Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践/IPSJ-SS...

 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践/IPSJ-SSS2024-2-2

NAKAZONO Nagayoshi

August 10, 2024
Tweet

More Decks by NAKAZONO Nagayoshi

Other Decks in Education

Transcript

  1. 実践の背景 情報教育 = 情報活用能力を育成する教育 学習指導要領の総則に明示 → 校種・教科等を超えて実践すべし! 情報教育はさまざまな教科等で実践できる 学習指導要領: 公民科・数学科との関連が明記

    教科書分析により、地理・歴史・公民の各教育において 情報教育を含む余地があることを明らかにした 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 4 歴史教育において 情報教育を実践してみよう
  2. 第一著者による先行研究 中園長新(2022)「高等学校「公共」の教科書における情報社会の扱い」 情報処理学会 コンピュータと教育研究会 166回研究発表会, 2022年10月1日. 『情報処理学会研究報告 コンピュータと教育(CE)』Vol. 2022-CE-166, No.

    9, pp. 1-8. 中園長新(2023a)「歴史教育の中で情報教育を扱う授業の提案」 日本教育工学会2023年春季全国大会, 2023年3月25-26日. 『日本教育工学会2023年春季全国大会講演論文集』pp. 215-216. 中園長新(2023b)「高等学校「歴史総合」の教科書における情報社会の扱い」 情報処理学会 コンピュータと教育研究会 170回研究発表会, 2023年6月3日. 『情報処理学会研究報告 コンピュータと教育(CE)』Vol. 2023-CE-170, No. 3, pp. 1-8. 中園長新(2024)「高等学校「地理総合」の教科書における情報社会の扱い」 情報処理学会 コンピュータと教育研究会 175回研究発表会, 2024年6月1日. 『情報処理学会研究報告 コンピュータと教育(CE)』Vol. 2024-CE-175, No. 6, pp. 1-8. 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 5
  3. 「歴史総合」の目標 社会的事象の歴史的な見方・考え方を働かせ、課題を追究したり解決したりする活動を通して、広い視野に 立ち、グローバル化する国際社会に主体的に生きる平和で民主的な国家及び社会の有為な形成者に必要 な公民としての資質・能力を次のとおり育成することを目指す。 (1) 近現代の歴史の変化に関わる諸事象について、世界とその中の日本を広く相互的な視野から捉え、現代 的な諸課題の形成に関わる近現代の歴史を理解するとともに、諸資料から歴史に関する様々な情報を適 切かつ効果的に調べまとめる技能を身に付けるようにする。 (2) 近現代の歴史の変化に関わる事象の意味や意義、特色などを、時期や年代、推移、比較、相互の関連や

    現在とのつながりなどに着目して、概念などを活用して多面的・多角的に考察したり、歴史に見られる課 題を把握し解決を視野に入れて構想したりする力や、考察、構想したことを効果的に説明したり、それらを 基に議論したりする力を養う。 (3) 近現代の歴史の変化に関わる諸事象について、よりよい社会の実現を視野に課題を主体的に追究、解 決しようとする態度を養うとともに、多面的・多角的な考察や深い理解を通して涵養される日本国民とし ての自覚、我が国の歴史に対する愛情、他国や他国の文化を尊重することの大切さについての自覚など を深める。 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 8
  4. 「歴史総合」の内容 A 歴史の扉 (1) 歴史と私たち (2) 歴史の特質と資料 B 近代化と私たち (1)

    近代化への問い (2) 結び付く世界と日本の開国 (3) 国民国家と明治維新 (4) 近代化と現代的な諸課題 C 国際秩序の変化や大衆化と私たち (1) 国際秩序の変化や大衆化への問い (2) 第一次世界大戦と大衆社会 (3) 経済危機と第二次世界大戦 (4) 国際秩序の変化や大衆化と現代的な諸課題 D グローバル化と私たち (1) グローバル化への問い (2) 冷戦と世界経済 (3) 世界秩序の変容と日本 (4) 現代的な諸課題の形成と展望 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 9
  5. 「歴史総合」における情報社会の扱い 内容の「D グローバル化と私たち」(現代を扱う単元)等に 現代の情報社会に関連する内容あり キーワードの代表例: SNS、IoT、AI、ビッグデータ、電子商取引、フェイクニュース etc. 歴史総合において情報社会を扱う視点 歴史的文脈やグローバル化との関わりの中での言及 インターネットの普及

