Upgrade to Pro
— share decks privately, control downloads, hide ads and more …
Speaker Deck
Features
Speaker Deck
PRO
Sign in
Sign up for free
Search
Search
小さな疑問を大事にすると成長に繋がる
Search
Satoru Takeuchi
PRO
June 09, 2024
Technology
3
180
小さな疑問を大事にすると成長に繋がる
以下動画のテキストです
https://youtu.be/g0OOIDM23oI
Satoru Takeuchi
PRO
June 09, 2024
Tweet
Share
More Decks by Satoru Takeuchi
See All by Satoru Takeuchi
Rook: Intro and Deep Dive With Ceph
sat
PRO
1
110
会社員しながら本を書いてきた知見の共有
sat
PRO
3
790
デバイスにアクセスするデバイスファイル
sat
PRO
1
37
ファイルシステムのデータを ブロックデバイスへの操作で変更
sat
PRO
1
31
デバイスドライバ
sat
PRO
0
49
マルチスレッドの実現方法 ~カーネルスレッドとユーザスレッド~
sat
PRO
2
120
共有メモリ
sat
PRO
3
69
マルチスレッドプログラム
sat
PRO
3
58
Linuxのブートプロセス initramfs編
sat
PRO
2
86
Other Decks in Technology
See All in Technology
DBのスキルで生き残る技術 - AI時代におけるテーブル設計の勘所
soudai
PRO
3
280
Backlog ユーザー棚卸しRTA、多分これが一番早いと思います
__allllllllez__
1
130
作曲家がボカロを使うようにPdMはAIを使え
itotaxi
0
430
マネジメントって難しい、けどおもしろい / Management is tough, but fun! #em_findy
ar_tama
5
730
asken AI勉強会(Android)
tadashi_sato
0
180
Yamla: Rustでつくるリアルタイム性を追求した機械学習基盤 / Yamla: A Rust-Based Machine Learning Platform Pursuing Real-Time Capabilities
lycorptech_jp
PRO
4
230
Connect 100+を支える技術
kanyamaguc
0
190
「良さそう」と「とても良い」の間には 「良さそうだがホンマか」がたくさんある / 2025.07.01 LLM品質Night
smiyawaki0820
1
500
タイミーのデータモデリング事例と今後のチャレンジ
ttccddtoki
6
2.3k
生成AIで小説を書くためにプロンプトの制約や原則について学ぶ / prompt-engineering-for-ai-fiction
nwiizo
6
4.1k
Model Mondays S2E03: SLMs & Reasoning
nitya
0
340
B2C&B2B&社内向けサービスを抱える開発組織におけるサービス価値を最大化するイニシアチブ管理
belongadmin
1
5.7k
Featured
See All Featured
Gamification - CAS2011
davidbonilla
81
5.3k
Navigating Team Friction
lara
187
15k
Adopting Sorbet at Scale
ufuk
77
9.4k
[RailsConf 2023] Rails as a piece of cake
palkan
55
5.6k
For a Future-Friendly Web
brad_frost
179
9.8k
Six Lessons from altMBA
skipperchong
28
3.9k
KATA
mclloyd
30
14k
Why You Should Never Use an ORM
jnunemaker
PRO
58
9.4k
Testing 201, or: Great Expectations
jmmastey
42
7.6k
Fashionably flexible responsive web design (full day workshop)
malarkey
407
66k
Building Adaptive Systems
keathley
43
2.6k
The Psychology of Web Performance [Beyond Tellerrand 2023]
tammyeverts
48
2.9k
Transcript
小さな疑問を大事にすると 成長に繋がる Jun. 9th, 2024 Satoru Takeuchi X: satoru_takeuchi 1
はじめに • はなすこと ◦ ソフトウェア技術者として成長する考え方の一つを紹介 ◦ 参考書をじっくり見る、大きなソフトウェアを作るといった大がかりなことではない ◦ 日々のちょっとしたことが後で役立つことを過去の経験をもとに紹介 •
主なターゲット ◦ 技術者として成長したいが、うまくいかないと思っている人 ◦ それでいて、なんとなく日々を過ごしてしまっている人 2
基本的な考え方 • やること ◦ 日々の小さな疑問が生まれたときに、そのままにせず調べる • 効果 ◦ 調べたこと自体で知識が増える ◦
達成感が得られる ◦ その後思わぬところで役立つこともある 3
概念図 もとの状態 4 既存知識
概念図 もとの状態 好奇心が湧く 5 既存知識 ここがわからん… 既存知識
概念図 もとの状態 調べて理解 好奇心が湧く 6 既存知識 新たな 知識 ここがわからん… 既存知識
既存知識 完全理解!
