Upgrade to Pro — share decks privately, control downloads, hide ads and more …

キャリコンブリーフセラピー研修「MRIモデル」

 キャリコンブリーフセラピー研修「MRIモデル」

2021年に実施する「ビリーフセラピーでキャリコンの支援力アップ(基礎編)」の資料
第1回MRI(悪循環)モデル
Youtube: https://youtu.be/Q_Youtube:

PPi, LLC

July 23, 2021
Tweet

More Decks by PPi, LLC

Other Decks in Business

Transcript

  1. ブリーフセラピーで
    キャリコンの支援力アップ!
    (基礎編)
    第1回 MRI(悪循環)モデル
    講師 元木 敬太
    合同会社実践サイコロジー研究所 代表
    医学博士、キャリアコンサルタント、公認心理師
    [email protected]

    View Slide

  2. 2
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    全7回の基礎コース
    7月24日(土) MRI(悪循環)モデル
    悪循環モデルの紹介と
    コミュニケーションの拘束
    8月7日(土) 解決志向モデル
    解決志向アプローチの概要と
    核となるポイント
    8月21日(土)
    歴史と基礎理論
    (システム論と社会構成主義)
    ブリーフセラピーの歴史と、システム論、
    社会構成主義の考え方の解説
    9月4日(土) ミラクルクエスチョン ミラクルクエッションの効果機序とコツ
    9月18日(土) 逆説的介入 逆説的介入の効果機序とコツ
    10月2日(土) リフレーミング リフレーミングの解説とコツ
    10月16日(土) 実践応用 ブリーフセラピーの実事例への応用

    View Slide

  3. 3
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    自己紹介
    元木敬太
    • 合同会社実践サイコロジー研究所・代表
    • 修士(心理学)・博士(医学)
    • キャリアコンサルタント、公認心理師、臨床心理士
    • 2010年より心理職として心理カウンセリングの実践を行っており、
    2017年にキャリアコンサルタントを取得。学校や産業領域で、
    メンタルヘルス、コーチング、キャリア開発に関連した実践と研究を行っている。
    • 共著書・訳書:
    コーチング心理学概論(ナカニシヤ出版)
    ポジティブ心理学コーチングの実践(金剛出版)

    View Slide

  4. 4
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    本日の内容
    1. ブリーフセラピーについて
    2. MRIモデル
    3. コミュニケーションによる拘束と悪循環
    4. 演習とディスカッション

    View Slide

  5. 5
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    ブリーフセラピー
    システム思考で短期(効率的)に問題を解決することを目指す心理支援法
    • 精神分析、行動療法、人間性心理学に対して、家族療法から発展
    • メンタル不調の問題を扱うのも得意だが、それだけではない
    • 組織開発やコーチングに応用されている
    • 2つの方向性
    ソリューション(解決像)の構築を目指す
    問題を維持している悪循環を解消する

    View Slide

  6. 6
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    ブリーフセラピー
    システム思考で短期(効率的)に問題を解決することを目指す心理支援法
    • 精神分析、行動療法、人間性心理学に対して、家族療法から発展
    • メンタル不調の問題を扱うのも得意だが、それだけではない
    • 組織開発やコーチングに応用されている
    • 2つの方向性
    ソリューション(解決像)の構築を目指す
    問題を維持している悪循環を解消する
    本日のテーマ!!

    View Slide

  7. 7
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    MRIモデル
    • MRI(Mental Research Institute メンタル研究所)
    アメリカ西海岸パロ・アルト
    1967年にブリーフ・セラピー・センターを設立
    • MRIモデル
    グレゴリー・ベイトソンのサイバネティクスやシステム論を踏まえたコミュニケーション
    理論に基づく
    個人内ではなく、個人間、集団内・集団間の関係性に目を向ける
    コミュニケーション派家族療法とも呼ばれる
    問題は悪循環により維持され、それを解くことで解消されると考える

    View Slide

  8. 8
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    関係性の視点とコミュニケーションによる拘束
    • 「人と人との間では必然的にコミュニケーションは生じる」(Weakland, 1967)
    • 「コミュニケーションの特徴」(「よくわかる!短期療法ガイドブック」より)
    特徴 具体例(2人での会話、一方が「千円貸して」と言う)
    すべての行動がコミュニケーション 返事をしないという応答もコミュニケーション。何かしらの機能を持つ
    コミュニケーションには命令的機能がある
    返事をしないことは、「もうしゃべるな」、「もっと詳しく話せ」等の命令を
    伝えうる
    コミュニケーションは人の行動を(決定は
    しないが)制限(拘束)する
    返事をしないことは、相手の次の態度を制限する。「やったー!ありがとう」
    や「何で貸してくれないんだよ!(怒)」とはなりにくい
    コミュニケーションは相称的か、相補的
    互いに沈黙が続くようなら相称的、沈黙に対して、「返事をしないってこと
    はいいんですね!千円貸して」と話すのは相補的
    コミュニケーションには論理階型(次元)
    がある
    返事をしないことは、言語情報としては何も伝えない。一方で、高次の
    言外の意味、メッセージとして、関係性を規定する情報が発せられている。
    例えば、「自分が上位の立場で『支配―服従』の関係にある」とか

    View Slide

  9. 9
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    実践への応用:「問題-偽解決」循環(1)
    • 問題があると人はそれを解消しようとする
    • 問題自体も特定のコミュニケーションの
    相互拘束によって生じている
    • さらに、問題はその問題を解こうとする
    コミュニケーションによって維持されている
    • 面接では、まず、何で困っていてどうなりたいかを
    明確にし、次に、「問題を維持している悪循環」を
    特定する
    問題
    偽解決
    (解決努力)
    主体性が無く、
    すぐに質問する
    無視
    (自分で考えろ)

