oku-slide-20181214

同期性揺らぎ遺伝⼦の⼆つの新規抽出法
奥 牧⼈ (富⼭⼤学)
2018/12/14
第56回 バイオ情報学研究会
予稿: http://id.nii.ac.jp/1001/00192709/

Transcript

1. 同期性揺らぎ遺伝⼦の ⼆つの新規抽出法 奥 牧⼈ (富⼭⼤学) 2018/12/14 第56回 バイオ情報学研究会 1 / 31
2. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 2 / 31
3. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 3 / 31
4. 発現変動遺伝⼦と同期性揺らぎ遺伝⼦ 発現変動遺伝⼦ (Differentially Expressed Genes, DEGs) 発現量の平均値が増加または減少 同期性揺らぎ遺伝⼦ (Synchronously Fluctuated Genes, SFGs) 発現量の揺らぎ幅と同期性が増加 発現変動遺伝⼦ (DEGs) 同期性揺らぎ遺伝⼦ (SFGs) 4 / 31
5. 関連研究 同期性揺らぎ遺伝⼦の重要性を最初に指摘した論⽂ Chen L., et al., Scientific Reports, 2:342 (2012) 動的ネットワークバイオマーカーと命名 想定される有⽤性 疾病前状態 (病気ではないが、⽣体の恒常性が低下した状態) と関わる遺伝⼦の同定 => 病気の予防 適⽤例: 急性呼吸不全、肝臓癌、糖尿病、インフルエンザなど 同じ研究グループ: Chen L. (2012), Liu X. (2013), Li M. (2014), Chen P. (2015), Lu L. (2017), Yang B. (2018) それ以外: Li Y. (2015), Vafaee (2016), Richard (2016) 5 / 31
6. 新呼称の提案 これまでの研究で⽤いられてきた「動的ネットワークバイオマー カー」では意味が伝わりづらいため、「同期性揺らぎ遺伝⼦」と いう呼称を普及させたい。 6 / 31
7. 問題点 これまでの研究では、揺らぎと相関の⼤きさを標準偏差と ピアソンの相関係数でそれぞれ推定していた。 これらの統計量は外れ値に弱い。 実データ解析では、たった⼀サンプルだけで極端な⾼発現または 低発現をし、それ以外は対照群とほぼ変わらない遺伝⼦が頻繁に 選ばれてしまう。=> ⼀点問題 理想的なパターン 実際によく出てくるパターン 7 / 31
8. 本研究の⽬的 本研究では、外れ値に強い同期性揺らぎ遺伝⼦の抽出を可能とす るため、⼆つの新規⼿法を考え、それらの性能評価を⾏った。 ⼆段階法 (既存⼿法ベース) 主成分分析に基づく⽅法 8 / 31
9. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 9 / 31
10. ⼆段階法 ⼀つ⽬の提案⼿法は、揺らぎの⼤きな遺伝⼦の選択と、相関の強 いクラスタの抽出の⼆段階に分かれる。 複数の既存⼿法と基本的な⽅針は同じだが、外れ値に強い統計量 を使う点が異なる。 10 / 31
11. ⼆段階法 1. 各遺伝⼦の中央絶対偏差を実験群と対照群それぞれで計算し、 前者の値が後者の値の2倍より⼤きかったものを選択 2. 選ばれた遺伝⼦に対して階層的クラスタリングを適⽤ 類似度: スピアマンの相関係数 連結法: 平均連結法 分割基準: 類似度に対する閾値0.75 最⼤クラスタ及びその半分より⼤きな他のクラスタを抽出 また、複数の既存⼿法の代表として、第⼀ステップで標準偏差、 第⼆ステップでピアソンの相関係数を使う⽅法も⽤意 (⾮ロバストな ⼆段階法) 11 / 31
12. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 12 / 31
13. 主成分分析に基づく⽅法 揺らぎの増加と相関性の増加をまとめて扱う⽅法 主成分分析で、状態変数の分布の最も分散の⼤きな⽅向を計算 この⽅向は、⼀定の条件下において最も外乱に弱い⽅向と⼀致 13 / 31
14. 主成分分析に基づく⽅法 実験群と対照群それぞれで以下の処理を⾏う。 各遺伝⼦について箱ひげ図と同じやり⽅で外れ値を判定 外れ値を除いてデータ⾏列を中⼼化し、外れ値は0で置換 第⼀主成分⽅向を求め、その重みの絶対値に第⼀主成分⽅向 の標準偏差を掛けたものを、各遺伝⼦の寄与度とする。 実験群と対照群の寄与度の差の分布を考え、3- 範囲より⼤きい 側の遺伝⼦を抽出する。 ⽐較のため、外れ値の置換をしない⽅法も⽤意 σ 14 / 31
15. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 15 / 31
16. ⼈⼯データ の⾏列を2つ⽤意し、標準正規分布に独⽴に従う乱数 で値を埋める。 ⽚⽅の500⾏分には に従うN個の共通ノイズを加算 値が加算された500⾏を同期性揺らぎ遺伝⼦の正例、残り9500⾏ が負例とする。 10 000 × N N (0, 24) 16 / 31
17. 実データ てんかんマウスの実験データ (GSE77578) を使⽤ 対照群 (溶媒のみ、N=17) 実験群 (薬剤投与 3 mg/kg, N=18) 再現性の評価⼿順 1. 全データを使い同期性揺らぎ遺伝⼦を抽出 2. 実験群から1サンプル除外したとき結果がどれだけ異なるかを Jaccard指数で評価し、最悪ケースを除外 3. 以下同様に繰り返す 17 / 31
18. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 18 / 31
19. ⼈⼯データの結果 2つの提案⼿法はいずれもそこそこ⾼い性能を⽰した。 ⾮ロバスト法の⽅が全体的に良いのは外れ値が無いため 19 / 31
20. 実データの結果: 再現性 2つの提案⼿法はいずれも、⾮ロバストな⼿法より相対的に⾼い 再現性を⽰した。 20 / 31
