学 国際学部
    NAKAZONO Nagayoshi
    中園 長新
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    本研究は、JSPS科研費JP17K14048およびJP21K02864の助成を受けたものである

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  2. 本発表の位置づけ
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
    2
    2022-03-12
    IPSJ-CE164@千葉工業大学
    東京・大阪の採用試験を分析
    採用試験分析について詳細に検討
    2022-08-09
    第15回全国高等学校情報教育研究会
    東京・大阪・千葉の採用試験を分析
    考察部分は簡易なものにとどまる
    2023-02-12
    IPSJ-CE168@東大駒場キャンパス

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  3. Summary
    東京・大阪・千葉の教員採用試験(高校情報科の専門試験)
    5年分の出題内容を分析することにより、各自治体が情報科の
    教員に対してどのような知識・技能を求めているのかを検討
    不易: 情報セキュリティ、情報倫理・モラル
    情報のデジタル化、ネットワーク
    流行: システム開発、Pythonによるプログラミング
    問題解決型・生徒指導的な設問の増加
    高校レベルを超えた専門性の高い知識についても出題あり
    知識等の流行は、学習指導要領改訂だけでなく、時代の変化や
    社会からの要請等からの影響も色濃く受けている可能性
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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  4. 教員採用試験のしくみ(代表的なパターン)
    一次試験 (7月頃)
    教職教養、一般教養、専門試験のペーパーテスト
    専門試験は校種・教科ごとに、専門知識等を問う
    二次試験 (8月頃)
    面接、模擬授業、集団討論等の実技試験
    試験は都道府県・政令指定都市ごとに実施
    例外もあり
    ・県と政令市が合同実施(e.g. 千葉県・千葉市)
    ・大阪府豊能地区は、地区単位で独自の教員採用を実施
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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    本研究の対象

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  5. 自治体からみた試験の意義
    教員採用試験 = 自分たちの学校の先生を選ぶ試験
    十分な授業力を持った教員を採用したい
    自治体の教育方針に賛同してくれる教員を採用したい
    「求める教師像」の制定・公表
    募集要項の冒頭に明記されるのが通例
    数項目の箇条書きによる抽象的な表現になりがち
    「○○科の教員には○○の知識を求める」といったような
    レベルまでは言及されていない
    公言していなくとも、採用試験は自治体が教員に求める
    資質・能力を測定しているはず
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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  6. 研究の目的・意義
    高等学校情報科の教員採用試験の問題内容を分析することを
    通して、各自治体等が高等学校情報科の教員にどのような
    知識・技能を求めているのか、その傾向を把握する
    研究の意義
    高等学校情報科の教員に求められる知識・技能について、自治体が
    公言していない中でもそれらを推測することができるようになる
    より効果的な教員養成の実現が支援され、現場が求める知識・技能を
    修得した教員志望者が増加することで、現場が求める知識・技能を
    修得した教員の新規採用を推進することができると期待される
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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  7. 調査の対象
    自治体: 東京都/大阪府/千葉県・千葉市
    大阪府の試験は大阪市、堺市、豊能地区を除く地域
    千葉県と千葉市は一体となって試験を実施
    年度 : H30~R4年度採用の試験 (5年分)
    実施年は2017(H29)~2021(R3)年
    試験 : 高等学校情報科の専門試験
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    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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  8. 調査・分析の手順
    1. 試験問題を小問ごとに確認し、問うている知識でラベリング
    2. ラベリングした各問を、情報科の学習内容に沿って分類
    分類に際しては、学習指導要領の「内容」や『教員研修用教材』を
    参考とする
    分類したラベルには、分析の便宜を図るためコードを付与
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    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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    例: (A10) 情報学基礎
    ラベル
    コード