    View Slide

  10. 10
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    実践への応用:「問題-偽解決」循環(2)
    • 悪循環が問題を維持し、目標達成を妨げている
    可能性について共通認識を築く
    これまでの対応はうまくいってそうですか?
    無視をすることで、かえって不安になって色々と聞いて
    くるってことはなさそうですか?
    • 介入・課題を設定する
    お話をうかがって、この悪循環を解くのが目標達成の
    ために有効ではないかと思います。何か、無視する代
    わりにできることはありませんか?試していないことで
    できれば、面白いことで、かつ、これまでと正反対のこ
    との方が、悪循環を解く効果は高いと言われています。
    例えば、主体性を無くすほど、色々細かく指示するとか
    問題
    偽解決
    (解決努力)
    介入・課題
    問題の解消
    主体性が無く、
    すぐに質問する
    無視
    (自分で考えろ)

    View Slide

  11. 11
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    コミュニケーション分析と悪循環の特定のコツ
    (「コミュニケーションの特徴」の応用)
    • 問題に対してどう対処しているか、それがうまくいっているか質問する
    • 対話だけでなく行為にも着目する
    • 相手のコミュニケーションの意図を互いにどのように受け取っているか確認する
    • 関係性(相補的、相称的)や相互拘束の内容を確認する
    • 論理階型(コミュニケーションの内容と言外のメッセージ)を整理する。特に、内容の次元
    と関係性の次元に矛盾がないか(例:自由にやりな。ただし、良いものを作ってね)
    • Co-Cl間、Cl-他者間で、メタ・コミュニケーション(コミュニケーションについての会話)を
    行うことが、悪循環を解くきっかけになることがある

    View Slide

  12. 12
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    演習【40分間】
    • クライアント役1名、カウンセラー役1名もしくは2名を決めます。【5分】
    • 次にあげる事例について、各グループ1組がロールプレイを行ってください。【15分】
    • ロールプレイを終えた後、グループのメンバー全員(クライアント役を除く)で次の点につ
    いて話し合ってください。【10分】
    どんな悪循環が考えられるか(1つとは限りません)
    どの悪循環に、どのような方法で介入するのが良さそうか(考えられる課題は?)
    • クライアント役が話し合いの結果を踏まえて、他に考えられる悪循環や課題について捕捉
    します。【3分】
    • 今日の研修全体を通した振り返り(疑問点があれば整理する)【7分】

    View Slide

  13. 13
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    課題事例
    30歳女性、結婚(嫁入り)の予定で転職すべきかどうか悩んでいる。新卒でマーケティング調査会社、その後、不動産関
    係の営業事務に転職し、今年で4年目。婚約者(37歳男性、中堅のメーカー技術職)は遠方に住んでおり、婚約者の通勤
    範囲内で、実家からも遠くない場所に新居を構える予定。そうなると、今の仕事を続けるには、片道1時間半の通勤となる。
    しばらくは可能だろうが、今後、出産・育児を考えると、この機に転職した方がいいのではないかと思う。また、婚約者やそ
    の家族は、専業主婦になることを望んでおり、この点についても悩み。婚約者が仕事を続けることについては、収入の面か
    ら考えて、お互いに話し合って決めたこと。せっかくの新婚生活で、通勤時間がとられてしまい、家事や夫婦の時間が少な
    くなるのも気になる。残業があると、帰りは22時近くなるだろう。キャリアについては、とりあえず事務職でとは考えているが、
    現在の職場のように、業績についてピリピリするような業種でない方が希望。昇進して管理職になることを望んでいるわけ
    ではないが、いつでも自立して生活できる程度には就労能力を維持したい。その為、すぐに専業主婦になって、子育てを終
    えた後に職場復帰できなくなるようなリスクは避けたい。産休・育休が取れることが理想。今の職場では産休も育休も取れ
    そう。子供は自分でも欲しいと思う。転職について、婚約者は、好きにしていいというが、本心では、産休・育休のために今
    の職場に残るよりは、仕事は辞めて、少なくともしばらくは家庭に入ることを望んでいるよう。婚約者の家族との関係は悪い
    わけではないが、転職したとしても、仕事を続けると、関係が良くなる方向には行かなそう。転職先の候補はすでにあるが、
    そこについては、まだ婚約者に話せていない。話せば応援してくれると思うが、婚約者の家族との関係もあり、結局、妊娠な
    ど、ことあるごとに、仕事を辞めることについて悩むのではないかと思い、決断できていない。

    View Slide

  14. 14
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    悪循環と介入の例
    • 考え方の相違⇔腹の探り合い、言葉に出さない
    • 意見の相違⇔気を使う、他者に合わせる
    介入:自分の好きなようにやる
    • 夫の母が理解しない⇔言わない
    • 困っている⇔婚約者に言わない

    View Slide

  15. 15
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    まとめ
    • MRIモデルでは悪循環を同定し、それを解くことを目指す
    • 悪循環が問題を維持している
    • 人には問題を解こうとする傾向があり、それが悪循環を引き起こす
    • 問題や悪循環は、コミュニケーションの相互拘束により生じている
    • メタ・コミュニケーション(コミュニケーションについての会話)は視野を広げ、拘束への
    気づきを高める
    • ユーモアを含む逆説的な介入は、効果的に悪循環を解く可能性が高い

    View Slide

  16. 16
    Practical Psychology Institute, LLC ® 2021 [email protected]
    引用文献
    • Weakland (1967) Communication and behavior: An introduction. American
    Behavioral Scientist 10, 1-4.

    View Slide

  17. お疲れさまでした!次回もお楽しみに!

    View Slide