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20210626デザイン学会_LLの拡張

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September 10, 2025

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Kimura Atsunobu

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  1. 2 リビングラボが求められる社会背景:地方自治体の変化 地方自治体の運営は限界を迎える。持続可能な形で住民サービスを提供し続けるために、ICT 活用による「スマート自治体への転換」と、公共私(自治体・コミュニティ・民間企業等)の連 携による自治体の「プラットフォーム・ビルダー化」が必須 ※自治体戦略2040構想(総務省、2018) スマート自治体への転換 • 新たな自治体や国の施策(アプリケーション)の機能が最大限発 揮できるような自治体行政(OS)の大胆な書き換えが必要

    • 破壊的技術(AI・ロボティクス等)を使いこなす自治体へ 公共私によるくらしの維持(プラットフォームビルダー化) • 自治体は新しい公共私相互間の協力関係を構築する 「プラットフォーム・ビルダー化」が必要:公 • くらしを支えるための地域を基盤とした新たな法人が必要:共 • 全国一律の規制見直し、シェアリングエコノミー等の環境整備が 必要:私 減少する地方公務員 ひっ迫する財政 増加するインフラ更新費用 ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  2. 4 効果的に共創する仕組みの方法論:リビングラボ ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved. 地域の人々 メリット

    多様な視 点の獲得 自分の課 題の解決 企業の担当者 リビングラボ メリット ユーザ視点 の獲得 新規ビジネス の気づき シニアとのダイアローグ 対話のための ツール 当事者意識を 生む工夫 研究者も市民に溶け込む (生活理解,信頼獲得) 実生活での テスト ▪リビングラボとは? 企画者単独ではなく、生活者と ともに、生活者の実生活に近い 場で、仮説の探索や解決策の 検討・検証を実験的に行う仕組 み ※欧州をはじめとして世界中で取り組まれてお り(440+)、日本では経産省・厚労省が活用し 始めている(77+) 地域が直面する社会課題解 決のためには地域と企業が 協働して社会課題解決に取 り組む場が必要 例)ヨーロッパでシニア向け ICTサービスを検討した Give and Take Project
  3. 5 さまざまな共創の場面※でリビングラボが活用されている 欧州をはじめとしてさまざまなプロジェクトが取り組まれており(440+) 日本では経産省・厚労省が活用し始めている(60+) ②行政サービス改善 (enabler-driven) -住民・NPOと自治体の関係性構築 -陳情や自治体の政策エビデンス獲得 -地域としての政策イノベーション by自治体・住民/NPO

    etc. ①サービス・技術開発 (utilizer-driven) -サービス検証 -サービスイノベーション創出 by民間企業・大学etc. ③地域活性化 (user-driven) -地域関係者のつながり形成 -地域のにぎわいづくり(イベント) -持続的な住民生活の問題解決・価値向上 by住民/NPO・デベロッパー・自治体 etc. ※Leminen, S., Westerlund, M., & Nystrom, A. G.(2012).Living Labs as open open- innovation networks, Technology Innovation Management Review Review. ④方法論研究 (provider-driven) -方法論の実践 -方法論の体系化と展開 By大学・研究機関 etc. ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  4. 6 日本のリビングラボ年表 2005.03 仙台フィンランド健康福祉センター 2006.09 Lions Living Labo 2010.01-2014.03 湘南リビングラボ

    2010.11 経産省 情報政策課 リビングラボ紹介 「情報政策の要諦ー新成長戦略におけるIT・エレクトロニクス政策の方向性」 2012.03 BABAラボ 2012.04 筑波大学CUARみんラボ(みんなの使いやすさラボ) 2012.08 富士通総研 リビングラボ研究レポート 2012.10 おたがいさまコミュニティ 2013.02 Living Lab Tokyo 2013.07 Virtual Living Lab 2014.12 松本ヘルスラボ 2015.01 三浦リビングラボラトリー 2015.04 子育てママリビングラボ 2015.09 Cyber Living Lab 2016.01 八千代リビングラボ 2016.06 みなまきラボ 2016.07 産総研スマートリビングラボ 2016.07 東急WISE Living Lab 2016.11 鎌倉リビング・ラボ ほか5件 2017.01 井土ヶ谷アーバンデザインセンター(井土ヶ谷リビングラボ) 2017.05 ともに育むサービスラボ(はぐラボ) 2017.06 福岡ヘルス・ラボ 2017.09 経産省 ヴィンテージ・ソサエティ構築実証事業(リビングラボ4件) 2017.09 神奈川ME-BYOリビングラボ 2017.10 高石・僥倖リビング・ラボ 2017.12 ドリームハイツ ヘルスケア リビングラボ(とつかリビングラボ) ほか9件 2018.02 大牟田リビングラボ 2018.03 横浜リビングラボ創生会議(NTTが参加) 2018.04 第一回リビングラボネットワーク会議(NTTが参加) 2018.04 こまつしまリビングラボ 2018.07 経産省 「未来の教室」実証事業(大牟田リビングラボ含む4件) 2018.10 サイクル・リビングラボ 2018.11 地域共創リビングラボ ほか10件 2019.02 Well Being リビングラボ 2019.03 第二回リビングラボネットワーク会議(NTTが参加) 2019.10 岡山リビングラボ ほか3件 2020.07 関内リビングラボ 2020.08 厚労省 「介護ロボットの開発実証普及のプラットフォーム事業」(リビングラボ6件) 2020.03 経産省 リビングラボにおける革新的な社会課題解決サービスの創出に係る調査 (大牟田リビングラボ含む国内リビングラボ5件が調査対象) 2020.10 おやまちリビングラボ 2020.11 奈良リビングラボ ほか8件 凡例) オレンジ色:日本全体の動き 青色:NTTグループの取り組み 黒色:他の日本での取り組み ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  5. 7 リビングラボの課題 ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved. 国内外のリビングラボには様々な目的を持ったものがあるが, 過去12年間のリビングラボ論文のサーベイ※によると,