21. 実データの結果: ヒートマップ ⾮ロバストな⼿法では少数のサンプルのみで⾼値を⽰しただけの 遺伝⼦が選ばれていた (⼀点問題)。 提案⼿法によりこの問題を解決することが出来た。 もう⼀⽅の提案⼿法も同様 ⼆段階法 ⾮ロバストな⼆段階法 21 / 31
22. 平均発現量の分布 2つの提案⼿法で抽出された遺伝⼦はほとんど重複無し その理由の⼀つとして、主成分分析に基づく⽅法では平均発現量 の⼤きい遺伝⼦が選ばれやすい傾向があることが挙げられる。 22 / 31
23. Agenda はじめに 提案⼿法1: ⼆段階法 提案⼿法2: 主成分分析に基づく⽅法 性能評価法 結果 まとめと考察 23 / 31
24. まとめと考察 まとめ 同期性揺らぎ遺伝⼦を抽出するための⼆つの⼿法を提案した。 ⼈⼯データ: いずれも⾼い抽出性能を⽰した。 実データ: いずれも⾮ロバストな⼿法より⾼い再現性を⽰した。 また、⼀点問題も解決出来た。 考察 実際に使う場合、必要なサンプル数は? 結局どちらの⼿法が良いの? 発現変動遺伝⼦と⽐べた再現性は? 24 / 31
25. ご清聴どうもありがとうございました。 25 / 31
26. 適合率と再現率 適合率は主成分分析に基づく⽅法の⽅が⾼く、再現率は⼆段階法 の⽅が⾼かった。 適合率 再現率 26 / 31
27. ヒートマップ (提案⼿法2) もう⼀つの提案⼿法でも、外れ値対策を施したことで⼀点問題を 解決することが出来た。 主成分分析に基づく⽅法 ⾮ロバストな主成分分析に基づく⽅法 27 / 31
28. エンリッチメント解析 DAVID 6.8を使⽤ 解析対象の遺伝⼦リストとの重複数が2以上のGOタグを取得 フィッシャーの正確検定でp値を計算し、FDR制御を適⽤ 28 / 31
29. エンリッチメント解析 (提案⼿法1) ⼆段階法で抽出された同期性揺らぎ遺伝⼦のうち3個は中脳発⽣ に関与 GO term Overlap #Genes with the term p-value q-value midbrain development 3 87 0.00030 0.10 positive regulation of lamellipodium organization 2 27 0.00075 0.13 regulation of lamellipodium organization 2 40 0.0016 0.19 SFGs 27個, 総遺伝⼦数 17911, 多重⽐較数 351, q < 0.2 29 / 31
30. エンリッチメント解析 (提案⼿法2) 主成分分析に基づく⽅法で抽出された同期性揺らぎ遺伝⼦の中に はシグナル伝達や代謝と関係するものが多数含まれていた。 GO term Overlap #Genes with the term p-value q-value regulation of cell communication 53 2785 2.8E-06 0.0010 regulation of signaling 53 2808 3.6E-06 0.0011 response to organic substance 48 2972 0.00060 0.011 regulation of cellular component organization 47 2399 5.9E-0.6 0.0014 cellular component biogenesis 46 2654 0.00017 0.0051 positive regulation of metabolic process 46 3004 0.0025 0.022 regulation of signal transduction 45 2468 6.0E-05 0.0046 cellular response to chemical stimulus 45 2607 0.00022 0.0057 positive regulation of macromolecule metabolic process 45 2794 0.0010 0.014 phosphate-containing compound metabolic process 45 2869 0.0017 0.018 SFGs 183個, 総遺伝⼦数 17911, 多重⽐較数 2196, の479個のうち重 複数の上位10個のみ表⽰ q < 0.05 30 / 31
31. エンリッチメント解析 (DEG) 発現変動遺伝⼦ (倍率変化で抽出、閾値0.5) 中には神経系と関係 するものが多数含まれていた。 GO term Overlap #Genes with the term p-value q-value nervous system development 22 2261 0.00012 0.038 neurogenesis 18 1638 0.00013 0.038 ngeneration of neurons 17 1526 0.00018 0.038 neuron development 14 1092 0.00018 0.038 trans-synaptic signaling 10 570 0.00014 0.038 synaptic signaling 10 570 0.00014 0.038 anterograde trans-synaptic signaling 10 570 0.00014 0.038 chemical synaptic transmission 10 570 0.00014 0.038 positive regulation of cellular component movement 9 472 0.00017 0.038 regulation of neuronal synaptic plasticity 4 64 0.00016 0.038 DEGs 76個, 総遺伝⼦数 17911, 多重⽐較数 2115, の全ての結果, 重複 数順 q < 0.05 31 / 31