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May 07, 2024
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Transcript
ST05: 第3波以降と構造的不正義 ST04の復習( 「家父長制」と女性差別) シングルマザーの貧困 ヤングの構造的不正義 支配および抑圧と自律性 社会思想(Social Thought, TCUE2024)
福原正人:
[email protected]
「家父長制」と女性差別 第二波の不満 -男女間の中立的な制度設計下でも女性差別が維持されている e.g. 雇用機会均等→賃金格差やケア労働の不平等など なぜ? 「家父長制」という社会構造による性別役割分業の固定化 -支配および抑圧する側(=男性)とされる側(=女性)の 「権力関係」 e.g.
(1) 私的空間での無償労働およびただ乗り、(2) 公的空間での賃労働の独占 -女性の貧困や介護職の低賃金、妊娠中絶のコントロール、ハラスメント等、女性のあら ゆる脆弱さは、男女間の歪んだ権力関係がもたらしたものである。 cf.「性的モノ化」もこの男女間の権力関係を踏まえて意味のあるキーワードに ST05: ST04の復習 福原正人:
[email protected]
家父長制はどこまで万能なキーワードなのか? 1. 「男性ってそんなに悪者?」 :ほとんどの男性は、女性に対して悪意をもって接していな いが、それでも男女間には歪んだ権力関係があると言えるのか? 2. 「問題はもう少し複雑じゃない?」 :男女間の権力関係という構造的な説明は、(a) 男性 と女性の利益およびその二元論を固定化したり、(b)この二元論に回収されない問題を曖
昧にしてしまう 3. 「女性にも主体性はあるよね?」 :女性がいつも構造の被害者というのは一面的すぎる。 とくに女性も職業などを主体的に選択しているのではないか? →1/2については、部分的に、今日の講義で回答を与える。2/3については、来週以降の講義 「適応的選好形成」や「ケアの倫理」などから回答を与える。 ST05: ST04の復習 福原正人:
[email protected]
第3波以降と構造的不正義 第2波は、高等教育を受けた白人女性による男性支配の告発 第3波~現代のなかで画一的な女性像が問い直されることで構造理解も変化する 今日のタスクは以下の通り アイリス・マリオン・ヤングの「構造的不正義(structural injustice)」を理解する -シングルマザーの事例から抑圧構造の性質を具体的にイメージしてみる これによって以下のことが理解できる (1) 中立的な制度設計では、男性優位の社会構造を固定化するという第二波の問題関心を
引き継ぎつつ、社会階層、人種、性的指向、性自認など、多様な集団が被る支配および 抑圧を問題にするための理論的展開、(2) 支配および抑圧は流動的であること。ある場面 では支配される側が異なる場面では支配する側になる。 ST05: 今日のタスク 福原正人:
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アイリス・マリオン・ヤング(Iris Marion Young) アメリカ合衆国の政治哲学者。専門はフェミニズム政治・社会理論。20世紀後半を代表 する政治理論家の一人。 -Justice and the Politics of
Difference,Princeton University Press, 1990.翻訳あり -Responsibility for justice, Oxford University Press, 2011. 翻訳あり ヤングの理論的貢献とは何か 1. 構造的不正義というキーワードを定式化したこと 2. 支配および抑圧が市場社会のなかで多様な形で引き起こると指摘したこと 3. 支配および抑圧された状況を「自律性(autonomy)」から言語化したこと 4. (構造的不正義を止めるための未来志向的な責任の所在を指摘したこと) ST05: ヤングの理論的貢献 福原正人:
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シングルマザーの貧困と彼女の責任 ・サンディは、早くにパートナーと離婚して二人の子供を育てるシングルマザーである ・大家の希望によりアパートが改築されるのを機に引っ越しをすることに決める ・職場の近くには一戸建ての物件しかないことがわかる ・サンディの安い給料で借りることができて子どもにとって安全である地域にあるアパ ートは職場からみて町の反対側しかない ・通勤に必要になるため貯金のほとんどを頭金にして車を買った ・サンディが住む街の住宅補助制度に申し込んだが2年間の待機期間がある ・アパートは見つかったが保証金として、三ヶ月分の家賃の前払いが必要になる *日本でもシングルマザーの経済状況に関する社会学研究がある。例えば斉藤知洋「シングル
