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第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷/IPSJ-CE173-07

 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷/IPSJ-CE173-07

NAKAZONO Nagayoshi

February 05, 2024
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  1. 第1期から第4期までの 教育振興基本計画における 情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 麗澤大学 国際学部 NAKAZONO Nagayoshi 中園 長新 2024-02-03

    (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 本研究は、JSPS科研費JP21K02864の助成を受けたものである
  2. 教育振興基本計画 教育基本法第17条に規定 第1項 国(政府)による策定(義務) 第2項 地方公共団体による策定(努力義務) 日本における教育振興に関する施策の 総合的・計画的な推進を図り、国全体の教育の方向性を 決定づける存在 閣議決定

    = 文科省だけでなくあらゆる省庁に関わる 国(政府)による計画は、2008(H20)年以降5年おきに策定 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 3 画像出典:文部科学省「教育振興基本計画」ウェブサイト https://www.mext.go.jp/a_menu/keikaku/
  3. 教育振興基本計画(第1~4期) 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 4 期 策定日 対象期間(年度) 1

    2008(H20).07.01 2008(H20)~2012(H24) 2 2013(H25).06.14 2013(H25)~2017(H29) 3 2018(H30).06.15 2018(H30)~2022(R04) 4 2023(R05).06.16 2023(R05)~2027(R09)
  4. 研究の目的と意義 教育振興基本計画の中で情報教育やICT利活用が どのように扱われてきたのかを調査する 情報教育やICT利活用が国としての教育施策の中で どのように位置づけられているのかを把握することができ、 今後の情報教育やICT利活用の方向性を考察する一助に なることが期待される 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス

    第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 5 ※ 本研究は、筆者による下記の既発表(第1~3期対象)を元に、第4期の調査を追加し、 さらに深い検討・考察を加えたものである 中園長新(2023)「教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方」 『情報処理学会第85回全国大会講演論文集』,pp. 4-381~4-382.
  5. 第1期計画 (2008~2012) 計画策定の背景 少子高齢化、高度情報化、国際化などが急速に進む中で、(中略)様々な課題が生じている (p.2) 情報教育:情報モラルへの言及 青少年を有害環境から守るための取組の推進(情報モラル教育) (p.16) 児童生徒の発達段階に応じた情報活用能力の育成、情報モラル教育の充実 (p.21)

    ICT利活用:学習者よりも学校・教員側の環境整備に重点 質の高い教育を支える環境を整備する(学校における情報化の推進) (p.34) 学校の情報化の充実(校内ICT環境の整備、教員のICT指導力の向上、ICTの教育活用、 校務の情報化、学校CIO) (p.35) ICT環境整備が教育の質保証を目指していることも明記 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 7
  6. 第2期計画 (2013~2017) 1/2 計画策定の背景 グローバル化が進行する産業社会においては、英語や情報活用能力も不可欠なものと なりつつある (p.19) 情報教育:基本施策としての位置づけ 新学習指導要領の着実な実施とフォローアップ等(言語活動、理数教育、外国語教育、 情報教育等の充実)

    (p.37) ただし、基本的方向性や基本施策の見出し(目次の項目)としては 情報教育やICT利活用を明示する語句は登場せず 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 8
  7. 第2期計画 (2013~2017) 2/2 ICT利活用:社会変化に対応した新しい学びを支える要素 激動の社会を生き抜く子どもたちには、自ら考え、また、学校内外の多様な人々と協働しながら 主体的に課題を解決し、価値を創造する力が求められており、このような力を育むためには、 ICTの活用なども図りつつ、協働型・双方向型の新しい学びへ移行していくことが求められて いる。 (p.32) ICT利活用:特別支援教育や高等教育を含む、様々な教育の

    質向上を支えていく存在 「円滑な就学手続の実現及び障害のある子どもに対する合理的配慮の基礎となる 環境整備等」(p.43) 「学生の主体的な学びの確立に向けた大学教育の質的転換」(p.51) 「良好で質の高い学びを実現する教育環境の整備」(p. 71) 等の具体策としてICT利活用が明示される 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 9
  8. 10 第3期計画 (2018~2022) 1/4 計画策定の背景 子供を取り巻く状況については、スマートフォンをはじめとした様々なインターネット接続機器 などの普及に伴い、情報通信技術(ICT)を利用する時間は増加傾向にある一方、授業に おいてコンピューターを使っている生徒の割合はOECD加盟国で最も低い水準にある。 また、情報化が進展し、あらゆる分野の多様な情報に触れることが容易になる一方で、 知覚した情報の意味を吟味したり、文章の構造や内容を的確にとらえたりしながら読み解く

    能力に課題が生じているとの指摘もある。また、子供がSNS(ソーシャルネットワーキング サービス)を利用した犯罪に巻き込まれたり、意図せず犯罪に加担したりしてしまうなど、 子供の安全が脅かされる事態が生じている。 (p.9) 数理・データサイエンス教育: AI・IoT・ビッグデータ等の産業構造改革を促す情報技術等を 基盤とした人材育成が求められる中で、重要性・必要性は分野を超えて高まっている (p.12) 情報がネガ・ポジの両面で大きな影響を与えていることを意識 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷
  9. 第3期計画 (2018~2022) 2/4 「目標」における言及 第3期計画は教育政策の「目標」を21個整理 目標(17) ICT利活用のための基盤の整備 初等中等教育段階について、①情報活用能力(必要な情報を収集・判断・表現・処理・創造 し、受け手の状況などを踏まえて発信・伝達できる能力(ICTの基本的な操作スキルを含 む)や、情報の科学的理解、情報社会に参画する態度)の育成、②主体的・対話的で深い学