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  9. 「内容」とラベル、コードの対照表
    (1) 情報社会の問題解決
    (A10)情報学基礎
    (A11)数学的思考
    (A20)情報セキュリティ
    (A30)情報倫理・モラル
    (A50)情報に関する政策
    (2) コミュニケーションと情報デザイン
    (B10)情報のデジタル化
    (B11)論理回路
    (B20)ユニバーサルデザイン
    (B40)情報デザイン
    (B50)HTMLとCSS
    (B60)Webデザイン
    (3) コンピュータとプログラミング
    (C10)コンピュータの仕組み
    (C20)プログラミング
    (C24)プログラミング – フローチャート
    (C21)プログラミング- JavaScript
    (C22)プログラミング- Python
    (C23)システム開発
    (C40)アルゴリズム
    (C50)モデル化とシミュレーション
    (4) 情報通信ネットワークとデータの活用
    (D10)ネットワーク
    (D30)情報システム
    (D40)データベース
    (D50)データの収集と分析
    (5) その他
    (E10)表計算ソフトウェア
    (E20)学習指導要領
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  10. 自治体・年度ごとの問題内容の分類
    この表を確認したい
    場合は、論文p.6を
    参照してください
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  11. 自治体ごとの傾向
    3つの自治体で頻出
    (A20)情報セキュリティ (A30)情報倫理・モラル
    (B10)情報のデジタル化 (D10)ネットワーク
    (D40)データベース
    自治体ごとの特徴(頻出項目)
    東京都
    (C21)プログラミング – JavaScript
    (E10)表計算ソフトウェア
    大阪府
    (B40)情報デザイン (C40)アルゴリズム
    (C50)モデル化とシミュレーション
    千葉県・千葉市
    (C24)プログラミング – フローチャート
    (D50)データの収集と分析
    (E20)学習指導要領・指導と評価
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  12. 内容・年度ごとの出題数推移
    問題数が増加傾向
    (2) コミュニケーションと情報デザイン
    (3) コンピュータとプログラミング
    問題数が減少傾向
    (1) 情報社会の問題解決
    (4) 情報通信ネットワークとデータの活用
    新学習指導要領で注目されている内容の
    問題が増加したため、相対的にそれ以外の
    内容が減少しているのではないか
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    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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    高等学校学習指導要領改訂
    (R1試験は新カリ未対応)

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  13. 具体的な出題傾向の検討 1/2
    B10 情報のデジタル化
    いずれの自治体においても出題頻度高
    2進法や16進法に関する問題が多い
    10進法との変換だけでなく、補数表現や浮動/固定小数点方式、
    桁落ち等に関する問題も多く見られた
    問題解決型の設問
    会話文や具体的事例に基づく設問 → 東京の問題に多い
    大阪府においてもR3年度以降は具体的事例を扱う設問が登場
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  14. 具体的な出題傾向の検討 2/2
    知識の専門性
    教員採用試験のレベルは、高等学校レベルよりも高い
    出題された(相対的に)高度な内容の例
    DBMSのACID特性(大阪府・H30,東京都・R4)
    BNF(バッカス・ナウア記法)(大阪府・R1)
    UML(大阪府・R1)
    LATCH法(大阪府・R2)
    プレグナンツの法則(大阪府・R2)
    E-Rモデル(大阪府・R3)
    IPv6(東京都・R2)
    シャノンの標本化定理(千葉県・千葉市・R3)
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    「情報トピックス」に
    記載あり

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  15. 自治体が情報科教員に求める知識・技能
    東京都
    プログラミング: Pythonの活用能力
    知識・技能を具体的場面(生徒指導等)で活用できる応用力
    大阪府
    高度な問題やや多い → レベルの高い人材の採用目指しているか
    新しい学習内容をしっかりフォローしていく先見の明
    千葉県・千葉市
    具体性よりも汎用性を重視(例:特定の言語ではなくフローチャート)
    専門試験においても、学習指導要領等の教職知識を重視
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  16. 今後に向けて
    2022(R4).04 新学習指導要領が学年進行実施
    多くの学校で「情報Ⅰ」が開始 → 2023年度からは「情報Ⅱ」も
    2025(R7).01 共通テストに「情報」が追加
    すべての国立大学が原則として「情報」の受験を課す
    情報科を中心とした情報教育が、単なる受験のための学習に
    矮小化されることなく、本質的な学びとして価値を見出して
    いかなければならない
    普遍的資質・能力としての情報活用能力育成と、受験対策の情報教育を
    有機的に絡めながら推進できるような、十分な資質・能力を持った教員の
    養成・採用が不可欠
    適切な採用のため、教員採用試験の問題もブラッシュアップ必要
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    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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  17. Summary(再掲)
    東京・大阪・千葉の教員採用試験(高校情報科の専門試験)
    5年分の出題内容を分析することにより、各自治体が情報科の
    教員に対してどのような知識・技能を求めているのかを検討
    不易: 情報セキュリティ、情報倫理・モラル
    情報のデジタル化、ネットワーク
    流行: システム開発、Pythonによるプログラミング
    問題解決型・生徒指導的な設問の増加
    高校レベルを超えた専門性の高い知識についても出題あり
    知識等の流行は、学習指導要領改訂だけでなく、時代の変化や
    社会からの要請等からの影響も色濃く受けている可能性
    2023-02-12 (Sun.) IPSJ-CE168@東京大学駒場キャンパス
    情報科教員の採用において求められる知識・技能:教員採用試験の分析を通して
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