マザーの正規雇用就労と経済水準への影響」 『家族社会学研究』など。 ST05: Responsibility for justiceでの仮想事例 福原正人:
[email protected]
サンディの事例から何が言えるのか? 当事者の境遇 a. サンディの貧困はサンディ個人の責任とは言い違い サンディが責任を負えない何かが彼女の選択肢を狭めるように作用している b. サンディの貧困は(サンディが帰属する)集団や階層などを原因としている e.g. シングルマザー/女性/人種 →性別役割分業による不安定な雇用と安価な給与
人種の固定的なイメージを反映した住宅事情・都市開発 当事者以外のふるまい 個人や組織は市場社会の公正なルールに則って自分の利益を追求しているだけ 誰かが悪いとは言えない。特定の個人に問題の責任を問えない。 ST05: 構造的不正義の特徴(1) 福原正人:
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構造的不正義はどのように生まれるのか? 抑圧とは、悪意のない人々が、たいてい無意識に信じている前提や行っている反応の結 果として、一部の集団が被る巨大で深刻な不正義である。そうした無意識の前提や反応 は、他者との日常的な交流やメディア、文化的ステレオタイプ、そして官僚制組織や市 場メカニズムの構造的特徴といった、要するに日々の普通のプロセスのなかに現れるも のである(-Justice and the Politics of
Difference, Princeton University Press, p.41 (翻 訳58頁)) 。 構造的不正義は、男女間の権力関係を超えて多様かつ複雑なものである 問題となる社会構造は、被抑圧側の当事者も含めて、多くのひとが無意識に再生産して いる(=繰り返し実践することで固定化している) ST05: 構造的不正義の特徴(2) 福原正人:
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アメリカの人種問題と住宅市場/都市開発 シングルマザーが住居を失うという事例は、若干アメリカ的な事情がある 白人と黒人などの空間的隔離が住宅事情や土地開発を通じて成立している -人種に対する固定的なイメージを反映した個人の居住選好と都市開発 -ホワイト・フライト(1950年~60年):人種が混合した都市部からより郊外への移住 -ジェントリフィケーション(1990年~): 都市部の再開発による高級住宅地化 空間的隔離のデメリットは? -社会の分断が深刻化する -該当地域に住むひとが治安や質の高い教育、医療への機会にアクセスできない
-人種に対する固定的なイメージがさらに再生産される ST05: なぜ住宅事情/都市開発? 福原正人:
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構造的不正義はどういう意味で不正であるのか? 構造的不正義は、当事者の 「自律性」 を毀損するという意味で、不正である 自律的に生きるとは?≒自分らしく生きること。自分らしく生きるためにはそのための能 力を育てたりそれを発揮できる環境でなければならない。 つまり、ヤングにとって支配および抑圧された不正な状況とは、上記のような環境が整 っていない状況のことを指す。具体的には、以下5つほどに分類できる。 1. 搾取:不当に利益が移転されている状態
2. 周縁化:社会生活に参加できない状態、困窮状態 3. 無力化:権力に抵抗する術を持たない状態 4. 文化帝国主義:文化のステレオタイプ化、従属化 5. 暴力:物理的危害、ハラスメント、レイプ ST05: 抑圧の五類型 福原正人:
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家父長制による構造的説明では、支配および抑圧的な構造が、男性=支配する側/女性 =支配される側といった形で、二元論的に固定化されていた。この説明は、フェミニズ ム運動を大きく加速させたが、いくつかの限界が指摘できる。 これに対してヤングの構造的不正義は、 (多様な当事者研究の発展を踏まえて)支配およ び抑圧的な構造が、複数の帰属やアイデンティティによりマジョリティ/マイノリティ のあいだで流動的であり、さらに市場社会のなかで無意識のうちに再生産されているこ とが指摘される。 ST05: まとめ
福原正人:
[email protected]
今日のお題 構造的不正義はどんな事例に適用できるだろうか。notionの参考図を踏まえて、ケア労 働以外の身近な事例で考えてみよう。 ヤングによれば、構造的不正義は、特定の個人に問題の責任を問えない問題である。こ れに関連して、ヤングの構造的不正義に何か不満があるとしたらどのようなものか。 その他、通常のリアペとして。 ST05: learnwizone 福原正人:
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ST06: 適応的選好形成(adaptive preference) ——抑圧的な構造と当事者の同意? ST06: 次回 福原正人:
[email protected]