    ネットやスマホ等の身近な存在と世界との関わりに着目 教科書によって言及量に濃淡あり 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 10 ※中園(2023b)を元に要点整理
  6. 授業実践の概要 「歴史総合」の授業として1コマ(50分)の実践 対象: 愛知県立大府高等学校 1年生 普通科の2クラス 実践日: 2023年2月8日 実践スタイル 実践クラスは、第二著者が「歴史総合」の教科担任

    第一著者がゲストティーチャーとして授業進行 第二著者が主担当教員として授業のコーディネート 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 12
  7. 実践校の「歴史総合」の授業スタイル 教科書: 山川出版社『現代の歴史総合:みる・読みとく・考える』 担当教員(第二著者)が独自に構成した単元で進行 単元全体を貫く「問い」を設定し、それに基づいた各時の「問い」を 資料を活用しながら考えていく 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2

    未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 14 単元「インターネットは私たちを幸せにしてきたの?」 37. インターネットは私たちを本当に幸せにしてる? 38. 情報通信は冷戦をエスカレートさせた? 39. 情報通信は人種差別の敵か味方か? 40. 発展する技術の「奴隷」になってない!? 41. 情報って誰のものなの? 42. 途上国の情報通信化は進展してないの? 43. AIと共に生きる未来とは? 44. 情報通信のリスクを克服するためにできることは?
  8. 実践授業の位置づけ 単元「インターネットは私たちを幸せにしてきたの?」(全8回)の 7回目の授業として位置づけ 教科書第5章「冷戦と世界経済」、第6章「世界秩序の変容と日本」 授業で扱ったトピック(第1~6回) トランプ元大統領のTwitter活用 ベトナム戦争、人種差別と情報通信 技術発展が生活・産業・政治等に 与えた影響 獲得されていく自由と

    強まっていく統制 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 15 単元「インターネットは私たちを幸せにしてきたの?」 37. インターネットは私たちを本当に幸せにしてる? 38. 情報通信は冷戦をエスカレートさせた? 39. 情報通信は人種差別の敵か味方か? 40. 発展する技術の「奴隷」になってない!? 41. 情報って誰のものなの? 42. 途上国の情報通信化は進展してないの? 43. AIと共に生きる未来とは? 44. 情報通信のリスクを克服するためにできることは?
  9. 実践授業の概要 1. 生成AIが生成した画像や会話を見て、生成物に関する感想や AIの「人間らしさ」について考える 2. 「シンギュラリティ」「Society 5.0」について資料を元に概説 3. SDGsの17の目標のうち、AIやICTに解決してほしい課題は どれか考える

    4. 本時のキーワード「AI(人工知能)、シンギュラリティ、 Society 5.0、共生」を提示した上で、 本時の問い「「人間とAIが共に生きる未来」とは?」について 自分なりの考えをまとめる 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 16
  10. 回答のグループ化 内容 Aクラス Bクラス 計 人間とAIが役割分担する 18 27 45 AIの発展を制限する

    7 1 8 AIと適度な距離感を保つ 4 4 8 人間がAIを支配する 5 1 6 AIが人間を支配する 2 0 2 その他 2 5 7 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 23
  11. 生徒の回答:人間とAIの共生 得意分野の分担、デメリットの相互補完 人間とAIのお互いに足りないところを補い合う。感情的なものは人間にしかできないし、ミスし ないということはAIにしかできない。(Aクラス) AIの短所を人間が補い、 AIのほうが得意なことや人間では力不足なことをAIが担当するよ うな生活 (Bクラス) 具体的な役割分担: 哲学・芸術等の発想を主とする分野→人間

    / 計算・機械生産等の工業系→AI 哲学的なことを考えるのは→人間 計算など→AI(Aクラス) 精密な機械とかを大量に作るときはAIに任せたほうがいいと思うけどマンガとかアニメとかは 感情とかも入ってくるので人間に任せるなどお互い苦手な部分を補い合って生活していくこと がいい(Aクラス) 人間は発想 AIは計測や記憶(Bクラス) 2024-08-10 Sat. SSS2024 登壇発表2-2 未来を創る歴史教育としての情報教育:AIとの共生を考える「歴史総合」の授業実践 24