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探究学習での発表題目の設定にみる情報デザインの現状分析

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 探究学習での発表題目の設定にみる情報デザインの現状分析

JAEIS2026にて発表。

探究学習の成果発表として行われる発表会における各発表の題目は、発表内容を端的に表現する要約の一種であり、情報デザインの文脈では抽象化の活動に該当すると考えられる。本稿では、高校の発表会における発表題目について、副題の使用、題目の字数・単語数や冗長表現の有無などを分析した。その結果、抽象化の題目設定への転移に課題があることが示唆された。

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saireya

July 09, 2026

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Transcript

  1. 背景 情報Iで学ぶ「情報デザイン」の力はいつ活きるか? • スライド・ポスターなど視覚的な資料の作成 • 総合型選抜の試験で行う面接・プレゼン 本発表では、探究学習での題目設定に着目 • 探究学習は教科の学習内容を土台として成立 •

    各教科の学びを「統合的に発揮」する場といえる • 「ことば」は、最も扱いやすい情報デザインの対象 (操作・処理が容易で、評価もしやすい) • 題目の設計は、情報デザインでの抽象化に該当 (内容の本筋以外を捨象し、短い表現に収める) 2
  2. 目的 高校生が行う情報デザインの現状と課題を考察 ⇒ 探究学習の発表会における発表題目を分析 アプローチ: 1. 「題目」を定義 2. 題目が満たすべき性質を検討 3.

    題目の長さ・語数・簡潔さ・副題の使用状況を 定量的に分析 (2025年度のデータを使用) • SSH指定された高校3校 • 全国高等学校情報教育研究会(全高情研)大会 • 日本情報科教育学会(JAEIS)大会 3
  3. 「題目」の定義 題目(title, subject)は主題と副題からなる • 主題: 題目に必ず含まれる部分 • 副題: 題目に含まれることがある部分 •

    主題の後にある • 「:」「――」「~」「 (空白)」などの区切り記号で区切 られた後の部分 例: 「ネコの生存戦略: にゃんくるにゃいネコの生態」 主題 副題 (区切り記号の「:」以前が主題、「:」以後が副題) 4 ※この定義は本稿独自の定義である。 ※区切り記号が区切り以外の意味で用いられる場合など、例外的な場合には、個別に判断する。
  4. 題目が満たすべき性質 1. 主題・副題は40字程度までとする。 2. 主題・副題はできるだけ簡潔に記すものとする。 3. 主題・副題は、発表の要点を表現する複数の単 語(キーワード)を含むものとする。 4. 主題・副題に独自の固有名詞を使う場合は、主

    題・副題の残りの部分からその固有名詞の表す 内容を推測できるようにする。 5. 副題は、主題で発表内容を表現しきれないときに 使う。つまり、題目の合計字数が40字程度を超 える場合にのみ、副題を使う。 6. 副題は、主題を具体的に補足する記述とする。 5 ※この性質は筆者が独自に検討したものである。 ※題目が満たすべき内容面の性質については、今回は検討しないものとする。
  5. 方法 2025年度の発表題目を比較: 1. 高校生が作る発表題目 • 探究学習の成果発表会における発表題目 • 中四国地域にあるSSH採択校の公立高校3校 • 対象校の偏差値は50代後半~60代後半

    • 対象校は教育関係者が参加できる発表会を実施し た学校から選定 (ランダムな選定ではない) 2. 教育実践者が作る発表題目 • 全国高等学校情報教育研究会(全高情研)の大会 • 発表者は、授業実践に積極的な高校教員が多い 3. 教育研究者が作る発表題目 • 日本情報科教育学会(JAEIS)の大会 • 発表者は、教育研究に積極的な大学教員が多い 7 (参考) 全国高等学校情報教育研究会 第18回大会: https://www.zenkojoken.jp/18chiba/ 日本情報科教育学会 第18回全国大会: https://jaeis-org.sakura.ne.jp/taikai/t25/
  6. 結果: 副題の使用 対象とした題目の数は下表の通り: • A高校・B高校は2年生のみ • C高校は1・2年生が同じ発表会でともに発表 • カッコ内は、副題を含む題目の数と、その比率 •

    副題の使用率: 𝐵 < 𝐴 < 𝐶1 < 全高情研 < JAEIS < 𝐶2 8 対象 1年生 2年生 A高校 96 (7, 7.3%) B高校 39 (0, 0.0%) C高校 91 (10, 11%) 88 (32, 36%) 全高情研 69 (11, 16%) JAEIS 38 (10, 26%)
  7. 結果: 題目の長さ(字数) 題目の字数の平均は下表の通り: • カッコ内は、主題のみの字数の平均 • 題目の長さ: 𝐵 ≤ 𝐴

