Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
Linuxのプロセススケジューラのしくみ その2 タイムスライスの計算方法
Search
Satoru Takeuchi
PRO
September 27, 2020
Technology
0
1.3k
Linuxのプロセススケジューラのしくみ その2 タイムスライスの計算方法
以下動画のテキストです
https://youtu.be/s7OEjcGHAXQ
Satoru Takeuchi
PRO
September 27, 2020
Tweet
Share
More Decks by Satoru Takeuchi
See All by Satoru Takeuchi
「Linux」という言葉が指すもの
sat
PRO
4
140
APIとABIの違い
sat
PRO
5
62
ファイルシステムへのアクセス方法
sat
PRO
0
26
ファイルシステム
sat
PRO
1
34
低レイヤソフトウェア技術者が YouTuberとして食っていこうとした話
sat
PRO
7
6.1k
ポーリングと割り込み
sat
PRO
1
81
Rook: Intro and Deep Dive With Ceph
sat
PRO
1
140
会社員しながら本を書いてきた知見の共有
sat
PRO
3
890
デバイスにアクセスするデバイスファイル
sat
PRO
1
63
Other Decks in Technology
See All in Technology
OCI Oracle Database Services新機能アップデート(2025/06-2025/08)
oracle4engineer
PRO
0
180
下手な強制、ダメ!絶対! 「ガードレール」を「檻」にさせない"ガバナンス"の取り方とは?
tsukaman
2
460
S3アクセス制御の設計ポイント
tommy0124
3
210
Snowflake Intelligence × Document AIで“使いにくいデータ”を“使えるデータ”に
kevinrobot34
1
120
Bedrock で検索エージェントを再現しようとした話
ny7760
2
120
20250912_RPALT_データを集める→とっ散らかる問題_Obsidian紹介
ratsbane666
0
100
人工衛星のファームウェアをRustで書く理由
koba789
15
8.3k
Oracle Cloud Infrastructure IaaS 新機能アップデート 2025/06 - 2025/08
oracle4engineer
PRO
0
110
20250913_JAWS_sysad_kobe
takuyay0ne
2
250
20250905_MeetUp_Ito-san_s_presentation.pdf
magicpod
1
100
TS-S205_昨年対比2倍以上の機能追加を実現するデータ基盤プロジェクトでのAI活用について
kaz3284
1
230
要件定義・デザインフェーズでもAIを活用して、コミュニケーションの密度を高める
kazukihayase
0
120
Featured
See All Featured
Save Time (by Creating Custom Rails Generators)
garrettdimon
PRO
32
1.6k
Building Flexible Design Systems
yeseniaperezcruz
329
39k
GitHub's CSS Performance
jonrohan
1032
460k
Being A Developer After 40
akosma
90
590k
Improving Core Web Vitals using Speculation Rules API
sergeychernyshev
18
1.1k
The Power of CSS Pseudo Elements
geoffreycrofte
77
6k
Site-Speed That Sticks
csswizardry
10
820
Refactoring Trust on Your Teams (GOTO; Chicago 2020)
rmw
35
3.1k
For a Future-Friendly Web
brad_frost
180
9.9k
How GitHub (no longer) Works
holman
315
140k
Learning to Love Humans: Emotional Interface Design
aarron
273
40k
StorybookのUI Testing Handbookを読んだ
zakiyama
31
6.1k
Transcript
Linuxのプロセススケジューラのしくみ その2: タイムスライスの計算方法 Aug 30th, 2020 Satoru Takeuchi Twitter: satoru_takeuchi,
EnSatoru 1
おさらい • その17 Linuxのプロセススケジューラの仕組み その1 時分割によるスケジューリング ◦ 実行可能プロセス数 nが増えるとタイムスライスが短くなったような …?
2 0 1 0 1 2 0 1 2 3
• タイムスライス=レイテンシターゲット/実行可能プロセス数n ◦ レイテンシターゲットとして決めた時間に一回 CPU時間を得られる タイムスライスの計算方法 3 n=2 n=3 n=4
時間 t0 t1 t0 t1 t0 t1 t2 t0 t1 t2 t0 t1 t2 t3 t0 t1 t2 t3 レイテンシターゲット レイテンシターゲット
レイテンシターゲットの値 • sysctlパラメタによって読み書き可能 ◦ kernel/sched_latency_ns [ナノ秒] • パラメタチューニングの基準 ◦ 応答性能重視(主にデスクトップ環境
): 値を小さくする ◦ スループット重視(主にサーバ環境): 値を大きくする • CPU数が変わると変化する ◦ レイテンシターゲット =1CPUのときのレイテンシターゲット ×(1+log2(ncpus) ▪ CPU数が多いとサーバ用途が多いだろうという推測 ▪ CPU数が多いとプロセス起床時に他の CPU上ですぐ動ける可能性が高い 4
タイムスライスの最低保証値 • 例: レイテンシターゲットが10msでnproc=1000 ◦ 各タスクのタイムスライスはたったの 10us? • タイムスライスの最低保証値がある ◦
目的: コンテキストスイッチのコストを増やしすぎないようにするため ◦ Sysctlのkernel.sched_min_granularity_ns 5
nice値の意味 • niceの変化によってタイムスライスの比率が変わる ◦ nice値が小さい(高優先度): 比率が上がる ◦ nice値が大きい(低優先度): 比率が下がる •
レイテンシターゲットは変わらない 6 p0 p1 p0 p1 p0 p1 時間 p0 p1 p0のnice値 > p1のnice値 p0のnice値 == p1のnice値 p0のnice値 < p1のnice値 p0 p1 p0 p1 レイテンシターゲット レイテンシターゲット
実験 • 目的 ◦ タイムスライスにnice値が与える影響を確認 • 実験プログラムnice.cの概要 1. 1つのCPU上で無限ループするプロセス p0とp1を同時に100ミリ秒間動かす
▪ 第一引数としてp1のnice値を与える: -10 or 0(デフォルト値) or 10 2. 2つのプロセスはCPUを1ミリ秒使うごとに次の情報を記録する ▪ プロセスの番号 ▪ プロセス開始時からの経過時間を記録 3. 100ミリ秒経過後に2つのプロセスの記録を出力 7
結果 8 p0 p1 p0 p1 p0 p1
まとめ • タイムスライスは実行可能プロセス数が増えるほど短くなる ◦ レイテンシターゲットに定めた期間に一回 CPU時間を得られる ◦ コンテキストスイッチコストが高くなりすぎないように最低保証値がある • CPU数が増えるとレイテンシターゲットの値が増える
• nice値による優先度の高低によってタイムスライスの比率が上下する 9