概念図 もとの状態 調べて理解 好奇心が湧く 別の時に… 7 既存知識 新たな 知識 ここがわからん…
既存知識 既存知識 完全理解! 新たな 知識 既存知識 ここがわからん… 別の機会に 得た知識
概念図 もとの状態 調べて理解 好奇心が湧く 別の時に… 8 役立った! 既存知識 新たな 知識
ここがわからん… 既存知識 既存知識 完全理解! 新たな 知識 既存知識 ここがわからん… 新たな 知識 既存知識 新たな知識 別の機会に 得た知識 完全理解!
実例 • 疑問 ◦ lsblkというブロックデバイスをリストするコマンドの仕組みが気になった • 調査結果 ◦ lsblkの仕組みが明らかになった •
数か月後 ◦ lsblkの実行結果を利用する別コマンドの挙動で困ることがあった ◦ 過去の知見を生かして対処できた 9
疑問に至るまでの流れ • 背景 ◦ 自分は業務でRookというCeph(分散ストレージ)を管理するツールのメンテナをしている ▪ https://github.com/rook/rook ◦ RookはCephが使うOSDというデータ構造をブロックデバイス上に作る ▪
1. lsblkコマンドを実行してデバイスのタイプ (e.g. disk、part)を調べる ▪ 2. Cephがサポートしているタイプであれば、 OSDを作る • 疑問 ◦ lsblkコマンドはTYPEフィールドの値をどこから持ってきているのか ? 10
調査した 1. 気になるから調べてみよう(ここ重要) 2. ソース見ればわかるやろ a. 見るべきところは数十行なので 30分くらいで読み終えられた 3. 完全理解してスッキリ
• 📝 lsblkの挙動を詳しく説明している過去動画 ◦ lsblkのtypeフィールドのしくみ ◦ https://youtu.be/x_QSV1tM3qY 11
それから数か月後… • ブロックデバイスのI/O障害をエミュレーションするという発表をした ◦ これは仕事じゃなくて趣味 ◦ blkidのソースを見たことは忘れていた ◦ 📝 発表資料
▪ device mapperによるディスクI/O障害のエミュレーション ▪ https://speakerdeck.com/sat/ozhang-hai-noemiyuresiyon • 発表後にLTをしたくなった ◦ I/O障害のエミューレーションが実際に役に立つことを紹介したい ! ▪ 発表は機能紹介だけに留まっていて、実例が無かった ◦ イベント中にライブで LT資料を作ることにした ▪ Cephのデータの一部を壊しても、元の状態に復旧できることを示そうとした 12
問題発生 • おさらい: RookはCephが使うOSDというデータ構造をブロックデバイス上に作る 1. lsblkコマンドを実行してデバイスのタイプ(e.g. ディスク、パーティション)を得る 2. Cephがサポートしているタイプであれば、OSDを作る •
I/O障害エミュレーション機能を使うと、ブロックデバイスのタイプが、Cephによって サポートされないものになってしまう 13
解決策 • デバイスマッパー設定時にパラメタをうまく設定すると、I/O障害を発生させる対象 のブロックデバイスのタイプを任意のものにできる ◦ lsblkのソースを読んでなければわからない実装依存のハック ◦ 実運用ならやらないが、今回はサンプルのデモなので OKと判断 •
パラメタを設定してブロックデバイスのタイプをCephがサポートするものに見せか けたところ、うまく動いた ◦ スカッとした&「あのときのことがこんな形で役に立つとは」と感動 • 📝 技術的な話 ◦ 分散ストレージはすごいぞ ◦ https://speakerdeck.com/sat/fen-san-sutorezihasugoizo-4af53638-99ea-416b-9841-66ccbc7e4 5cd 14
まとめ • 日々生まれる小さな疑問を放置せずに調べてみることで新しいことがわかる ◦ 疑問は小さければ小さいほど楽 ◦ やってるうちに一筋縄ではいかないとわかったら中断するのも手 • これを繰り返せば技術者としての引き出しの数はどんどん増えていく ◦
調べた当時は小さなことがわかるだけでも、将来につながる • 書籍などで体系的に学ぶのが苦手な人にはとくにお勧め • 注意 ◦ 常に成長し続けなくてはならないわけではない ◦ ずっと成長成長言ってると疲弊してしまうのでほどほどに 15