    現時点でのリビングラボの主要な課題は6つ ※: M. Hossain, S. Leminen, M. Westerlund (2019) A Systematic Review of Living Lab Literature, Journal of Cleaner Production Temporality Governance Unforeseen outcomes Efficiency Recruitment of user (passive user participants) Sustainability and scalability
  6. 10 デンマークと日本の構造的差異 デンマークのリビングラボを構造的に捉えると,ワークショップや共創プロ ジェクトなどの実践の場で起きる共創活動だけではなく,その前提とな る人々の特性や社会システムによる影響が大きく表れている. ①実践の場 ②人々の特性 (マインドセット) ③社会システム 相互作用

    特定の特性を 持った人が参加 ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における 構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved. 主体的に 動き出せる 土壌 共創活動
  7. 11 デンマークと日本の構造的差異 デンマークのリビングラボを構造的に捉えると,ワークショップや共創プロ ジェクトなどの実践の場で起きる共創活動だけではなく,その前提とな る人々の特性や社会システムによる影響が大きく表れている. ①実践の場 ②人々の特性 (マインドセット) ③社会システム Forening

    Flexicurity Hojskole 主体性 冒険性 対等性 ※木村 (2021)「高齢者を支える技術と社会的課題」第5章 リビングラボの可能性と日本における 構造的課題、(調査資料2020-6)国立国会図書館調査及び立法考査局 ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved. 主体的に 動き出せる 土壌 共創活動
  8. 13 3つの仕組みの概要と事例 ①主体的に 動き出せる土壌 ②共創活動 ③総体的・連続的 に深める問い 主体性 冒険性 対等性

    概 要 主体性が内在 的に立ち上が るサナギ的プ ロセス 失敗の保障やわ くわくする衝動 を得る仕組み 個人と個人のフ ラットな存在的関 係がある状況 価値を生みだす プロジェクトを 関係者同士でた ちあげる アクチュアリティを踏 まえた問いを深める仕 組みをもつ 事 例 ・The New York Public Library ・芝の家 ・Forening ・欲望形成支 援 など ・Flexicurity ・Hojskole ・Ars Electronicaセン ター ・心理的安全性 ・創造的衝動 など ・わくわく人生サ ロン ・ヤンテの掟 ・ダウスオーデン (デンマークの対 話ルール) ・哲学対話 など LL研究・報告に 多数事例あり ・Ars Electronica フェスティバル・セン ター ・味本飯店 (TOMOSU) ・SPACE10 など ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  9. 14 The New York Public Library 概要: 本を貸すだけでなく、コミュニティーの主要な教育機関となっ ていて、教育や民主主義の考え方を推し進める存在となってい る。人々が,今社会で何が起きているかを理解でき、自ら知的