    びの視点からの授業改善に向けた各教科等の指導におけるICT活用の促進、③校務の ICT化による教職員の業務負担軽減及び教育の質の向上 、④それらを実現するための基 盤となる学校のICT環境整備の促進に取り組む。(略) 高等教育段階について、教育の質向上の観点からICTの利活用を積極的に推進する。 また、ICTの活用による生涯を通じた学習機会の提供を推進する。 (p.84) 実態としては情報活用能力の育成(=情報教育の推進)も含む 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 11
  10. 第3期計画 (2018~2022) 3/4 情報教育:青少年の健全育成、生活習慣確立の支援 情報モラル教育推進への言及が多い 学習指導要領に基づき情報モラル教育を推進するとともに、スマートフォンをはじめとしたさまざまな インターネット機器の普及への対応も含め、フィルタリングやインターネット利用のルールに関する 普及啓発活動を地域、民間団体等との連携により実施する。 (p.51) 情報教育:プログラミング教育

    初等中等教育におけるプログラミング的思考を含む情報活用能力の育成 (p.64) ICT利活用:「教育政策推進の基盤」の一つ 教師及び児童生徒が安心して学校でICTを活用できる環境の整備を促進する (p.85) 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 12
  11. 第4期計画 (2023~2027) 3/5 情報教育に関する記述 「目標11」の説明における記述 学習指導要領において学習の基盤となる資質・能力として位置付けられた情報活用能力 (情報モラルを含む。以下同じ。)育成のために、GIGAスクール構想によって整備された端末の 利活用の日常化を促進するとともに、 EdTechをはじめとした教育産業の力も活用しつつ、優れた 事例の創出を図る。その際、特に、情報技術を活用した問題の発見・解決の方法や、情報化が

    社会の中で果たす役割や影響、情報技術に関する制度・マナー、個人が果たす役割や責任、情報の 真偽を吟味する力、複数の情報を結びつけて新たな意味を見いだす力、問題の発見・解決等に 向けて情報技術を適切かつ効果的に活用する力、情報社会に主体的に参画し、その発展に寄与 しようとする態度等を身に付けさせることを重視するとともに、動画教材などコンテンツの充実を図り、 学校だけではなく、自分自身でも学ぶことができる環境を構築する。 (p.66) 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 16
  12. 第4期計画 (2023~2027) 4/5 ICT利活用に関する記述 「目標12」の説明における記述 GIGAスクール構想について、次のフェーズに向けて周辺環境整備を含め、 ICTの利活用を 日常化させ、人と人の触れ合いの重要性や発達段階、個人情報保護や健康管理等に留意しながら、 誰一人取り残されない教育の一層の推進や情報活用能力の育成など学びの変革、校務改善に つなげるため、運営支援センターの全国的な設置促進・機能強化等徹底的な伴走支援の強化に

    より、家庭環境や利活用状況・指導力の格差解消、好事例の創出・展開を本格的に進める。 各地方公共団体による維持・更新に係る持続的な利活用計画の状況を検証しつつ、国策として 推進するGIGAスクール構想の1人1台端末について、公教育の必須ツールとして、更新を着実に 進める。 (p.71) 情報教育やICT利活用が多数の学びの一つとして位置づけられる だけでなく,学び全体を支えるためにさまざまな学びと 関連し合う重要な要素として意識されている 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 17
  13. 第4期計画 (2023~2027) 5/5 持続可能性、ウェルビーイング デジタルの特性を生かした障害のある子供や外国人児童生徒等のアクセシビリティの向上も 期待される。ICTを活用した新たな取組の実践を通じて、一人一人の状況やニーズに応じた より良い教育環境を目指していく必要がある。 (p.18) 一斉学習や個別学習、協働学習など様々な学習場面においてICTを活用することや、目的に応じ 遠隔授業やオンデマンドの動画教材を取り入れるなど、子供の主体的な学びを支援する伴走者

    としての教師の役割を果たしつつ、リアルとデジタルを融合した授業づくりに取り組む (p.23) 社会全体で子供たちの生活リズムを整えることの重要性を共有するため、子供が情報機器に接する 機会の拡大による生活時間の変化等の状況等も踏まえつつ(略) (p.45) → 情報機器に接することによって生活リズムが乱れる危険性があることを暗示 ICTの活用も含め、障害のある児童生徒一人一人の教育的ニーズに応じた教科書、教材、 支援機器等の活用を促進 (p. 56) → ICT利活用が病気や障害を抱える子どもにとってプラスに作用することへの期待 2024-02-03 (Sat.) IPSJ-CE173@大阪大学豊中キャンパス 第1期から第4期までの教育振興基本計画における情報教育・ICT利活用の扱われ方の変遷 18