    < 𝐶1 ≤ 𝐶2 < 全高情研 < JAEIS • 主題の長さ: 𝐶2 < 𝐴 ≤ 𝐵 < 𝐶1 < 全高情研 < JAEIS 9 対象 1年生 2年生 A高校 15.9 (15.1) B高校 15.5 (15.5) C高校 18.0 (16.6) 18.5 (13.6) 全高情研 27.6 (24.1) JAEIS 36.0 (30.9)
  8. 結果: 題目の長さ(語数) 11 語数 0 5 10 15 20 25

    30 35 40 ※形態素解析にはRakuten MA(https://rakuten-nlp.github.io/rakutenma/)を使用した。 手軽に使えるが、古く分解精度も良くないので、この結果は参考程度のものである。
  9. 結果: 題目の簡潔さ 冗長表現: その文言がなくても題目が成り立つ表現 • 例: 「について」「に関する研究」「の研究」「と は?」「は何か」 • カッコ内は、冗長表現の字数の比率

    • 冗長表現の比率: JAEIS ≤ 全高情研 < 𝐵 ≤ 𝐶2 < 𝐴 < 𝐶1 12 対象 1年生 2年生 A高校 74字 (4.8%) B高校 7字 (1.2%) C高校 100字 (6.1%) 23字 (1.4%) 全高情研 6字 (0.3%) JAEIS 0字 (0.0%)
  10. 結果: まとめ • 副題の使用率: 𝐵 < 𝐴 < 𝐶1 <

    実践者 < 研究者 < 𝐶2 • 題目の字数: 𝐵 ≤ 𝐴 < 𝐶1 ≤ 𝐶2 < 実践者 < 研究者 • 主題の字数: 𝐶2 < 𝐴 ≤ 𝐵 < 𝐶1 < 実践者 < 研究者 • 題目の語数: 𝐵 ≤ 𝐴 ≤ 𝐶2 ≤ 𝐶1 < 実践者 < 研究者 • 主題の語数: 𝐶2 < 𝐴 ≤ 𝐵 < 𝐶1 ≤ 実践者 < 研究者 • 冗長表現の比率: 研究者 ≤ 実践者 < 𝐵 ≤ 𝐶2 < 𝐴 < 𝐶1 13 ※「実践者」は全高情研、「研究者」はJAEISに対応する。 ※「<」はそれなりの差があること、「≤」は差はあるがあまり大きくないことを表す。
  11. 考察: 題目の長さ • 題目の字数: 𝐵 ≤ 𝐴 < 𝐶1 ≤

    𝐶2 < 実践者 < 研究者 • 主題の字数: 𝐶2 < 𝐴 ≤ 𝐵 < 𝐶1 < 実践者 < 研究者 • 情報科(情報デザイン)の専門家(実践者・研究 者)と比べて、高校生は題目の字数が少ない • 専門家のうちでも、実践者は研究者より題目の字 数が少ない ⇒ 高校生は題目の字数を有効活用できていない? ⇒ 高校教員も題目の設計を教えられていない? 14 ※「題目が長い=良い」かという論点もあるが、少なくとも内容に詳しくない他者に適切に情報を伝える 設計を指向する情報デザインの視点では、『山月記』よりも『転生したらトラだった件』の方がよいはず。
  12. 考察: 題目の長さと副題 • 副題の使用率: 𝐵 < 𝐴 < 𝐶1 <

    実践者 < 研究者 < 𝐶2 • 題目の字数: 𝐵 ≤ 𝐴 < 𝐶1 ≤ 𝐶2 < 実践者 < 研究者 • 主題の字数: 𝐶2 < 𝐴 ≤ 𝐵 < 𝐶1 < 実践者 < 研究者 • 題目の字数が多い専門家(実践者・研究者)は副 題の使用率も高いが、C高校の2年生(𝐶2 )は主題 の字数が少ないのに副題の使用率が高い • C高校は1年より2年で副題の使用率が高い ⇒ 適当でない副題の使い方を学んでしまっている? 15 ※B高校は副題の使用が0件だったので、副題を使わないようB高校の教員が指導しているか、 あるいは、そもそも「副題」というものの存在をB高校の生徒が知らない可能性がある。
  13. 考察: 題目の簡潔さ • 冗長表現の比率: 研究者 ≤ 実践者 < 𝐵 ≤

    𝐶2 < 𝐴 < 𝐶1 • 専門家(実践者・研究者)は冗長表現が少ない • C高校は1年より2年で冗長表現が少ない • A高校は冗長表現がやや多い ⇒ 学年(発達段階)が進むと簡潔になる? ⇒ どこかで学ばないと改善しない? 16