    な選択ができるようにしている。この図書館で見つけた文献を もとに世界初のコピー機が生まれたことや,図書館でバレエ動 画を見ていた移民男性がニューヨーク・シティ・バレエ団の専 属振付師になったエピソードがある. 主体:NYPL(1991-) 共創の土壌となる活動: 移民への英語講座 ホームレスの住宅問題 子どもたちの課外授業 ネット環境のない人たちへのWifi端末の貸し出し アフリカ系の描かれ方についての講義 成長のためのファッション図書館 地域との関わり方: 図書館は誰もが利用できるし、社会のどんな階層の人たちも やって来る。非常にお金のある人たちもいれば、とても貧しい 人たちも、また中間層もみんな、秩序を乱したりしない限り、 この図書館を活用している。そのうえ司書も、誰しもに平等に 接するよう訓練されている。金持ちだからって特別な注意が払 われることはないし、貧しいからといって注意を払われないこ ともない 就職面接や結婚式、オーディション、卒業式、ダン スパーティーのために,ネクタイ、鞄、ハンドバッ グを1回につき3週間まで、無料で貸し出している ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  10. 15 芝の家 概要: 来訪者が誰でも自由に出入りできる地域の居場所.イベント毎 にテーマはあるものの、居場所としてはどのような人でも居ら れる,自分も相手も尊重できる場所を志向している。 子どもから高齢者まで誰でも訪れることができる芝の家では、 過ごし方も自由で,お母さんが子どもを連れて遊びに来たり、 高齢者がお茶を飲みながらおしゃべりを楽しんだり,日によっ ては近くのオフィスで働くサラリーマンが昼休みにやって来て、

    お弁当を食べてお茶を飲んでいくこともある. 主体:港区芝地区総合支所,慶応義塾大学(2008-) 共創の土壌となる活動: 「よるしば」大学生が中心になって開いている夜のお話し会 「芝のはらっぱプロジェクト」旧拠点跡地での空間造成活動 「芝の家界隈オリジナル地図作りプロジェクト」 「アロマ部」 「芝の家・まちの図書室」 「コマやけん玉、かるた、羽子板などのお正月遊び」 地域との関わり方: 結果としてこの活動は、地域の居場所になるだけでなく、次第 に、来場者が主体的に活動を始める場となっている。運営者ら の事後分析研究によると、存在が脅かされず安心して他者と過 ごすことのできる居場所とそこでの人間関係が、自己承認や自 己効力感を得られる活動を始める土壌を作る,と述べられてい る. ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  11. 16 Ars Electronicaフェスティバル 概要: 「アルスエレクトロニカ」とは、リンツ市が所有する公営企業、 アルスエレクトロニカ社(Ars Electoronica Linz GmbH)が手 掛ける、さまざまな文化・教育事業の総称。社会的ミッション

    をもった事業体であり、リンツ市民に対する文化・教育面での 社会サービスの提供が第一義の事業目的である。現在、年間予 算のうち、約3割がリンツ市からの資金であり、残り7割は社 自身の事業収益が支えている。 主体:Ars ElectronicaL(1986-) フェスティバルのテーマとして設定された問い:「アート・テ クノロジー・ソサエティ」を軸として時代ごとの問いを探求し ている ・肉体要因 - 情報機械・人間 ・ネクスト・セックス - 生殖力のある余剰物の時代の性 ・グッバイプライバシー? - すばらしい新世界へようこそ ! ・ラディカルアトム - 我々の時代の錬金術師 ・エラー - 不完全の手法 地域との関わり方: フェスティバルが街中でも展示・開催され、暮らしの一部に アートやテクノロジーと溶け合う空間があることや、子どもと 一緒に家族で楽しめる体験型展示スペースにより、参加者に冒 険と失敗の機会を提供している。また、教育・文化施設では、 インフォトレーナーと呼ばれる人がおり、来場者とともに展示 についての対話をし、作品の体験を促してくれる ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  12. 17 味本飯店 概要: ひとりでに持続可能な地域や社会が生まれる場所をめざした奈 良のBONCHIによるポッドキャスト。さまざまな領域の実践者 や研究者がゲストとなり,選んだ本(時代を読み解く500冊) に触発されて、新しい自然観・人間観など時代や社会に向けた 問いを探求している。 主体:TOMOSU (2019-)

    時代を読み解く問いの題材として取り上げられた書籍: ・サードプレイス ・べてるの家の「当事者研究」 ・突破するデザイン ・南方熊楠 地球志向の比較学 ・カイエ・ソバージュ1巻 人類最古の哲学 ・長生きできる町 ・どもる体 ・外来種は本当に悪者か? 地域との関わり方: 地域の主体として,自然と調和的な循環・共生社会の実現に向 けた問いを探索・共有しつつ,共感して集まる市民や,奈良市 内外の企業やクリエイター,行政の人々と共創し,奈良の暮ら しの現場をより良くする活動や問いを体感できる場づくりに取 り組んでいる.また,暮らしの中の実践で深められた問いをさ らに共有する循環を生み出している. ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved.
  13. 18 持続的な活動/変化を生み出す循環構造 共創活動 総体的・連続的に 問いを深める対話 主体的に 動き出せる土壌 やってみる どうあるべきか のんびりする

    やってみる ©2021 Atsunobu Kimura, All rights reserved. 3つの仕組みを視野に入れることでリビングラボの可能性を広げることができる